NATROMのブログ

ニセ医学への注意喚起を中心に内科医が医療情報を発信します。

2010-01-01から1年間の記事一覧

助かる確率は3万人に1人?「いずみの会」の体験談

上部消化管内視鏡の検査の日は、食事をとってはいけない。その旨を患者さんに説明するのだが、行き違いがあると、以下のようなよくある笑い話になる。 医師「今日は、朝ご飯は食べてないですよね?」 患者「はい。『ご飯は食べないで』と言われたので、パン…

食の安全と環境−「気分のエコ」にはだまされない

■食の安全と環境−「気分のエコ」にはだまされない(シリーズ 地球と人間の環境を考える11) 松永和紀の新刊。ちなみに、和紀は、「かずのり」ではなく、「わき」と読む。本書のサブタイトルは『「気分のエコ」にはだまされない』。「気分のエコ」については、…

口蹄疫ウイルスが清浄国にも遍在しているとしたら

■木村盛世医師と口蹄疫で触れたが、ツイッターやブログでの木村盛世氏の口蹄疫関連の発言について議論が起こっている。殺処分で封じ込めを狙う国の方針を批判する木村盛世氏の認識が、どこら辺に由来しているのかわかりつつある。木村盛世氏は、そもそも、清…

マイコプラズマ・ファーメンタンス・インコグニタスについての噂

■エイズに似た怪病が中国で急速に拡散しているという話はたぶんガセのコメント欄にて、「エイズに似た怪病」の原因が“マイコプラズマ・ファーメンタンス・インコグニタス株”なのではないかという噂について情報提供をしていただいた。調べてみたところ、阿修…

脚氣ハ果タシテヴィタミンB缺乏症ナルカ

脚気は心不全および末梢神経障害を来たす疾患で、明治から昭和にかけての日本では、年間に2万人以上が死亡する年もあった。現在は、脚気の原因はビタミンB1欠乏であることがわかっているが、当時の日本では、脚気の原因について激しい論争があった。ビタミン…

木村盛世医師と口蹄疫

厚生労働医系技官で医師でもある木村盛世氏の著作(厚労省と新型インフルエンザ)は読んだことがある。木村盛世氏の主張に賛同はできない部分もあるし、やや危ういところもあるように思われたけれども、それでも読む価値のある本であった。また、木村盛世氏…

エイズに似た怪病が中国で急速に拡散しているという話はたぶんガセ

未知のウイルスによるエイズに似た症状の怪病が中国で流行しているという話について、twitterで論評をお願いされた。「注意喚起」とか「ろくに報道されまい」とか「拡散 日本人を守るために」とかいうフレーズとともに、わりと多くの人がリツイートしている…

アスベストの有害性は疑わなくていいの?

喫煙の有害性はもはや確立された事実と言っていいのだが、それでも喫煙の有害性に対して懐疑的な人がいる*1。喫煙の有害性は、主に疫学的手法で証明された。なので、タバコの害を疑う人は疫学的手法そのものに対して懐疑的なのかと思いきや、必ずしもそうで…

国際疾病分類が細かすぎる件

各国で死亡や疾病の統計を比較しようとしたとき、それぞれの国が勝手に死亡を分類していたら困るよね。そこで、みんなで話し合って、分類の方式を統一した。医学が進めば分類の仕方も変えざるを得ないので、何度も改訂され、現在のところは、ICD-10(国際疾…

HIVキャリアを理由に看護師を解雇することは正当か?

あなたは、ちょっぴりロリータ風味の2次元エロ同人誌をささやかな趣味として楽しんでいる成人男性だとしましょう。現実に被害者が存在する児童ポルノには手を出さないし、興味もありません。当たり前のことですが、現実の未成年の女の子に手を出すつもりもあ…

嫌煙者詐称に対して懲罰審査を実施する真の嫌煙者

過激な嫌煙運動は、阿呆な喫煙擁護論と同じくらい興味深い。「禁煙ファシズムはけしからん」と主張する愛煙家の人々の気持ちがよくわかる事例を紹介したい。日本市民の化学ネットワーク(JPCCN)という「化学物質のリスクコミュニケーションや身近な暮らしの…

抗癌漢方薬カイジ

抗癌作用を持つとされるカイジ(槐耳)という漢方薬があるそうだ。中国では評価が高く、日本でも「カイジ顆粒研究会」ができたとのこと。 ■日本統合医療学会主催『カイジ顆粒研究会』(ガンの辞典 編集長の『取材日記』) 続いて、星野恵津夫先生は「カイジ…

生活習慣病が増えているにも関わらず寿命が延びているのはなぜか?

武田邦彦氏が、生活習慣病が増えているにも関わらず、日本人の寿命が延びていることについての疑問を書いておられた。 ■武田邦彦 (中部大学): 生活習慣病になると長生きする? 日本では、年配の人の多くが生活習慣病で60%とも70%とも言われる。 そし…

標準医療は画一的で、代替医療は個別的という誤解

「普通の医療機関で提供されている標準医療(「西洋医学」による医療)は、個人差を考慮しない、いわば既製服のような医療であるのに対し、代替医療(統合医療/補完医療)は、個々に応じたオーダーメイドの医療である」という誤解をしばしば散見する。たとえ…

在宅酸素療法中の喫煙と火災

慢性呼吸不全の治療の一つが在宅酸素療法である。家庭で酸素をつくるための酸素濃縮器を作っている会社のプレゼンで、火災の延焼実験の動画を見たのだが、これがインパクトがあった。ネット上にないか探してみたのだが、以下のニュース映像の30秒目ほどにあ…

血液型の話をすることくらいはいいのか?

