NATROMのブログ

ニセ医学への注意喚起を中心に内科医が医療情報を発信します。

種分化の研究

■進化論解明 カギは熱帯魚 速い分化 1万2000年で700種 シクリッド(東京新聞)

Googleニュースが新しくできたってことで、進化論で検索してみたら、上記記事が引っかかってきた。大島弘義(東京新聞・中日新聞科学部記者)による記事。


 アフリカ・ビクトリア湖の美しい熱帯魚、シクリッドはわずか一万二千年の間に、一種から七百もの種に分化したらしい。東京工業大大学院生命理工学研究科の岡田典弘教授は、あまりにも速い種分化の謎を、遺伝子の変異から解明する研究を続けている。ダーウィンの進化論を分子レベルで示すことができるかもしれない。今夏から、生態や形態の専門家を含めたチームを結成し、本格調査をスタートさせた。
 シクリッドはカワスズメ科の魚類。色や形の変化に富み、観賞魚として人気がある。大きさは数センチから八十センチ、餌も虫や小魚、こけと多様だ。東アフリカのビクトリア湖、タンガニーカ湖、マラウイ湖には、全世界のシクリッドの七割の千数百種が生息している。
ダーウィンの箱庭 ヴィクトリア湖は読んだことがある。急速な種分化のモデル生物として、シクリッドが注目されていることは知っていたが、日本人も研究に参加していたのは初耳だった。

 実は、色や形が全然違うのに、ビクトリア湖のシクリッドのゲノム(全遺伝情報)は基本的に同じ構造で、種による違いはごく小さいという。
 「だから、異なった種のゲノムを比べて、ある変異が種の中で固定していれば、その変異が種の形成にかかわったのだといえる。こうした原因遺伝子を多く見つけて、種を形成する分子機構を解明したい」と狙いを語る。
岡田先生は、クジラとカバが近縁であることSINE法を用いて示した人でした。(岡田先生のサイトは、キーワードの説明もあり、めちゃめちゃ充実してます。)もともと、SINE法を用いた系統関係の研究をしていたのが、SINE法が使用できないほど新しい種(シクリッド種内でSINE挿入多型があるそうだ)に注目した種分化の研究も行うようになったとのこと。続報に期待したい。地味ではあるがしっかりとした記事を書いた大島弘義記者も評価したい。