NATROMのブログ

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モンティ・ホール問題

3囚人の問題は、モンティ・ホール・ジレンマとか3ドア問題とか呼ばれる以下の問題と構造的には同型である。


3ドア問題 あなたはテレビショーの参加者で、うまくいくと高価な賞品をゲットできるチャンスを与えられている。3つのドアA、B、Cがあり、そのうちの一つに賞品(たとえばスポーツカー)が用意され、残り2つがハズレ(たとえばヤギ)である。あなたはその中のドアAを選んだが、司会者のモンティ・ホールはBのドアを開けて、Bがハズレであったことを示し、Cのドアに選びなおすか、それともAのドアのままでいいのか聞く。「ファイナルアンサー?」というわけだ。Aのドアのままのほうがいいのか、それともCのドアに選び直したほうがいいのか。[司会者はどのドアに賞品が入っているのか知っている。また、もしAのドアが当たりである場合には、1/2の確率でBかCかのドアを開ける。Aのドアがハズレであれば、BおよびCのハズレのドアのほうを開ける。]
3ドア問題をめぐる議論については、モンティ・ホールで検索してみよ。2ちゃんねるなどでは混乱した議論が見られて愉快である。こちらもちゃんと理解しているわけではないので、見ているうちにこちらも混乱してくるのではあるが。混乱の原因の一つは、[ ]内の仮定が明示されていない場合があることだ。*1司会者が、どのドアが当たりが知らずに、Bのドアを開けてたまたまハズレだった場合は、答えは異なる。

■ [今日の2ch]モンティ・ホール問題或いは…については結論は間違っていると思うのだがどうか。いくらなんでも、5/6って答えはないだろう。

ウィキペディアのモンティ・ホール問題の項はよくできている。しかしながら、説明が不十分である。「もともとの選択では、プレイヤーは選んだドアに景品がある可能性を 1/3 しか持っていない;この確率はモンティが羊のドアを開けたとしても変わらない。」とあるが、これはBのドアが当たりである事前確率とCのドアが当たりである事前確率が等しいときにしか成立しない。事前確率によっては、選んだドアに景品がある確率(事後確率)は変化しうる。変形3囚人問題がそのことを示している。

■モンティ・ホール・ディレンマとかいろいろの「私なりの解答例」も、同様の理由で不正確である。私もまったく同様の誤解をしていた。「司会者がハズレの扉を開いているが、各グループの確率は変動していない」ことに関しては、何らかの証明が必要である。ドアをグループ化すると、たとえば以下のような変形3ドア問題に正答することはできない。


変形3ドア問題 あなたはテレビショーの参加者で、うまくいくと高価な賞品をゲットできるチャンスを与えられている。3つのドアA、B、Cがあり、そのうちの一つに賞品が用意され、残り2つがハズレである。賞品が当たる確率は、A、B、Cそれぞれが3/7、3/7、1/7である。あなたはその中のドアAを選んだが、司会者のモンティ・ホールはBのドアを開けて、Bがハズレであったことを示し、Cのドアに選びなおすか、それともAのドアのままでいいのか聞く。Aのドアのままのほうがいいのか、それともCのドアに選び直したほうがいいのか。Bがハズレであったことが示されたことによって、ドアAの当たりの確率は3/7のままなのか、それとも変わるのか。[司会者はどのドアに賞品が入っているのか知っている。また、もしAのドアが当たりである場合には、1/2の確率でBかCかのドアを開ける。Aのドアがハズレであれば、BおよびCのハズレのドアのほうを開ける。]

答えは来週にでも。何か異論がある方は、私がを読んだ記憶が薄れないうちにお願いします。


追記:変形3ドア問題の解答

*1:2ちゃんねるの議論では、参加者がヤギが欲しいのかスポーツカーが欲しいのかが明示されていないことを問題にしていた。参加者がヤギを望むのならばAのドアを選んだままにしておくべきだ。