ある特定の対立遺伝子Aを持つ人は、将来、癌に罹る可能性が高いとしよう。ある人が遺伝子Aを持っているという理由だけで、就職を断られることがあってもよいだろうか?新入社員を採用する際に、遺伝子Aを持っているかどうかを調べることを義務付けている会社…

医療の値段

医師はいろんな職業の人と接する機会があるけれども、どうしても「医師と患者」という関係に縛られてしまう。ネットだと、患者さんの本音が聞けるので助かる。たとえば、「入院したときに、お金を用意するために入院費用を聞いたところ、『6万円くらいですか…

効果が否定されたときのホメオパスの言い訳を予想してみよう

民主党政権は代替医療の利用に前向きであり、統合医療の研究について十億円以上の予算を計上して取り組んでいきたいのだそうだ。長妻大臣の発言を引用する。 ■第174回国会 予算委員会 第3号 平成二十二年一月二十八日(木曜日) ○国務大臣(長妻昭君) …

標準医療は治療中心で、代替医療は予防中心という誤解

標準医療は治療が中心であり、予防は代替医療のほうが得意であるとする主張がある。代替医療に親和的であるが、さりとて標準医療を否定するわけでもない人が、よくこういった主張をする。例を挙げよう。 平成22年01月28日予算委員会より(強調は引用者による…

毎日新聞の石田宗久記者が良質な記事を書いている件

■問題点の概観:Chromeplated Rat経由で、毎日新聞まいまいクラブの「代替医療は玉石混交」という記事を知った。代替医療は玉石混交であり、「事実上、野放し」になっている点を批判的に紹介している。2006年、つまり、4年前の記事であるが、民主党政権が代…

癌は真菌であり、重炭酸ナトリウムで治療可能だったんだよ!

イタリアの元医師シモンチーニ氏が、癌の病因と治療に関して、きわめてユニークな説を主張している。■デーヴィッド・アイク公式日本語情報ブログ*1より引用。 聡明で勇敢なイタリアの医師トゥリオ・シモンチーニ(Tullio Simoncini)は、そのひとつの例であ…

ホメオパシーに予算を割くべきか

「代替医療のトリック」で語られているテーマは幅広く、一つや二つのエントリーでは言い尽せない。このエントリーでは、「代替医療にどれくらい研究資金をつぎ込むべきか。どの代替医療が研究に値するのか」という問題を考えてみたい。「代替医療のトリック…

柚子にょろ

■シートベルトは死亡を防がない? ニセ科学を見抜く練習問題シリーズのコメント欄がパンクしたようです。ご希望の方は、このエントリーのコメント欄で続行してください。それはそれとして、伝統的に、コメント欄がパンクしたときには、ネタ画像を載せること…

吉村医院の哲学

以前、■信仰と狂気〜吉村医院での幸せなお産で言及した吉村医院が取り上げられると聞いて、2010年2月7日の「エチカの鏡」というテレビ番組を視聴した。吉村医院は自然分娩を行う産科医院で、番組内では好意的に取り上げられていた。自然分娩という選択肢があ…

「代替医療のトリック」

■代替医療のトリック(サイモン・シン著, エツァート・エルンスト著, 青木薫訳)。原題はTrick or Treatment?。著者の一人のサイモン・シンは、サイエンスライターとしてトップクラスであり、暗号解読やフェルマーの最終定理といった著作がある。「代替医療…

病腎移植のドナーが提訴

病腎移植に関して、腎癌の可能性が強いとして腎摘出されたが、術後に癌ではなく良性であったと判明した症例について、ドナーが市を提訴したとする報道があった。なお、ドナーの手術を行った万波廉介医師は、レシピエントの手術を行った万波誠医師の弟である…

我々は迷信行動を行うハトになっていないか?

■体験談は証拠にならない〜浄霊による体験〜では、「浄霊」の後、熱が下がったという体験談を紹介した。「浄霊」に病気を治すという効果がないことに、おそらくは読者の大半は同意していただけると思う。しかし、「浄霊」には効果があると誤認してしまう人も…

新ジャンル?アニマルコミュニケーション

ペットに対するホメオパシーが流行っているようだ。■波動測定器の有効性を検証した論文を読んでみたでは、「動物の身体,感情,精神の状態を推定する」機械をホメオパスが利用していることを紹介した。代替医療ビジネスにおいて、人間を相手にするよりもペッ…

ウイルスに寄生するウイルス〜D型肝炎ウイルス〜

一説によると、すべての生物種の5分の4は寄生者であるらしい*1。たとえばヒトとかネコとかゾウとか目につく大きな動物1種に対して、寄生する種は数多くいるだろう。複数の種に寄生する寄生種もいるだろうから、その辺をならして大雑把に宿主1種あたり寄…

体験談は証拠にならない〜浄霊による体験〜

子に必要な医療を受けさせない「医療ネグレクト」のニュース。亡くなった赤ちゃんに哀悼の意を表します。 ■時事ドットコム:7カ月長男死なせる=病院行かずに「手かざし」−両親を殺人容疑で逮捕・福岡県警 生後7カ月の長男が細菌に感染して衰弱しているの…