NATROMのブログ

ニセ医学への注意喚起を中心に内科医が医療情報を発信します。

意外に役に立った翻訳サイト

以前の勤務先での話。当直中に、若い中国人女性が腹痛で救急外来に飛び込んできた。まったく日本語も英語も通じない。付き添いの男性が片言の日本語を話せるのみ。どうやらお金がもったいないので我慢していたが夜間に痛みが強くなったらしい。問診しようとするも、こちらの話はほとんど通じない。最悪の場合、外科や婦人科のコンサルトを要するかもしれないのに。困った。

中国人だから漢字は読めるだろうと、「下痢?」「最終月経?」などと書くけど、イマイチ通じない。「いつですか?」ぐらいの簡単な中国語ぐらいは知っておくべきであった。それに、恐ろしいことに、漢字を書こうとしてもだいぶ忘れている!手近に漢和辞書なんてなかったので、パソコンで会話しようとしてふと思いつく。オンラインの翻訳サイトがあるじゃないか。

そこで、日本語→中国語の翻訳サイトで質問文を中国語に翻訳したものを患者に見せた。患者から付き添い男性に中国語で答えを伝え、付き添い男性が片言の日本語で私に答える。これでうまくいった。翻訳サイトには中国語→日本語もあるが、中国語の入力ができないので使えない。しかし、片言でも日本語で答えてくれる人がいれば大丈夫だった。

いろいろ診察して、結局、婦人科的疾患は否定的。診断は急性腸炎。料金がどうなったかは事務方に丸投げしたので知らない。腹部エコーはサービスしておいた(厳密には横領になるのか?)。悪かったらまた来いと言っておいたが、来なかったのは良くなったからか、それともお金がなかったのか。とりあえずは、夜間に最低限しなければならないことは果たせたようだ。

機械翻訳はいまだ問題があるとは言え、はじめから翻訳されることを前提にした簡単な文章ならば十分通じる。相手方が片言でもいいから日本語を話せるか、あるいは機械翻訳の入力が可能であれば、それなりの意思疎通が可能である。少なくとも中国人相手の漢字での筆談よりは格段にスムーズ。機械翻訳が対応していれば、ポルトガル語でもロシア語でも大丈夫だったろう。これは日本人が海外に行くときも有用なんじゃなかろうか。