NATROMのブログ

ニセ医学への注意喚起を中心に内科医が医療情報を発信します。

科学

子の知能は両親の知能に近い

■子供の知能は夫婦の平均に近いか(championの雑感) 中込弥男の『こんなことまでゲノムで決まる』によると、人間の知能と性格は遺伝子によって決まっている。中込の説明によると、以下の結論が得られる。 人間の知能の大枠は、親(夫婦)の平均に近い。 人間…

生物時計の謎に挑む

■時間の分子生物学 時計と睡眠の遺伝子(講談社現代新書)粂和彦著。著者紹介には「専門は分子生物学。生物時計と睡眠のメカニズムを研究。内科医として睡眠障害の診療も行う。雑誌『Cell』『Nature』『Science』等に論文を多数発表」とある。研究も臨床もか…

先読みを先読みする

■美人投票で相場に勝つ(id:tazumaさん)より。 もう一ひねりできないか。例えば少し違うヴァージョンの美人投票(JPE、2004、Camerer,Ho,Chong)を考える。ルールは簡単で、0から100までの数字を同時に選んで、平均の2/3に最も近い人が、自分の選んだ数…

変形3ドア問題の解答

モンティ・ホール問題の答え。まず、問題を再掲。 変形3ドア問題 あなたはテレビショーの参加者で、うまくいくと高価な賞品をゲットできるチャンスを与えられている。3つのドアA、B、Cがあり、そのうちの一つに賞品が用意され、残り2つがハズレである…

人種特定的生物兵器は不可能だ

モンティ・ホール問題の答えを書こうと思っていたけれども、今日は■日本軍事情報センターのRe:メールにお返事というページからリンクされた件ついて少し補足を。「SARSウイルスはイネを主食とする民族によく作用するように作られた生物兵器だ!」というト…

劣性遺伝病の可能性は?

この日記を書いている「はてな」は、もともとは人力検索サイトである。通常の検索エンジンでは探せないような情報を、対価(といっても、はてなポイント)を払って誰かに提供してもらう。うまく当たれば便利だけれども、詳しい人ではなくポイント目当ての素…

モンティ・ホール問題

3囚人の問題は、モンティ・ホール・ジレンマとか3ドア問題とか呼ばれる以下の問題と構造的には同型である。 3ドア問題 あなたはテレビショーの参加者で、うまくいくと高価な賞品をゲットできるチャンスを与えられている。3つのドアA、B、Cがあり、そ…

浮気を遺伝子のせいにする男

前にちょいと書いた、動物行動学者のドラマ「不機嫌なジーン」を見た。テンポが良くて面白かったぞ。竹内結子が大学院生、蒼井仁子(よしこ)を演じる。仁子→ジンコ→ジーンなんだね。ぜんぜん女ドリトル先生じゃなかったぞ。内野聖陽の南原教授が元彼氏。刷…

DNA鑑定はどこまで許されるのか?父権喪失の危機?

しょーがなく「科学」カテゴリに入れているけど、これは科学の話じゃあない。社会の話。以前、DNA鑑定はどこまで許されるのか?という問題に言及した。「今後、同様の問題が生じてくるだろう」と気楽に書いていたけど、今まさにドイツで、父親による子どもが…

EBM(Evidence Based Mahjong):根拠に基づいた麻雀

■科学する麻雀EBM(Evidence Based Medicine:根拠に基づいた医療)というものがある。医療において、医師の個人の経験や勘だけに頼るのはやめて(それも大事なんだけどね)、客観的な情報を利用しようってこと。たとえば、薬Aを使用したらよく効いた、薬Bはあ…

SARS生物兵器説

インフルエンザすら今冬はまだ少なく、SARSも話題にのぼることが少なくなったが、あまりにも面白い仮説を見つけたので紹介。■SARS生物兵器説タイトルからして香ばしいけれども、その内容が素晴らしい。元ネタは「英語の掲示板のページ」とのこと。 After…

キンド栽培野菜

こないだ八木山へドライブにいったときに、奇妙な看板を見つけた。「キンド栽培野菜」。 ”キンド”とは、124種類の微生物と微量要素の入った地力回復資材です。土中のダイオキシン、放射能、農薬、水銀等をも分解し健康で安全な作物ができます。農薬は0〜…

箸の誤り

最近、血液型と性格に関するテレビ番組が多く、「放送倫理・番組向上機構(BPO)」が「血液型によって人間の性格が規定されるという見方を助長しないよう」、放送各局へ要望したのだそうだ。周期的にこういうのが流行るらしい。血液型性格診断は、容易に…

遺伝と環境の微妙な色合い

ヒトの性行動が環境の影響を受けるなんてことはわかりきっている。だったら遺伝の影響は?異論はあるだろうが、遺伝的な影響もあるに決まっていると私は思うのだ。ヒトの形質における遺伝的影響を推定するのは、主に双生児研究(twin study)という方法による…

DNA鑑定はどこまで許されるのか?

