NATROMのブログ

ニセ医学への注意喚起を中心に内科医が医療情報を発信します。

2007-01-01から1年間の記事一覧

日経メディカルでトンデモ医療裁判の特集

誰かが書くかなと思っていたけどあまり話題にあがらないので自分で書く。今月号(2007年10月)の日経メディカルの特集は、「医師を襲うトンデモ医療裁判」であった。 ■日経メディカル 2007年10月号(魚拓) 医師を襲うトンデモ医療裁判 医療の限界や不確実性…

母乳で伝わる遺伝子

無知と偏見は連鎖する。病気の原因がわかっていなかったのがハンセン病患者に対する偏見の一因である。ハンセン病は感染症であり、感染力は非常に弱いことが周知されれば、「ハンセン病は患者が過去に犯した悪行に対する報いだ」などという偏見は消えていく…

群衆の数を推定する

「教科書検定意見撤回を求める県民大会」の参加者数が議論になっている。朝日新聞では「11万人」*1。産経新聞は「4万人強」*2。よく聞く話だよな。この手の話を書いた本がたしか本棚にあったはず。 ■統計はこうしてウソをつく ジョエル・ベスト(著), 林 大 (…

医療業界が自由競争ではうまくいかない理由

「医療業界にはいろいろ規制があって非効率的だ。市場原理にまかせて競争にさらせば、より良い医療機関が残り、医療の質は向上する」 という意見を散見する。「混合診療全面解禁を!」「医師会が反対するのは既得権利を守るためだ」という主張とセットになっ…

嫌煙系のトンデモ

煙草の害に関しての意見には両極端があるようで、能動喫煙すら害は証明されていないと主張する一方の端と、喫煙の害を過大に主張するもう一方の端とがある。「たばこの害は医学的に証明されたといっても、実際のところ、証明なんて言うのもおこがましい状態…

確率ビジネス

こういうギャンブルがあったら、みんな参加する? ある夫婦の次に生まれる子供の性別を当てる。参加料は5000円。オッズは3倍。つまり、性別を当てたら15000円もらえるので合計はプラス10000円。外したらマイナス5000円。(死産や双生児はノーカウント)。私…

喫煙者の壁

医局に置いてあった文藝春秋をふと読んでみると、「変な国・日本の禁煙原理主義」という記事があった。「官が押しつける健康増進。この国はおかしくなっている」という副題がついている。養老孟司と、山崎正和という劇作家の対談形式。確かに、最近の禁煙運…

絵の力

陶芸家兼イラストレーターの人がやっている言戯(ことざれ)というブログがある。結婚や出産、育児などの日々の生活を4コマかイラストで描いている。普段は日常生活がネタなのだが、今回は奈良県の「たらい回し」死産事件について書いている。 ■たらい回し…

ファインマンさんの手紙

■ファインマンの手紙 リチャード・ファインマン(著), ミッシェル・ファインマン(編集), 渡会圭子(訳)高校生のころ、私はご冗談でしょう、ファインマンさんから多大な影響を受けた。物理学者。ノーベル賞受賞者。それ以上に、科学を愛することを教える教師で…

いつ起こってもおかしくない事件

マンパワーの少ない病院で救急医療を行うのは地雷源を歩くのに似ている。私も田舎の中核病院で当直をしていたが、事実上、救急を含め夜間外来を診ていた。風邪から心肺停止まで幅広い。下記のようなことがいつ起こってもおかしくなかった。 ■厚木市立病院:…

意外に役に立った翻訳サイト

以前の勤務先での話。当直中に、若い中国人女性が腹痛で救急外来に飛び込んできた。まったく日本語も英語も通じない。付き添いの男性が片言の日本語を話せるのみ。どうやらお金がもったいないので我慢していたが夜間に痛みが強くなったらしい。問診しようと…

勤務医とタイムカード

id:DrPoohさんのところで、病院の残業代請求訴訟に関連して、勤務医のタイムカードの話題が出た。 ■[医療]残業代請求訴訟 医師にタイムカードが採用されている病院は聞いたことがなく,大抵は残業は自己申告だと思うのですが,残業簿と実態が異なるというの…

ナノ食品を売る右派政治家

維新政党・新風より公認され比例区に出馬した、せと弘幸氏が、なにやら怪しげな商売をはじめたらしい。 ■ナノテク食品と販売開始のお伝え*1 これは私の友人が6年ほど前から取り組み、技術的な経験を積み重ねて、ようやく完成にこの度こぎつけたものです。今…

訂正?改ざん?「たらい回し」が「救急車事故」に

奈良県大淀病院において、分娩中に意識障害を起こした妊婦を19病院が受け入れ不能であったことを、毎日新聞が「たらい回し」と表現して医療者に批判されたことは記憶に新しい。ちなみに、毎日新聞は、「開かれた新聞」委員会・座談会で、 「たらい回し」は事…

ビッグバン宇宙論

■ビッグバン宇宙論 (上) ■ビッグバン宇宙論 (下) サイモン・シン著、青木薫訳の組み合わせ。■フェルマーの最終定理、■暗号解読のいずれも面白く、読む価値があった。本書も2006年6月に日本語版が出てすぐに買ったが、積読になっていたのをいまごろ読了した。…

