NATROMのブログ

ニセ医学への注意喚起を中心に内科医が医療情報を発信します。

科学

非対称の起源

■非対称の起源(ブルーバックス) C. マクマナス(著)、大貫昌子(訳)ネットで評判の本はアマゾンで買っちゃうが、店頭で手にとって本を買う習慣もまだある。なかなか読書の時間がとれなくて積んでるだけの本も多くあるのだが、「この機会を逃すと二度と読…

kikulogにABO FANさん出現

「まん延するニセ科学」の菊池誠さんとこのコメント欄が熱い。 ■血液型と性格(kikulog) 2006年9月のエントリーだったのだけれども、今年(2007年)の5月になってABO FANさんが突入。きくちさんの辛抱強い対応に注目。ABO FANさんを説得するのは不可能である…

メディア・バイアス あやしい健康情報とニセ科学

■メディア・バイアス あやしい健康情報とニセ科学 (新書)2007年4月初版。松永和紀著。カズノリではなくワキ。食卓の安全学―「食品報道」のウソを見破るなどの著作がある。プロフィールによれば毎日新聞社の記者として10年勤めた後に退職し、現在、フリーの科…

血液型と性格と日本人のルーツ

■血液型で性格は判断できない、ということ。(『広告業界就職フォーラム』挨拶専用ブログ) リンク先の趣旨には概ね賛成*1。問題はコメント欄。とある業界人さんから、以下のようなコメントが。 業界最大手のD社の社員における血液型別構成比と、日本人平均…

反証実験の必要性〜化学物質過敏症に対する負荷テスト

田崎晴明氏による■「水からの伝言」を信じないでくださいに対し、■『「水からの伝言」を信じないでください』と言うのならやるべき事は一つだろう?(音極道茶室)にて、「やればいいじゃん反証実験。その結果を示すだけで、ごたくを並べなくとも完膚なきま…

科学と宗教は共存できるか

id:good2ndさんという方が、宗教と科学が共存しうるかについて疑問を呈しておられた(■神の存在について(児童小銃)経由)。 ■穏健な宗教(good2ndの日記)。 ちょっと前の話題ですが、ニセ科学がらみで「穏健な宗教と科学は共存できる」というような言い方…

脳科学者と遺伝学

池谷裕二という「生物系研究者」、脳科学者であるらしいのであるが、VISAカードの月刊誌に、血液型と性格の関係を示唆する文章を載せている(★Tadの秘密の日記★経由)。「(赤血球の表面の糖鎖が異なるから)毛細血管の血球の流れやすさが異なり、酸素供給効…

日本の奇妙な科学

New York Timesに"Blood, Sweat and Type O: Japan's Weird Science"と称して血液型性格診断の話題が取り上げられた。 ■Blood, Sweat and Type O: Japan's Weird Science(New York Times)西武ライオンズの松坂投手のレッドソックスがらみの記事。記事には…

もう一人のチャールズ・ダーウィン

■「功名が辻」セリフに時代考証ミス(デイリースポーツ) ミスがあったのは豊臣秀吉の妻高台院(浅野ゆう子)が「うちの人が亡くなって10年、関ケ原の戦から3年」と言った場面。秀吉の没年は1598年で、放送シーンは1603年の設定だったため「死んで5年」が…

冥王星の発見物語

冥王星が新しい定義では惑星ではなくなるというニュースが最近あった。「冥王星はパーシヴァル・ローウェルの弟子のトンボーが苦労して見つけた」というのが私の冥王星に関する知識。私の非専門分野の自然科学の知識は、多くはアシモフの科学エッセイに由来…

ブドウ糖がグルコースになる

「食育」の理念には賛同するけれども、食育を勧めている人たちの中にはちょっと科学的知識がアヤシゲな人もいるのが気になる。 ■脇清美さんに聞く…食生活の「自律」が大切(読売) 朝食に穀類が望ましいのは、その中に含まれるブドウ糖が、体内で脳の栄養源…

昆虫食がゲテモノ扱いされるのはなぜだろう?

前回のエントリーではカブトムシを捕まえたというほのぼのとした話題を扱ったのに、コメント欄ではいつの間にか虫を食べる話題になってしまっていた。ずいぶん以前に読んだ、■昆虫食はいかが? (ヴィンセント・M. ホールト著)を思い出した。「19世紀末に書…

遅滞遺伝とどう違うのだろう?

医学・科学系のニュースサイトで知った、非メンデル遺伝のメカニズムの一つが解明されたという記事。 ■遺伝情報はDNA以外によっても伝達される(Dr 赤ひげ.COM) ヒトゲノム(ヒトが核内にもつDNAの1セット)に存在する何千もの遺伝子はすべて、両親からそ…

シュテッフェンの多面体

■パズルでめぐる奇妙な数学ワールド の第14章の『アコーディオンは「欠陥楽器」か!?』からのネタ。平面図形として三角形は「唯一」の安定した多角形なのだそうである。「安定」とは、辺の長さはそのままで形が変わらないということである。たとえば、長方…

数学パズル

■パズルでめぐる奇妙な数学ワールド イアン・スチュアート (著)、伊藤文英 (訳)数学パズルの本って、たいがいはどっかで見たようなパズルの寄せ集めだったりするのだけど、この本は違う。どの章もオリジナリティにあふれている。見たことがあると思っても、…