■46歳の子「実子じゃない」…産院で取り違えと提訴 訴状によると、男性は1958年4月に都立墨田産院(88年に閉鎖)で生まれ、この夫婦の長男として育てられた。男性は「両親と顔や体格が似ていない」と思っていたが、約20年前に子供が生まれたのを機…

私たちの知らない科学

■発掘!あるある大事典2 ttp://www.ktv.co.jp/ARUARU/search2/aruketuekigata_sp/ketuekigata_1.html 4つの血液型を統計学的に捉えた「血液型と性格」の関係実は今、科学の分野から、それを裏付けるかの様な驚くべき研究成果が発表され始めているのです。 へ…

遺伝情報のデータベース

逮捕された人は全員指紋を採られ、データベース化されている。遺伝子型で同じことをやるときの問題点について。■DNA捜査――ルールを定めて活用を(朝日新聞 社説 2004年11月5日) 指紋が残っていなくても、犯人の血痕や毛髪があれば、DNA型がわかる。た…

熱しやすく冷めにくい?

ちょっとした実験でも、予想と異なる結果が出るのは興味深い。どうしてそうなんだろう?と考えさせられる。復氷−とけた氷がまたこおる−のnobさんによる実験。 ■熱しやすく冷めにくい ほぼ同じくらいの大きさのカップふたつ。片方は磁器、もう一方はステンレ…

「マイナスイオン」は体によいか

機会があって、「静電気の話」(A.D.ムーア著、高野文彦訳、河出書房新社)という本を読んでいる。これがきわめて面白い。著者のムーアは人工静電気の研究者で、ミシガン大学の教授であった。研究者であると同時に、実験家であり、教育家でもあった。この本…

「」

スティーヴン・ウェッブ著。松浦俊輔訳。原著は2002年。やっと読み終えた。これだけの本を書くのには、著者の専門である物理学だけでなく、進化生物学、社会学、数学、言語学などの幅広い分野の知識が必要であったろう。なにより必要なのはSFの知識かもしれ…

芋静注

朝日新聞の悪口を書けばアクセス数がうなぎのぼりだということで、何かふさわしい記事がないか毎日チェックしている。政治といった俗事よりも、科学や数学といった崇高なテーマのほうが、この日記にふさわしい。14日の朝日新聞の青鉛筆という小さな囲み記事…

種分化の研究

■進化論解明 カギは熱帯魚 速い分化 1万2000年で700種 シクリッド(東京新聞)Googleニュースが新しくできたってことで、進化論で検索してみたら、上記記事が引っかかってきた。大島弘義(東京新聞・中日新聞科学部記者)による記事。 アフリカ・ビ…

「サラダ野菜の植物史」

大場秀章著 新潮選書「小さなサラダ植物百科を目ざしている」という本書、学名の由来や、あまりなじみのない野菜(エンダイヴやアーティチョークって知ってる?)の話など退屈な部分もあるが、キュウリやセロリやキャベツといったよく知っている野菜の話にな…

熱力学第二法則について議論@2ちゃんねる

私のサイトに、熱力学第二法則は進化を否定する?ってコンテンツがあるんだけど、そこでの何気ない記述から、物理@2ch掲示板で議論に。■ちょっとした疑問(質問)はここに書いてね36■ 17 :ご冗談でしょう?名無しさん :04/08/19 01:50 ID:ydnl5TaF 九州大学…

Bonferroni の補正

こないだの補足。「長距離選手の遺伝子を調べたら、有意に『持久型』のタイプが増えていた」という報告に対し、ホントに?という懐疑的な見方をしたわけだ。今後もこの手の話が話題になることもあるだろうが、「ボンフェローニの補正はしたの?」と冷めた見…

遺伝学者の憂鬱

■遺伝子に「持久型」 陸上選手の素質見分けるカギ?(朝日新聞) 日本の実業団や大学の陸上部に所属する182人のアスリートを対象に、本人の承諾を得て血液やほおの粘膜細胞を採取して、筋肉を動かすエネルギー物質を体内で合成する遺伝子を調べた。 する…

フェルミ推定ごっこ

今日のお昼はキャナルシティのラーメンスタジアムで。ラーメンスタジアムのラーメンははずれが無くどれもうまいのだ。広い宇宙に地球人しか見当たらない50の理由を読み始めた最中なので、フェルミ推定をやってみる。問題「日本にラーメン屋は何軒あるか」。…

エピジェネティクスと獲得形質遺伝

進化論と創造論の掲示板で、ちょっと前に獲得形質遺伝のことが話題になった。たとえば、「ストレス環境下では、母親が分泌したストレスホルモンが胎児に影響して、ストレスに強い子が生まれるってこともあるのでは?」という疑問。で、「そういう現象が起こ…

遺伝子差別する教育評論家

血液型と性格・行動に関係があるとする考え方は根強い。血液型と性格の関係については、科学的な根拠に乏しいことを、遺伝学からみた血液型性格診断で既に指摘してある。占いにとどまるのならまだしも、教育に応用していることを無批判に伝えている記事を発…

中原訳が気に入らない人のリンク集

先日亡くなったフランシス・クリックは、人間の心や意識と脳の問題に取り組んでいた。本も書いている。読む価値は十分にあるが、問題なのは訳した人。中原英臣+佐川峻訳。ウイルス進化論の人ね。原題は、The Astonishing Hypothesis, The Scientific Search…