NATROMのブログ

ニセ医学への注意喚起を中心に内科医が医療情報を発信します。

2018-01-01から1年間の記事一覧

紛らわしい「ニセ医学」~免疫療法と幹細胞療法

2018年の医学関連ニュースといえば、なんといっても本庶佑先生のノーベル賞受賞であろう。がん細胞が免疫から逃れる仕組みを明らかにした。また、免疫チェックポイント阻害剤としてすでに臨床応用もされている。一番名前が知られているのは「オプジーボ」(…

『ワールドトリガー』再開を祝って福岡市の玄界島の魅力を紹介します

週刊少年ジャンプにおいて、長らく休載されていた『ワールドトリガー』の連載が再開しました*1。ワールドトリガー 19 (ジャンプコミックス)作者: 葦原大介出版社/メーカー: 集英社発売日: 2018/12/04メディア: コミックこの商品を含むブログを見る『ワールド…

新装版『「ニセ医学」に騙されないために』、発売です。

以前から告知を行っていましたが、新装版『「ニセ医学」に騙されないために』が本日(11月29日)発売になりました。新装版についても、サイエンス・ライターの片瀬久美子さんが解説文を書いてくださいました。片瀬さんと出版社のご厚意によりウェブ上でも読…

はてなブログに移行しました。そして新装版『「ニセ医学」に騙されないために』が出ます!

はてなブログに移行しました。そして新装版『「ニセ医学」に騙されないために』が出ます!著者名はNATROM改め名取宏(なとり・ひろむ)です。

「生存率の上昇」と「死亡率の低下」は違います

■医師国家試験を解いてみよう。「がん検診の有効性を示す根拠はどれ?にて、『Wikipediaの「がん検診」にはbが正解であると書いてあるが…』とのブックマークコメントをenvsさんからいただきました。こうして疑問点について教えていただけることをたいへんに…

医師国家試験を解いてみよう。「がん検診の有効性を示す根拠はどれ?」

がん検診にまつわる誤解は根深く、医師でもけっこう間違えている人がいます。ただ、医師国家試験にがん検診が有効である根拠を問う問題が出題され、若い世代の医師はがん検診の疫学をより正確に理解しているものと思われます。厚生労働省のサイトに過去問が…

他人にアレルギー症状を起こさせる疾患「PATM(パトム)」は実在するか?

PATM(パトム)についての医学論文はほとんど存在しない 「PATM(パトム, People Allergic To Me)」と呼ばれる病気がある。本人には必ずしも症状はないが周囲の人に咳、くしゃみ、鼻水といったアレルギー症状を起こさせるとされる。典型的には、自分が電車…

臨床環境医の利益相反

たとえばの話、「日本高血圧学会」の学会窓口を、降圧薬を売っている製薬会社がやっていたら、いくらなんでもまずいと思うよね。少なくとも現在の常識から言えば論外。何が問題かというと、たとえば「この降圧薬の効果はそれほどでもなく、むしろ副作用のほ…

「子宮頸がんで人は殆ど死なない」のか?

喫煙の害を過小評価しようとしているのか、「肺がんで死ぬのは10万人に80人、約0.08%である。タバコが肺がん死を数倍増やすとしてもたかがしれている」といった主張を散見する。10万人に80人というのはおそらく、日本人男性の肺がん粗死亡率からきている。…

HPVワクチンの問題はトロッコ問題か?

「ワクチンで人が死んではいけない」といった趣旨のツイートがブックマークを集めている。そのいくつかが、HPVワクチンとトロッコ問題の類似性について指摘している。トロッコ問題とは、暴走したトロッコがそのままだと5人ひき殺すことろが、ポイントを切り…

日本語で書かれた教科書も理解できない大学教員

2017年11月に九州大学馬出キャンパスで行われた「福島小児甲状腺がん多発問題」に関する科学技術社会論学会の自由集会*1に参加させていただいた。集会に先立って、富山大学の林衛氏とやり取りする機会があった*2。林衛氏は、LDLコレステロールが動脈硬化性心…

HPVワクチンの「重篤な有害事象」7%は高すぎるか?

医療情報を吟味し伝える活動を行うコクランがHPVワクチンのレビューを発表した。各新聞社が伝え、また、コクランの日本支部による日本語訳も読める。 ■英民間組織:HPVワクチン「深刻な副反応の証拠なし」 - 毎日新聞 ■子宮頸がんワクチン、「前がん病変…

『健康を食い物にするメディアたち ネット時代の医療情報との付き合い方』

■健康を食い物にするメディアたち ネット時代の医療情報との付き合い方 朽木 誠一郎 (著) 私は「WELQ問題」にぜんぜん気づいていなかった。WELQ問題とは、「一部上場企業のディー・エヌ・エーが、グーグルなどの検索エンジンを攻略し、ウソや不正確な情報を…

HPVワクチンが自己免疫疾患を増やすという証拠はない

全国子宮頸がんワクチン被害者連絡会事務局長・日野市議会議員の池田としえ氏が、「HPVVの副反応は、1000人に1人とされているが、健康な若い女性13236人の治験の結果、ガーダシル9の自己免疫疾患系副反応の発生率は、2.3%であることが明らかになっている(表)…

SNSのせいで落語を楽しめない

私は桂春蝶師匠(3代目)の落語が好きだ。上手い下手、良し悪しを判断できるほど落語を聴きこんでいないので、この記事で語るのは私の主観による好き嫌いの話である。初めて聴いた春蝶師匠の噺は、私の記憶が確かなら、『看板のピン』である。落語は同じ演目…

インフルエンザ蔓延予防のための受診は必要か?

「高リスクグループや重症者でなければ受診は必要ないというけれども、インフルエンザだったら他人に感染させないために解熱してから2日間は自宅での安静が必要であるのだから、きちんと受診して診断してもらう必要があるのではないか」という意見を聞く。結…

インフルエンザで「早めの受診」が必要なのはどんな人?

インフルエンザが大流行である。Yahoo!ニュースに■インフルエンザで「早めの受診」は間違いです! (新潮社 フォーサイト)という記事が載った。コメント欄やブックマークは賛否両論だ。読んでみたところ、いいことも書いてあれば、首肯できないことも書いて…

イングランドにおいてHPVワクチン接種世代の子宮頸がんは増加していない

全国子宮頸がんワクチン被害者連絡会事務局長・日野市議会議員の池田としえ氏が、英国においてHPVワクチン接種世代の子宮頸がんが確実に増加しているとツイートした。【拡散希望・ワクチン接種後癌の増加か?大問題!ワクチン接種したからこそ、検診をこまめ…