貝のミラクル

■貝のミラクル―軟体動物の最新学 奥谷喬司 編著貝類は、無脊椎動物としては身近であるにも関わらず、あまり一般書を読んだことがなかった。親父の本棚にあったのを拝借して読んでみたけど、結構面白い。18章にわけて、それぞれ貝類学の専門家が書いている。…

ワトソンの書いたDNAの本

■DNA J.D.ワトソン (著), 青木薫(翻訳)ワトソンとはもちろん、DNAの二重らせん構造を発見したジェームス・ワトソンのこと。しかも、青木薫の訳であったので無条件で買っておいたのを、やっと今頃読了した。原著は2003年。献辞は「フランシス・クリックに」と…

耳垢の遺伝子の研究のすごいところ

耳垢の乾湿は、ヒトにおいて単純なメンデル遺伝する形質の古典的な例である。耳垢の乾湿を決める遺伝子が、一塩基多型のレベルまで明らかになったという記事。ネイチャー・ジェネティクス誌に掲載された。「目に見える遺伝的形質を決定するDNA多型の最初の例…

ネットワーク科学とmixi

■複雑な世界、単純な法則 ネットワーク科学の最前線 マーク・ブキャナン (著), 阪本 芳久 (翻訳)アメリカの心理学者のミルグラムが行った、手紙を仲介してもらう実験は、どこかで聞いたことがあると思う。 …ミルグラムは、カンザス州とネブラスカ州の住民か…

遺伝子の起こし方

遺伝子スイッチオンで有名な村上和雄の記事が毎日新聞に載ったよ。■暮らしWORLD・からだ百科:遺伝子の起こし方(毎日新聞) たとえば「火事場のばか力」といわれるように、人間は極限状況で普段考えられない力を発揮します。これは眠っていた良い遺伝…

立花隆の計算はおかしい

話題の女系天皇をめぐるY染色体論について、立花隆が言及。 ■神武天皇のY染色体を受け継ぐ人々はゴロゴロいる 神武天皇から今上天皇まで、一応125代ということになっているが(実際には、かなり神話的な部分が入りまじった伝承だから怪しい)、一応これを信…

食パンのパラドックス

相ま系(相対性理論は間違っている系)のサイト。■食パンはおいしく焼けるのか?(相対性理論の疑問点)説明するのは図やらなんやらが必要なので、リンク先を参照のこと。世界初ってこたないだろうが、なかなか面白いパラドックスである。時空図とかちゃんと…

鼻行類 新しく発見された哺乳類の構造と生活

■鼻行類―新しく発見された哺乳類の構造と生活 ハラルト シュテュンプケ (著), Harard Stumpke (原著), 日高 敏隆 (翻訳), 羽田 節子 (翻訳) こないだからの馬鹿右翼理系保守関連で、山形浩生による竹内久美子批判(■竹内久美子:女のオヤジ)を紹介した。そ…

鼻行類、日本で発見

鼻行類で検索していたら、奄美大島で発見されていたというニュースを発見。こんな大ニュースをなんで見落としていたんだ?来年の夏は、奄美大島で鼻行類オフだな。中野の鼻経由。新聞記事がアップされている。グッジョブ。本当に心の底から、グッジョブとい…

「水からの伝言」をめぐる科学コミュニケーション

菊池誠さんのブログで、「水からの伝言」を題材に、科学コミュニケーションについて議論がおこっている。「水からの伝言」とは、水に「ありがとう」などの良い言葉をかけると結晶がきれいなるという奴だ。そこから派生して、人に良い言葉をかけると病気が治…

DNAから見た日本人

実家に「日本人はどこからきたか 新・日本人起源論の試み」(埴原和郎編、小学館)という本がある。父が買ったのであろう。1984年初版であるから、ざっと20年前だ。言語学や骨学に関する章と並んで、「集団遺伝学からみた日本人」という尾本恵市による章があ…

確率の問題

人力検索サイトはてなの質問より。■確率の問題です [問題] 3×3のマスに1〜15の数字の中から好きな数字9個を入れます。 真ん中はFREEではありません。 同じ数字は2度使えません。 ランダムに数字を抽選して 3回目でタテ、ヨコ、ナナメのどれかが揃う…

「お互いの遺伝子を与え合う」?

ディスカバリーチャンネルの番組紹介より。■シリーズ:人体機能の研究 セックスと人体機能 人間はセックスをして人類を増やすために生きている、と言っても過言ではない。相手の心を魅了する時、男と女の体内では何が起こるのかを探る。性交中に刺激が高まり…

遺伝情報を含まないDNA型情報

■容疑者DNAの登録開始 9月から、犯罪捜査に限定(産経新聞) 警察庁は18日、容疑者から採取した血液などを鑑定して得たDNA型情報について9月1日から登録を開始し、データベースの運用を始めることを決めた。犯罪現場に残された毛髪や体液などの資…

犯罪者DNAデータベースの功罪

■DNAデータベース“初手柄”、わいせつ犯の余罪特定(読売新聞) 帰宅途中の女性に乱暴したとして、大阪府警に強制わいせつ致傷容疑で逮捕、起訴された東大阪市の運転手、Y被告*1(21)のDNA(デオキシリボ核酸)が、警察庁の「DNAデータベース」に…