NATROMのブログ

ニセ医学への注意喚起を中心に内科医が医療情報を発信します。

2013-01-01から1年間の記事一覧

「謎解き超科学」(書評)

.style1 { color: #000066; font-weight: bold } ■謎解き超科学 ASIOS (著)著者のASIOSは団体名(「Association for Skeptical Investigation of Supernatural」(超常現象の懐疑的調査のための会)である。実際には本書は複数の著者によって書かれている。…

生活習慣病の自己責任論について

JBpressの医療関係の記事には問題が多い。今回は人工透析の「自己責任論」についての記事が載った。糖尿病の合併症の一つが糖尿病性腎症であり、進行すると人工透析が必要になる。現在の日本における透析導入原因の疾患の第一位は糖尿病性腎症である。糖尿病…

臨床環境医学(Clinical Ecology)と環境医学(Environmental Medicine)は異なる

国語の論説文の問題は、与えられた文章さえ読めば回答できるように出題者によって作られている。しかしながら、専門分野に関係する論文や報告書については国語の論説文のようには必ずしもいかない。前提となる専門知識が必要で、与えられた文章だけでは疑問…

臨床環境医学は専門家にも注目されていた。悪い意味で。

AMA(米国医師会)を含む複数の学術団体が1994年に出した「室内空気汚染:医療専門職のためのイントロダクション」という報告書*1において、臨床環境医に擁護的な記述があるかどうか、という話の続きだよ。sivadさんは、1994年報告書は臨床環境医学に対し「…

なぜ「化学物質過敏症」患者に対して包括的な検査が必要なのか

日本学術会議が「例えプラセボとしても、医療関係者がホメオパシーを治療に使用することは認められません」という声明を発表したのが2010年の8月である。ちょうど3年前。さて、例えばの話、日本学術会議なり、日本産婦人科学会なり、なんらかの公的な学術団…

化学物質過敏症に関する私の発言について

前回のエントリー(■水俣病と化学物質過敏症は異なる)にて、私の「難病や公害に対する基本的な姿勢」に問題があるというsivad氏による指摘が誤っていることを論じた。その指摘には今の時点では反論はないようだが、■続・NATROM氏『化学物質過敏症は臨床環境…

水俣病と化学物質過敏症は異なる

■NATROM氏『化学物質過敏症は臨床環境医のつくった「医原病」だと思う』等について - 赤の女王とお茶をにおいて、sivad氏が私の「難病や公害に対する基本的な姿勢」に問題があると指摘している。あたかも私が水俣病の病因を無視して被害を拡大させた医学者と…

血液型と性格の関係を否定するまずい論法について

血液型と性格には強い*1関連があるという主張がある。血液型性格判断あるいは血液型占いと呼ばれている*2。こうした主張には科学的根拠はない。詳しくは■遺伝学からみた血液型性格判断で論じた。ニセ科学を論じる上では「定番」となっている話題である。さて…

不確かな診断の弊害。ADHDと慢性ライム病を例に。

「医療化」って問題があります。ぶっちゃけ単純に言いますと、医療化とは、必ずしも医療を必要としない状態を病気にしたてあげて治療の対象にしちゃうってことです。医学だけをやってるとあまり医療化の問題になかなか気付かないんですが、幸いなことに私は…

「疑似科学ニュース」の「福島の甲状腺癌の変な^2話」

福島県の小児の甲状腺がんをめぐる主張は入り乱れている。やや乱暴であるが、大雑把にまとめると以下のような流れであると私は理解している。なお、ここでは、有病割合=「単位人口当たりのスクリーニングで発見された有病者数」、罹患率=「単位人口年当た…

「ワクチン接種による胎児死亡率の増加が4000パーセントを超えています!」

「妊娠中にインフルエンザのワクチンを接種した場合、胎児の死亡率は4250%アップ」*1というツイートがあった。プロフィールによれば「専門は動物の統合診療医&外科医」。 妊娠中にインフルエンザのワクチンを接種した場合、胎児の死亡率は4250%アップhealthi…

小児においては「有病割合≒罹患率×平均有病期間(D)」という式を適用するには注意が必要である

福島県の小児を対象として甲状腺がん検診において、10例の細胞診陽性者およびそのうち3例が甲状腺がんと診断された件について、有意に甲状腺がんが多いかどうかが議論になっている。 ■福島県での甲状腺がん検診のこれまでの結果で、甲状腺がんの発生が多発と…

多焦点眼内レンズは混合診療可能だよ

日本経済新聞に混合診療解禁に関する記事が載った。経済界が混合診療の解禁に賛成の立場であるせいか、日本経済新聞にはその立場に沿った記事が載りやすいようだ。記事では、白内障の手術について混合診療が解禁されていないため高額な自己負担を強いられた…

そんで、結局のところ、甲状腺癌の患者数は?

福島県の子供に対する甲状腺検査において、2次検査で細胞診を施行された76名のうち、真に甲状腺癌であるのは何人か。既に3人の診断が確定しているため、3人以上だ、とは言える*1。前回のエントリーでは、陽性反応的中割合と「100%引く偽陽性率」を取り違え…

2013年3月23日追記

本エントリーにおいて、「特異度(= 100% - 偽陽性率 )と陽性反応的中割合を混同した誤り」の例として、津田敏秀さんのインタビューを引用したのは不適切でありましたので、津田敏秀さんおよび読者にお詫びを申し上げます。きんようブログの■福島県での甲…

陽性反応的中割合と「100%引く偽陽性率」を取り違えた甲状腺癌数の推計について

さて、本題。感度や偽陽性率といった用語の意味を確認したいときは、■特異度と偽陽性率と陽性反応的中割合とで引用した表を参考にせよ。 問題:甲状腺癌の2次検査の細胞診検査において7名が悪性と診断された。この検査の感度は90%(偽陰性率10%)、特異度…

特異度と偽陽性率と陽性反応的中割合と

問題:疾患Aの有病割合は10万人に1人である。あなたは疾患Aに関して特にリスクが高いわけでも低いわけでもなく、平均的なリスクを有している。あなたが検診で疾患Aの検査を受けたところ、陽性であるという結果であった。この検査の感度は100%(偽陰性率0%…

「A型肝炎というのは、全く怖くない」のか?

肥田舜太郎(著) の内部被曝 (扶桑社新書) [新書]の■アマゾンレビューに、「事実を曲げて不安を煽るのはいけません」という肥田舜太郎氏に批判的なvseprさんのレビューが載り、さらにそのレビューに対して岩清水宏さんのコメントがついた。現在ではそのコメン…

相変わらずの血液型の話題

最近、血液型と性格の関連についての話題をよく見る。たとえば「ヒトメボ」というサイトからエキサイトニュースに紹介された記事。 ■B型の祖先は遊牧民? 世界で共通する血液型と性格の関係(ヒトメボ) - エキサイトニュース 「血液型と性格の分析は日本が最…

ローレンツと体罰

『体罰は教育です!』『子供には「体罰を受ける権利」があります』と主張する、「体罰の会」というサイトに、コンラート・ローレンツに関する記載があった。 ■**体罰の会** 水が高いところから低いところに流れるように、学級生徒の中に怠惰な者がいて、それ…