NATROMのブログ

ニセ医学への注意喚起を中心に内科医が医療情報を発信します。

トンデモ

「万能薬」ができるわけ

ニセ医学の多くは効果が特定の疾患に限定されず、きわめて多様な疾患に効くと吹聴されている。例を挙げれば、血液クレンジングは慢性疲労・肩こり・冷え性、頭痛、不妊症、更年期障害、高脂血症、高血圧、花粉症、アトピー性皮膚炎、認知症・脳血管障害の予…

HPVワクチンが自己免疫疾患を増やすという証拠はない

全国子宮頸がんワクチン被害者連絡会事務局長・日野市議会議員の池田としえ氏が、「HPVVの副反応は、1000人に1人とされているが、健康な若い女性13236人の治験の結果、ガーダシル9の自己免疫疾患系副反応の発生率は、2.3%であることが明らかになっている(表)…

加熱式たばこ可は完全禁煙ではない

以前、■食べログで完全禁煙の店を検索する方法を紹介したが、今後はこの方法は実用的でなくなるかもしれない。食べログが『「プルーム・テック」を楽しめるお店特集』を行っている*1。「プルーム・テック」とは加熱式のたばこ用デバイスである。現状の法律下…

ニセ医学に騙されているのに境界線上の事例を検討できようか

コレステロールは心筋梗塞などの動脈硬化性の心疾患の原因だ。より正確には、コレステロールの中でも、いわゆる「悪玉」と呼ばれるLDLコレステロールが原因である。また、スタチン(商品名ではメバロチンやリピトールなど)をはじめとしたコレステロールを低…

二重盲検法でオーリングテストの効果を実証したと称する「文献」を読んでみた

オーリングテストはもはや由緒正しいニセ科学と言っていいだろう。指をアルファベットの"O"の字にして指が離れるのに抵抗する力から、薬を選んだり、病気を診断したりできると主張されている。詳細は■『謎解き超科学』のナカイサヤカさんの『「オーリングテ…

内閣府チームによる研究開発プログラムの一つがニセ科学だった

内閣府チームによる研究開発プログラムにおいて科学的手法に問題があったことが日本経済新聞のサイトに掲載された(日経産業新聞4月12日付)。 ■内閣府チーム、仮説段階の研究を表彰 :日本経済新聞 「このコンテストから新しい企業の研究の種を育てたい…

コレステロール大論争で科学リテラシーを学ぼう

林衛氏によれば、以下に引用するグラフが、心疾患のコレステロール原因説を否定するデータなのだそうだ。 林衛、Medical Bio, 2011年3月号, Page73〜78、コレステロール大論争:「動脈硬化学会VS脂質栄養学会」論点の腑分け より引用 このグラフからは、複数…

ミツバチのレメディ「エイピス」は何に効く?

「ホメオパシー」という代替医療では、ある症状を引き起こす物質を希釈すればその症状を治す薬になると考えらえている。たとえば、ミツバチを希釈したものはミツバチによる虫刺されに効く、という具合だ。また、希釈すればするほど効果が増すとされる。原料…

「ソルトウォーターバッシング(塩水洗浄)」は危険です

大量の食塩水を飲用して腸を洗浄すると称する「ソルトウォーターバッシング」あるいは「塩水洗浄」というダイエット法が流行っているようです*1。「自宅で簡単にデトックスできる」などと謳われていますが、医学的な観点からは、ソルトウォータバッシングは…

若年性脳梗塞が増えているというのは本当か?

日刊ゲンダイDIGITALに若年性脳梗塞についての記事が載った。「若年性の患者数はこの10年で5割も増えている」のだそうだ。 ■患者数は10年で5割増 ゆとり世代で「突然死」急増のナゼ | 日刊ゲンダイDIGITAL 脳梗塞といえば中高年以上の病と思いがちだが、…

クロロフィルが予防する謎の疾患「月琴炎」とは何か

約10ヶ月前につぶやいた■三宅洋平氏についてのツイートが最近になってまたリツイートされはじめた。ミュージシャンである三宅洋平氏が、参議院議員選挙に立候補することを表明したためらしい。ちなみに、三宅洋平氏はこんな感じの方。 個人ができるTPPへの最…

コレステロールを下げると危険なのか?

相関関係が因果関係を示すとは限らないことは、みなさまよくご存知であろう。有名な例は朝食と成績の関係である。朝食摂取と良好な成績に相関関係があることは、朝食をきちんと食べる学生ほど学校の成績が良いというデータからわかる(こういう研究を観察研…

肝臓洗浄(レバーフラッシュ/肝臓デトックス)は本当か?

「肝臓洗浄」とは肝臓や胆のうにある胆石を排出させ、肝機能の改善など効果をうたう民間療法です。「レバーフラッシュ」とか「肝臓デトックス」とか呼ばれることもあります。肝臓洗浄にはいろんなやり方があるようですが、典型的には空腹時にオリーブオイル…

甲状腺がん検診でPECOを学ぼう

成人、小児に限らず、甲状腺がん検診が、がん死や有害なアウトカムを減少させるという臨床的証拠は存在しない。むしろ、観察研究によれば成人に対する甲状腺がん検診はがん死を減少させないという証拠すらある(■韓国における甲状腺がんの過剰診断)。甲状腺…

新生児へのビタミンK投与をデメリットとみなす「日本おまたぢから協会」代表・立花杏衣加氏

2009年に、山口県で、ビタミンKを投与されなかった新生児が硬膜下血腫により死亡した事件がありました。ビタミンKは血液を固める作用のある因子の合成に必要で、ビタミンKが不足すると出血しやすくなります。新生児はとくにビタミンKが不足しやすく、ビタミ…

