NATROMのブログ

ニセ医学への注意喚起を中心に内科医が医療情報を発信します。

2010-01-01から1年間の記事一覧

透析利権と戦う宮城県議会議員

■腎臓移植が普及しないのは医師の説明不足? at 宮城県議会 - うろうろドクター - Yahoo!ブログや、■タブロイド屋 - 新小児科医のつぶやきでも話題になっているが、数日前に、宮城県の県議会議員が、県議会常任委員会の保健福祉委員会において、医師2人を参…

ホメオパシー訴訟の和解がもたらした最大の成果

山口市助産師ビタミンK不投与事件における、助産師と母親の和解およびその報道(■山口助産師ビタミンK不投与事件 「母親と助産師和解」と朝日新聞でを参照)について、日本ホメオパシー医学協会がコメントしている。この訴訟および和解がもたらした最大の成…

山口助産師ビタミンK不投与事件 「母親と助産師和解」と朝日新聞で報道

2010年12月22日の朝日新聞の朝刊紙面で、『「ホメオパシーで長女死亡」 母親と助産師和解 山口地裁』という見出しで短い記事が載った。朝日新聞のサイトであるアピタルでも同様の記事あり。読売新聞と毎日新聞もざっと見た限りではなさそう(ただし、くまな…

エコパラダイス処理でアレルギーフリーに?

卵や小麦をアレルギーフリーにする謎の技術がいつのまにか開発されたらしい。 ■空気が、水が、シフォンケーキが、薬になる - 住まいに安らぎを - 楽天ブログ(Blog) 卵も小麦も使っているのにアレルギーフリーになっちゃったんです。 「エコパラダイス工法…

オリザニンの日

12月13日は「ビタミンの日」である*1。いまからちょうど100年前の今日、1910年(明治43年)12月13日。東京化学会常会において、鈴木梅太郎は、米糠中に含まれる微量の未知物質について発表した。当時、既に、エイクマンの行った実験によって、白米のみで育て…

やる夫が予防接種の害について主張したいようです

____ / \ /\ キリッ . / (ー) (ー)\ 予防接種によって、健康を犠牲にして達成される予防などナンセンス。 / ⌒(__人__)⌒ \ 抗体を永続的に存在させるためには、 | |r┬-| | 病原体の一部が体に残存していることになる。 \ `ー'´ / 異物が残存…

神は言っている 串ぐらい通せと

話をしよう。あれは今から4年前…いや、昨日の出来事だったか。まあいい。 彼には72通りの名前があるから、なんて呼べばいいのか 確か最初にコメントしたときは、「める」。そう、あいつは最初から言う事を聞かなかった。 ■そんなドーキンス、修正してやるの…

ホメオパシーが叩かれる理由

ホメオパシーは叩かれ過ぎか? ■「ホメオパシー叩き」は統合医療潰しを目的としていたのか?にて、週刊ポスト(2010年12月3日号)に掲載された黒岩祐治氏による『「ホメオパシー叩き」に隠された「統合医療は迷信」の権威主義』という記事を批判的に紹介した…

宝石岩盤浴バイオマット

宝石岩盤浴バイオマットというものがある。今のところ、宝石岩盤浴バイオマットが癌に効くという医学的証拠はない。私はインチキ商品であると考えている。仕組みは電気毛布に似ているが、特殊な加工によって何か健康にいいものが放出されていると主張されて…

「ホメオパシー叩き」は統合医療潰しを目的としていたのか?

週刊ポスト(2010年12月3日号)に、『「ホメオパシー叩き」に隠された「統合医療は迷信」の権威主義』という記事が掲載された。ジャーナリスト・国際医療福祉大学大学院教授の黒岩祐治氏による。記事の内容はタイトルから予想できるものだった。「検証 医療…

インフルエンザ診断ゲームで学ぶ検査閾値と治療閾値

簡易検査はするべきではない? 北秋田市の病院でインフルエンザの集団感染があった。簡易検査では陰性だったが死亡した患者もいたと報道された*1。インフルエンザ迅速診断キットの感度は高くない、つまり、インフルエンザに感染していても検査結果で陰性と出…

お金の切れ目が命の切れ目

肝臓癌の治療薬にソラフェニブという薬がある。商品名はネクサバール。日本では2009年5月から保険適応となった。肝臓癌の治療法は、部分肝切除術、ラジオ波焼灼療法、肝移植、腫瘍塞栓術、持続動注化学療法など複数あり、病期や肝障害の程度によって使いわけ…

そんな餌で大丈夫か?人工イソメを使ってみた

ふと気付けば、医学関係の記事ばかり書いている。昔は、魚を釣ったとか、つくしを摘んだとか、日常のことについてもわりと書いていたもんだ。なので、今回は、夏休みに人工イソメを使った話をする。みなさんは、人工イソメをご存じか。こんなのだ。 生分解性…

ホメオパシーはまた人を殺すだろう

ハインリッヒの法則をご存じだろうか。「一件の大きな事故・災害の裏には、29件の軽微な事故・災害、そして300件のヒヤリ・ハット(事故には至らなかったもののヒヤリとした、ハッとした事例)がある」という法則のことだ*1。1:29:300という比は分野によって…

医療ネグレクトの定義

ホメオパシーをはじめとした代替医療の問題として、子供が必要な医療を受けられないことがある点が挙げられる。もちろん、多くの場合、代替医療を利用している親も、子の病状が重篤になれば医療機関に受診させ標準医療による治療を受けるだろう。しかし、現…

