NATROMのブログ

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中原訳が気に入らない人のリンク集


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先日亡くなったフランシス・クリックは、人間の心や意識と脳の問題に取り組んでいた。本も書いている。読む価値は十分にあるが、問題なのは訳した人。中原英臣+佐川峻訳。ウイルス進化論の人ね。原題は、The Astonishing Hypothesis, The Scientific Search for the Soul。日本語訳は、「DNAに魂はあるか―驚異の仮説」。いったいどこにDNAが関係あるんだよう。お前、DNAって言いたいだけちゃうんかと。まあ、タイトルにDNAと入れれば売り上げにも貢献するだろうけど、ここまで酷い邦訳はないんじゃないかと。

同じように思っている人もたくさんいて、ウイルス進化論のコンテンツを作ったときに、「中原訳気に入らないリンク集」を作ろうとしたのだ。ウイルス進化論と関係ないし、お蔵入りになっていたのを、ここで発表する。


タイトルがタイトルで、訳者が訳者なので、ノーベル賞学者ついにトンデモないことを言い出したかと思って読んだのだが、原題は『驚くべき仮説(The Astonishing Hypothesis)』でその仮説は「(意識は)無数の神経細胞の集まりと、それに関連する分子の働き以上の何ものでもない」という(私にとっては)至極当然なもので、ぜんぜん驚くようなことはありませんでした。
http://www.mars.dti.ne.jp/~tanabe/histories/hist0008.html


 いきなりだが、文句を一つ。「タイトルが詐欺だ」
 著者のクリック博士は、DNAの二重螺旋構造を発見した一人であり、これでノーベル賞も取っている。
 当然DNA関係の方が、学者としてのネームヴァリューが高い。んが、この本の内容は、DNAとは全く関係ない。
 この本では、ニューロンネットワークと意識の問題を、視覚というテーマに沿って論じているのであって、
DNAに魂があるのかを論じているのではない。
 詐欺と言われてもしょうがないぞ!
http://www2.plala.or.jp/PALADOX/diary/02.html


原書は"Astonishing Hypothesis "。日本語はサブタイトルになってしまっている。しかも、内容的にはさほど「DNA」の話ではない(生物学的決定論の話ではあるが)。こういう半分詐欺みたいな商法はちょっといただけない。
http://web.archive.org/web/20030212113816/http://www.mars.dti.ne.jp/~skasuga/column/book/carrel_log01.html


余談だが、DNAに魂はあるか(1995 フランシス・クリック著) は題がひどい、訳者(中原英臣)の前書きがひどい、 DNAなんかぜんぜん関係無いのに。視覚のことについての重要な問題がよく押さえられたよい本だと思うし、訳も下訳の人がよくがんばったからか、そんなにひどくない。脳と意識の問題の本が多く出ている今こそ批判的に読まれるべきだと思うのだが。
http://www.moriyama.com/questionnaire/99bestsci.html


「視覚の認知科学・脳科学。日本題が不自然」
http://www004.upp.so-net.ne.jp/kaysaka/bbb4-no.htm