NATROMのブログ

ニセ医学への注意喚起を中心に内科医が医療情報を発信します。

2007-10-01から1ヶ月間の記事一覧

老衰の「発病」はいつ?

まずは新聞記事の引用から。 ■誤診めぐり遺族が病院を提訴 (新潟日報) 柏崎市の刈羽郡総合病院(小林勲院長)で刈羽村の男性=当時(90)=が腹膜炎で死亡したのは、医師が誤診して見落としたからだとして、男性の遺族が29日までに、同病院を運営する県厚生…

老衰の「発病」はいつ?

老衰死は増えているか?

地下に眠るMさんによる医学的にみて純然たる老衰死ってあるの?という質問にインスパイアされて、老衰死の割合および経時的な増減を調べてみた。残念ながら純然たる老衰死の割合は不明であり、ここで論じるのは死亡診断書の死因の欄に「老衰」と書かれたも…

経口摂取の同意書

■損賠訴訟:入院患者の遺族、水ようかん摂取が死因 病院ミス否定−−鳥取地裁 /鳥取(毎日) 訴状によると、男性は03年10月上旬、肺炎などで同病院に入院した直後から医師に絶食を指示された。ところが同月中旬、担当の看護師が水ようかんを食べさせた約…

O型は肉を食え?血液型別ダイエットは根拠なし

やせる方法にも科学的根拠のあるものからトンデモなものまでいろいろだ。たとえば血液型別ダイエットなんてものまである。ちょいとGoogle検索してみたら、まあ予想できるように上位はほとんど肯定的なページである。中には科学的な考証をしたページもあって…

タバコはジャガイモや水道水より安全?

■るいネット((URL:[]http://www.rui.jp/[]))という「新しい認識を求める人のサイト」がある。「30年の実績を持つ企業・類グループを中心に管理・運営」されているのだそうだ。以前、るいネットの人たちと議論する機会があったが、彼らの認識が新しすぎて私がつ…

勤務医の主張

■医療の限界 ■誰が日本の医療を殺すのか―「医療崩壊」の知られざる真実 勤務医による、医療崩壊を論じた本。内容は概ね医療関係のブログで言われているようなことなので、普段からそうしたブログを読んでいる人はわざわざ買って読む必要はない。匿名でない情…

日経メディカルでトンデモ医療裁判の特集

誰かが書くかなと思っていたけどあまり話題にあがらないので自分で書く。今月号(2007年10月)の日経メディカルの特集は、「医師を襲うトンデモ医療裁判」であった。 ■日経メディカル 2007年10月号(魚拓) 医師を襲うトンデモ医療裁判 医療の限界や不確実性…

母乳で伝わる遺伝子

無知と偏見は連鎖する。病気の原因がわかっていなかったのがハンセン病患者に対する偏見の一因である。ハンセン病は感染症であり、感染力は非常に弱いことが周知されれば、「ハンセン病は患者が過去に犯した悪行に対する報いだ」などという偏見は消えていく…

群衆の数を推定する

「教科書検定意見撤回を求める県民大会」の参加者数が議論になっている。朝日新聞では「11万人」*1。産経新聞は「4万人強」*2。よく聞く話だよな。この手の話を書いた本がたしか本棚にあったはず。 ■統計はこうしてウソをつく ジョエル・ベスト(著), 林 大 (…

医療業界が自由競争ではうまくいかない理由

「医療業界にはいろいろ規制があって非効率的だ。市場原理にまかせて競争にさらせば、より良い医療機関が残り、医療の質は向上する」 という意見を散見する。「混合診療全面解禁を!」「医師会が反対するのは既得権利を守るためだ」という主張とセットになっ…