癌霊1号が白血病に効く!代替医療が標準医療になるとき

「癌霊1号(癌灵1号/Ailing No.1)」は漢方薬である。いかにも怪しげな名前である。また私がインチキくさいトンデモ医療を見つけ出してきて笑い物にしようとしているのだろうと、読者は思われるかもしれない。しかし、本エントリーは、トンデモでなく、医学…

ニコ生に電話ゲストとして出ます

ニコ生シノドス『ホメオパシー騒動とニセ科学論争の行方』に電話ゲストとして出演させていただけることになりました。日時は9月26日(日) 20:00〜22:00です。 ■SYNODOS JOURNAL : ホメオパシー騒動とニセ科学論争の行方 菊池誠×久保田裕(司会…

「虚構体系」の効果

twitterにて、「針灸やホメオパシーは、先生の話や、そのよくできた虚構体系によって、治癒する可能性」があるのではないか*1という議論があった。yonemitsu(米光一成)さんの主張は、ホメオパシーそのものに効能がないことには同意しつつ、「おまじない」…

「冷たい」標準医療は「ぬくもりある」代替医療に勝てない

がんばれ!猫山先生〈2〉 「がんばれ!猫山先生」は、日本医事新報という雑誌に掲載されている4コママンガである。日本医事新報は医師向けの雑誌であるので、「がんばれ!猫山先生」も、完全に医師向けの内容である。内輪受け、自虐ネタが多い。今回紹介する…

ホメオパスの成功体験が悪性リンパ腫を見落とさせた

リスクの大きさの感じ方は、代替医療に親和性のある人との間に大きな隔たりがあるようだ。新生児にビタミンKを投与しなければ、頭蓋内出血等で死亡する確率は2000〜4000分の1である。私を含めて、ほとんどの医師は、無視できないリスクと考えるだろう。だけ…

アナフィラキシーショックをホメオパシーで治した!スゴイでしょ!

「nina's[ニナーズ]」という雑誌にホメオパシーの体験談が載っていると聞いて、購入してみた(2010年9月号[平成22年8月7日発売])。子育て中の女性をターゲットにした雑誌のようだ。UA(ウーア)という女性シンガーソングライターが表紙で、UAさんのインタ…

脳の中の「わたし」

■脳の中の「わたし」坂井克之著, 榎本俊二著。 脳研究者による本。「脳科学」は、一部の脳科学者のために、いささか怪しい分野であるように見えるが、この本は大丈夫だ(と私は判断した)。私は未読であるが、著者の坂井は、「脳トレ」や「ゲーム脳」などの…

ホメオパシーの有効な利用法

ホメオパシーのレメディは実質的に砂糖玉と一緒で、薬理的な効果は何もない。にも関わらず、というか、だからこそ、診療でレメディが使えたら、結構便利だろう。いくらでも使いようはある。たとえば、 薬に抵抗のある人に 「ワクチンは嫌」「ステロイドって…

ホメオパスになるためのコスト

ホメオパシーによる被害者は、レメディによる治療を受けた人だけではない。ホメオパス自身も被害者となりうる。ホメオパシージャパンの関連団体にホメオパスを養成する学校がある。学長は由井寅子氏だ。 ■ホメオパシー統合医療専門校 カレッジ・オブ・ホリス…

ホメオパシーについて朝日新聞が詳報

本日(2010年8月5日)、朝日新聞が、紙面およびウェブにて、ホメオパシーについての記事を掲載した。まず、ウェブ版をリンクする。 ■asahi.com(朝日新聞社):「ホメオパシー」トラブルも 毒薄め妊婦や乳児に処方 - アピタル(医療・健康)*1 紙面のほうは…

自称「摂食障害の専門家」に訴えられかけた思い出

■助産院は安全?というブログでは、ビタミンKを含むシロップの代わりにホメオパシーのレメディを投与することについての危険性を、マスコミが報じる前から伝えていた。該当するエントリーはたとえば、■ホメオパシー、レメディの問題>K2シロップの件 - 助産…

クリニックで幹細胞療法はいかが?

幹細胞は、さまざまな細胞に分化する能力を持つ。骨髄移植や臍帯血移植などの造血幹細胞移植はすでに標準医療となっているが、それ以外の再生医療への応用については、まだ研究段階である。しかし、ロシアでは、「しわ取りから、パーキンソン病、インポテン…

ビタミンK不投与事件から自己決定権、親権の及ぶ範囲、医療専門職による説明義務を考える

山口市において、乳児がビタミンKを投与されず、「自然療法を提唱する民間団体の砂糖製錠剤」を与えられ、ビタミンK欠乏性出血症による急性硬膜下血腫を起こし死亡したという事件があった(■(cache) 損賠訴訟:山口の母親、助産師を提訴 乳児死亡「ビタミン…

何でも治る超ミネラル水。野島尚武博士が熱い!

超ミネラル水とは何か?「癌・糖尿・アトピーなどの現代病治療(がん治療)専門クリニック」と自称している野島クリニックのサイト*1から引用しよう。 超ミネラル水(遺伝子ミネラル)とは副作用のない、抗がん剤のようなものです。 ガン・糖尿・アトピーを…

パリ大学アルベルン(アルペン)教授の「がん細胞の血球原説」

今回も、くだらないトンデモ学説に対するくだらないツッコミだよ。あまりにもくだらなさすぎる上、笑える要素も少なくオチもないのでエントリーにするかどうか迷ったけど、何度も同じくだらない議論をするのはいやだからまとめてみた。さて、一部の代替医療…