NATROMのブログ

ニセ医学への注意喚起を中心に内科医が医療情報を発信します。

2019-01-01から1年間の記事一覧

何も悪いことをしていなくても人々は病気になる

がんを治すことが証明された食事療法は、現時点では存在しない。がんになりにくい食事ならある程度はわかっていて、がんの患者さんについても、基本的にはそうした健康的な食事が推奨されている。詳しくは ■がん体験者の栄養と運動のガイドライン:[国立がん…

血液1滴で13種のがんを同時に検出できる検査ってどうなの?

マイクロRNAによるがん診断技術がニュースに 東芝が「1滴の血液から13種類のがんいずれかの有無を99%の精度で検出できる技術を開発し、2020年から実証試験を始める」というニュースが報道された。血液中のマイクロRNAをマーカーとするもので、研究としては…

HPVワクチンの定期接種は人体実験だったのか?

厚生労働省のリーフレット(平成25年6月版)には「子宮頸がん予防ワクチンは新しいワクチンのため、子宮頸がんそのものを予防する効果は証明されていません」*1との記載があった。子宮頸がんのほとんどはHPV(ヒトパピローマウイルス)の感染が原因で起こる…

「謎水装置」から学ぶニセ医学の手口

「謎水装置」は血中酸化ストレスを減少させると主張されている 「株式会社日本システム企画」が製造販売する、配管内の赤錆を黒錆に変えて赤水を解消する効果があると称する「NMRパイプテクター」という商品がある。福岡市営地下鉄に広告が出ているのを見た…

HPVワクチンをめぐる「ファクトロンダリング」

つくば市議会議員小森谷さやか氏による、ヒトパピローマウイルス(HPV)および子宮頸がんに関する誤った情報が訂正されないままでいる。 HPVワクチンによって恩恵を受ける人の推計は10万人あたり数百人というのがコンセンサス まずはコンセンサスの得られて…

検診で乳がんが発見された人が100人いたとして

問題。 検診で乳がんが発見された人が100人いたとします。この100人の中で、がん検診のおかげで乳がんで死なずに済んだ人は、何人ぐらいでしょうか? がん検診を行えば何かしら治療を要するがんが見つかる。しかし、がんを発見できること自体は、がん検診が…

「血圧が高いと心筋梗塞になりやすい」と、どのような方法でわかったのか?世界中の命を救った研究

『医師が教える 最善の健康法』が、本日、2019年6月24日に発売されます。ブログと書籍の大きな違いとして、書籍は編集者によっても手が入りブラッシュされる点があります。ブログは書きたいことを字数制限を気にせずに書けるという気楽さがある一方、書籍は…

『医師が教える 最善の健康法』の「はじめに」

2019年6月24日発売の『最善の健康法』の「はじめに」を公開いたします。はじめに 昔から長寿は人類の憧れでした。もちろん、ただ長生きするだけではなく、健康でいられることも条件です。かなり多くの方が健康で長生きしたいと願っているのではないでしょう…

新刊『医師が教える 最善の健康法』出ます

『医師が教える 最善の健康法』という本を書きました。内外出版社から2019年6月24日に発売です。いまアマゾンの紹介文を読んだら、「前著『「ニセ医学」に騙されないために』で「ニセ医学」という言葉を世に定着させた内科医が、たくさんの世界的に認められ…

血圧の基準値がどんどん下がるのなぜか?

日本高血圧学会による高血圧治療ガイドラインが5年ぶりに改訂され、合併症のない75歳未満の成人の降圧目標が従来の140/90 mmHg未満から130/80 mmHg未満に引き下げられた。「高血圧は薬で下げるな」「基準値の引き下げは薬を売りたい製薬会社の陰謀だ」といっ…

「花粉を水に変えるマスク」の臨床試験の結果は早く公表されるべき

一年前に話題になった「花粉を水に変えるマスク」 「花粉を水に変えるマスク」ってありますよね。1年前(2018年春)に活発な議論がなされました。インターネット上では山形大学理学部物質生命化学科天羽研究室の以下のページがまとまっています。 ■花粉を水…

「副腎疲労」は根拠が不明確な疾患である

PATM、慢性ライム病、そして副腎疲労 『RikaTan(理科の探検)』誌2019年4月号に「根拠が不明確な疾患と代替医療 PATM(他人にアレルギー症状を起こすとされる疾患)を中心に」という題名で寄稿した。RikaTan (理科の探検) 2019年4月号文 理AmazonPATMとは"P…

軽症であればインフルエンザが心配だからと病院に行くのはおすすめしない

インフルエンザは自然に治る疾患で、抗インフルエンザ薬の効果は有症状期間を1日間ほど縮める効果である。感染リスクや待ち時間コストを考慮すると、症状が軽いのにインフルエンザが心配だからと病院を受診するのは割にあわないかもしれない。