時系列研究でも甲状腺がん検診ががん死を減らしたとは言えない

cyborg0012さんによる「韓国ではスクリーニングブームが始まった2000年前後から年齢調整死亡率が低下している」という主張が正しくないことを指摘するために、前回のエントリー(■韓国において、1997年から2011年にかけて、甲状腺がんによる死亡率は低下した…

なぜEM(EM菌)はインチキでニセ科学と言われるのか

琉球大学農学部教授であった比嘉照夫氏が開発したEM(EM菌)は代表的なニセ科学だとみなされている*1。一方、「数百の論文」があるがゆえに、EMはインチキでもニセ科学でもないとの主張がある。 ■2014年10月20日の記事 | EM(微生物)の力で環境を守る イン…

近藤誠氏は対談を持ちかける前に論文を書くべきだ

産経ニュースに、近藤誠氏の子宮頸癌についての週刊誌記事、およびその記事に対する産婦人科医たちの反論についての記事が掲載された。 ■【日本の議論】「病院は金のためなら平気で子宮を奪う」異端医師・近藤誠氏の週刊誌記事に「産科婦人科学会」怒り心頭…

まさか今時ニュートンを否定している人なんていないですよね?

間違い方は多様である。説明のためにごく単純な例を挙げよう。算数の問題で、「1+1=」と問われたら、正しい答えは「2」しかない。一方で間違った答えは無数にある。「1+1=1」「1+1=3」「1+1=4」「1+1=5」。すべて間違った答えであ…

近藤誠氏による乳がんの生存曲線のインチキを解説してみる

近藤誠氏は「がん放置療法のすすめ」「医者に殺されない47の心得」などの著作で知られる医師である。2014年6月29日に放送された、<BSフジサンデースペシャル>『ニッポンの選択』というテレビ番組に、近藤誠氏が出演していた。その中で近藤誠氏が提示した、…

「HPVは子宮頸癌の原因ではない」というトンデモ説

喫煙は肺癌の原因の一つである。「タバコは肺癌の原因だ」という主張には、「タバコを吸ったら必ず肺癌になる」とか、あるいは「肺癌の人は必ずタバコを吸ったことがある」とかという主張は含まれない。「タバコを吸っていると、吸わないよりは肺癌になりや…

「ワクチン接種による胎児死亡率の増加が4000パーセントを超えています!」

「妊娠中にインフルエンザのワクチンを接種した場合、胎児の死亡率は4250%アップ」*1というツイートがあった。プロフィールによれば「専門は動物の統合診療医&外科医」。 妊娠中にインフルエンザのワクチンを接種した場合、胎児の死亡率は4250%アップhealthi…

相変わらずの血液型の話題

最近、血液型と性格の関連についての話題をよく見る。たとえば「ヒトメボ」というサイトからエキサイトニュースに紹介された記事。 ■B型の祖先は遊牧民? 世界で共通する血液型と性格の関係(ヒトメボ) - エキサイトニュース 「血液型と性格の分析は日本が最…

ローレンツと体罰

『体罰は教育です!』『子供には「体罰を受ける権利」があります』と主張する、「体罰の会」というサイトに、コンラート・ローレンツに関する記載があった。 ■**体罰の会** 水が高いところから低いところに流れるように、学級生徒の中に怠惰な者がいて、それ…

非典型例の恐ろしさ

ワクチンで防げる病気(VPD)に対して、「免疫力があれば難なく乗り越えられる」と主張している自称医師がいた。 羅列されている感染症は重症感染症ではなくごく当たり前で自然に備わった免疫力があれば難なく乗り越えられるもの!それを乗り越えられない極…

肝臓癌の死亡の増加は食事のせいではない

3年前に■有害米と肝臓癌死亡数の増加は無関係というエントリーで、国立がんセンター対策情報センターから肝臓癌による死亡者の推移の図を引用した。 年令別がん死亡数の推移(男性)(国立がんセンター対策情報センターから引用) 1970年ごろから2000年ごろ…

「近親婚タブー」は血縁淘汰説を否定するか?

「自分の皮膚細胞から卵子と精子を作り、それを受精させて、もう一人の「若々しい別な自分」(クローン)を誕生させることも、理論的には可能になる」と書いちゃったダイアモンド・オンラインの安藤茂彌氏による記事に、以下のようなブックマークコメントが…

読売新聞グループが紹介する「質の高い専門家」が千島学説の支持者だった

「まちの専門家をさがせるWebガイド マイベストプロ大阪」というサイトで、「犬のアレルギー症状を改善させるプロ」と称する人がコラムを書いていた。肥満性細胞腫という犬の癌について、「抗ガン剤については、止めておかれる方が良いと思います」と書いた…

「ガンはうかつに治療するな」は本当?

ツイッターで「ガンはうかつに治療するな!」という主張が流れてきた。まあ癌の種類や病期や患者さんの状態によっては確かにそうなんだけど、例によって標準医療を否定する内容であり、うかつに信じる人がいたらヤバそうな内容であった。転載ばかりでどこが…

微量元素補充療法を勧めているサイトから相互リンク依頼が来た

「【がんの治療】を管理しているオールマイティジャパン(株)」というところから「是非とも相互リンクをお願いしたい」というメールが来た。既に先方の■がん治療のお勧めリンクというページから私のブログの■どうして日本は癌大国になってしまったのか?とい…