これこそ文化!柳生すばる先生の自画像

紫藤ムサシ先生による素晴らしい絵は失われていましたが、柳生すばる先生の絵はまだプロフィールに使われていました。マンガ作成ソフトがプロの使用に耐えるかどうか判断でき、「マンガの無限の可能性については一家言ある」、すばる先生の描くイラストはど…

柳生すばる先生コミケへ行く

「理系保守」紫藤ムサシ先生の正統なる後継者、我らが柳生すばる先生が夏コミへ行ったそうです。すばる先生は一見したところ、維新政党・新風を応援する「新風連」に加盟してたりして右寄りの思想を持っていると思われがちです。しかし実のところは右傾化し…

メタボ侍の討死

三重県伊勢市において、減量に挑戦する企画に参加した市幹部が運動中に死亡したというニュースが最近あった。報道では死因は虚血性心不全とされている。 ■「メタボ侍」運動中に急死 伊勢の減量挑戦企画に参加(Sankei WEB) この企画は生活習慣病予防をPR…

エホバの証人の二枚舌

正しい情報を提供された成人が輸血を拒否するのはかまわないと私は考える。たとえ輸血拒否のために命が失われようともだ。しかしながらエホバの証人の輸血拒否には現状では大きな問題点がある。信者に対して、医学的に正しい情報が提供されていないからだ。B…

インチキ糖尿病薬にだまされるのは患者を脅す医者が悪い

「頂門の一針」というメールマガジンを主催する、渡部亮次郎(元NHK記者)による記事。カイコの粉末に血糖値を抑える薬効があると宣伝して健康食品を販売した業者が薬事法違反で書類送検された記事を引用した後、 ◆患者を脅す医者が悪い(NET MEDIA OSAKA) …

獅子身中の虫

維新政党・新風という政党があります。政治的には右寄りというか、日本の政党の中では極右と言ってよいでしょう。この維新政党・新風を応援するNET連合が「新風連」です。「新風連」は大勢のブロガーによって支えられているそうなのですが、そのうちの1…

医師を騙る

医師免許なんて持っていなくても、働く場所を選べば医師のふりをするのは難しくない。ええ、もうそりゃ、ブログで医師のふりをするのに比べたらずっと楽である。あまり大きくない病院の宿直のバイトなんかが適当だ。行うのは対症療法のみ。発熱には解熱薬、…

毎日新聞クオリティ

新聞記者はさまざまな分野の記事を書かないといけないので、専門家からみたら正確さに欠ける記事になってしまうのはある程度は仕方がないと言える。しかしながら、ある特定の新聞社の記事だけが、ある特定の方向へのみ不正確になっているとしたら、それは「…

病院で受診する?

業界用語はその業界にどっぷりと浸かっているとあまりにも当たり前になりすぎて、それが業界用語であることを自覚できなくことがある。医療業界では、「頻回(ひんかい)」というのが、自覚されない業界用語の代表格であろう。「何度も」「たびたび」という…

良ジオンちゃん

地震やら台風やらありましたが、無事に戻ってこれました。はてなにコメントがついたらメールを受け取る設定にしているのですが、未読230件とかになっています。前回のエントリーのコメント欄がパンクしたら、このエントリーのコメント欄で続行してください。…

たこポイ捨て禁止

なんだか前回のエントリーのコメント欄がすごいことになっています。明日からしばらく所用でネットを見れるかどうかわかりません。不適切な発言等あっても即座に対応できませんので、みなさま、ほどほどでよろしくお願いいたします。これだけでは何ですから…

信仰と狂気〜吉村医院での幸せなお産

「幸せなお産」というコラムを見つけた。「有機野菜・無添加の素材をつかったオーガニック料理」を配達するお店のサイトのコンテンツ*1で、「人生マクロビオティック」「オーガニック生活のすすめ」といったコラムの中の一つである。たまたまうまくいった例…

名前に歴史あり

トゲアリトゲナシトゲトゲという虫がいるらしい*1。トゲがあるのかないのか分からない。■トゲアリトゲナシトゲトゲ(棘有棘無棘々)もともとトゲハムシというトゲのある虫のグループにトゲのない種類がおり、トゲナシトゲトゲと命名された。しかし、トゲナシ…

HBe抗体陽性例の感染力

前回のエントリーに関連して、今日はB型肝炎の感染力についての話をする。B型肝炎ウイルスマーカーはたくさんあってややこしい。私が学生のころに覚えた方法は、HBs抗原/抗体は「存在(Sonzai)」に関するマーカー、HBe抗原/抗体は「影響力(Eikyo)」に関する…

地雷原を走る勇者

癒着胎盤からの出血のため帝王切開中に妊婦が死亡した福島県立大野病院事件、あるいは、転送先の国立循環器病センターにて脳出血により妊婦が死亡した奈良県大淀病院事件について、医師のブログの間では概ね産婦人科医について好意的である。どちらの事件に…