NATROMのブログ

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変形3ドア問題の解答

モンティ・ホール問題の答え。まず、問題を再掲。


変形3ドア問題 あなたはテレビショーの参加者で、うまくいくと高価な賞品をゲットできるチャンスを与えられている。3つのドアA、B、Cがあり、そのうちの一つに賞品が用意され、残り2つがハズレである。賞品が当たる確率は、A、B、Cそれぞれが3/7、3/7、1/7である。あなたはその中のドアAを選んだが、司会者のモンティ・ホールはBのドアを開けて、Bがハズレであったことを示し、Cのドアに選びなおすか、それともAのドアのままでいいのか聞く。Aのドアのままのほうがいいのか、それともCのドアに選び直したほうがいいのか。Bがハズレであったことが示されたことによって、ドアAの当たりの確率は3/7のままなのか、それとも変わるのか。[司会者はどのドアに賞品が入っているのか知っている。また、もしAのドアが当たりである場合には、1/2の確率でBかCかのドアを開ける。Aのドアがハズレであれば、BおよびCのハズレのドアのほうを開ける。]

ベイズの定理を使えば解は計算できる。また、可能性をすべて列挙しても同様の解を得られる。ありうる可能性は、実はそれほど多くなく4通りだけである。「Aのドアが当たりで、司会者がBのドアを開ける」「Aが当たりでCを開ける」「Bが当たりでCを開ける」「Cが当たりでBを開ける」。それぞれ、3/14、3/14、6/14、2/14の確率で起こる。司会者がBを開けたということは、「Aが当たりでBを開ける(3/14)」「Cが当たりでBを開ける(2/14)」のどちらかということだ。このときAが当たりである確率は
\frac{\frac{3}{14}}{\frac{3}{14}+\frac{2}{14}}=\frac{3}{5}

ドアAの当たりの確率は3/7のままではなく、司会者がBのドアが外れであるという情報を提供した時点で、3/5に増加する。Cのドアに選び直すべきではない。Naoki_Mさんから、「司会者が必ずハズレのドアを開けてくれるなら、最初にCのドアを選ぶべき」という指摘があった。最初、Cのドアを選ぶと当たりの確率は1/7。司会者がAのドアを開けようとBのドアを開けようと、残りのドアを選べば、当たりの確率は6/7。

実際の計算はともかくとして、たとえば、Aのドアの当たりの確率が49%、Bが49%、Cが2%という場合を考えれば、「Aのドアを最初に選び、司会者がBのドアがハズレであることを示した場合、Aのドアが当たりの確率は49%のままではない。また、Cのドアに選べ直すべきではない」「司会者が必ずハズレのドアを開けてくれるなら、最初にCのドアを選び、司会者が開けなかったほうのドアに変更するべき」ということが直感的にも理解できるのではないか。

オリジナルの問題(変形ではないほう)も、多くの数学者が間違えたという話を、tazumaさんが■モンティ・ホール ジレンマ その3で紹介している。定職どころか定住すらせず、人生を数学のために使い、1000本以上もの論文を発表した「伝説的な」数学者ですら間違えたというエピソードがある。


■放浪の天才数学者エルデシュ


ヴァージョニはエルデシュにモンティ・ホール・ジレンマの話をした。「わたしは、エルデシュに答えは選択を変えることだと話して、次の話題に移るつもりでいた。ところがエルデシュは、驚いたことにこう言ったんだ。『いや、それは不可能だ。それではちがいが出ないはずだ』そのとき、この話題をもちだしたことを後悔したものだ。経験から言って、この答についてはみんな興奮して感情的になるので、面倒なことになってしまうのだ。…」(P256)
エルデシュがトンデモってことはないだろう。耄碌していたという可能性はある。しかし、ルールが必ずしも明示されていないため、数学者たちの答えも異なっていたという可能性もあるだろう。あるいは、ルールが明示されていても、「ルールが変わると答えが変わる」ということに気付いていないため、ルールに注意が向かなかったのかもしれない。モンティ・ホール・ジレンマの誤答とルールの重要性について考察しているページがあった。


■モンティ・ホールの問題をどう考えるか


通常の解説にも、不十分なところがある。それは、モンティがどのようなルール(確率的選択を含む)を採用しているかによって、事後的確率の評価が変化するということへの言及がほとんど見られないことである。ルール自体への言及はときにあるが、そのルールが唯一のものであるか説明されているものが多い。しかし、モンティの取りうるルールは、無限にある。そのルールが違えば、事後(扉Cを開けたあと)に推定さるべき各扉の当たりの確率に一律ではない。

このあと「司会者がどのようなルールに従って行動しているかが重要である。その想定が変われば、事後確率の推定値も異なる」ということを強調している。私もまったくその通りだと思う。なかなか奥が深い問題である。