NATROMのブログ

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嫌煙者詐称に対して懲罰審査を実施する真の嫌煙者

過激な嫌煙運動は、阿呆な喫煙擁護論と同じくらい興味深い。「禁煙ファシズムはけしからん」と主張する愛煙家の人々の気持ちがよくわかる事例を紹介したい。日本市民の化学ネットワーク(JPCCN)という「化学物質のリスクコミュニケーションや身近な暮らしの化学情報文化の普及を通じて、社会に貢献する、非営利・民間発の公益セクター」*1がある。このJPCCN全国代表事務局であるjpccnさんとmuimiさんとのTwitterでのやりとりをまとめた。


■Togetter - まとめ 嫌煙者詐称に対して懲罰審査を実施するJPCCN


見どころを紹介・引用しよう。まずは、「合成洗剤は閉鎖性海域の生物多様性を貧弱化させる、家庭で使う洗浄剤のすべてを合成洗剤から石けんに替えよう」という主旨のjpccnさんのツイートに対して、やや懐疑的なツイートをmuimiさんがつけたところから議論ははじまる。最初のうちは有意義な議論のように見えたが、『リスクを「正しく」認識できるようなデータ』を教えてほしい、というmuimiさんからの要望があったころから雲行きが怪しくなる。そうしたデータは論文にはなっていないそうなのだ。その時点でどうなのよと私などは思うのだが、jpccnさんによれば私は「論文依存症」なのであろう。それはともかく、国立国会図書館関西館で確認するかJPCCNに入会せよとjpccnさんは返答した。「価値があるかわからないもののために往復2万円もかけなければいけないのか理解に苦しみます」というmuimiさんのツイートに対し、





情報を探したいならJPCCNに入会しませんか?


「身近な暮らしの化学情報文化の普及」を目指しているわりにはケチくさい。百歩譲って、専門家しか読まないから論文にしないということはありえても、まさしく今知りたいと思っている人に対して情報を出し惜しみして、何が化学情報文化の普及だと私は思う。というか、ウェブサイトがあるんだから、『リスクを「正しく」認識できるようなデータ』があるのなら誰もが簡単にアクセスできるようにしておけばいいではないか。正しいデータが広まることよりも「年会費3000円」のほうが大事なのだろうか。ここまででも、何だかなあと感じるのだが、ここからがすごい。入会を断るmuimiさんのツイート。





喫煙者というだけで排斥する団体には所属するつもりはありません。


「JPCCNの入会資格は、タバコ不使用者のみ(煙の有無不問)に与えています」とのことで、会の主旨を考慮するに、これはこれで一つの見識だと思う。一方で、「喫煙者だというだけで排斥する団体に所属するつもりはない」というのも自由であろう。「そうですか、残念ですね」とぐらい言っておけばいいものの、ここからの暴走が見どころ。





喫煙者禁制の団体に所属したくないというのは、真の嫌煙家であればあり得ないことです。


嫌煙家にも真の嫌煙家とそうでない嫌煙家があるようだ。JPCCNに所属したいと願う人のみが真の嫌煙家。いやいや、喫煙者禁制の団体は別にJPCCNに限らないわけで、たとえば、「日本嫌煙者の会」など喫煙者禁制の団体を作ったら真の嫌煙家であるjpccnさんには所属していただけるのだろう。入会費100万円です。





私は全面禁煙の店にも入りたいし、分煙の店にも入りたいのです。


タバコが嫌いな人でも、これくらいは普通だよね。ところが、





喫煙者とコミュニケーションをとりたいというのは、あなたからすすんで喫煙を擁護する行為


「分煙の店にも入りたい」というだけで、嫌煙家でないどころか、「喫煙者とコミュニケーションをとりたいというのは喫煙を擁護する行為」なのだそうだ。私も別に嫌煙家じゃなくていいや。





@muimi氏の嫌煙者詐称フォロー問題に関して、JPCCNでは懲罰審査を実施しています。


懲罰審査て。確かに、こういうものを見れば、「ファシズムだ」と言いたい気持ちはよくわかる。





人間は、タバコを吸って、やめられなくなると、タバコ虫という虫になります。


愛煙家の皆さんは、「煙草が有害だとする疫学調査は信頼できない」とか阿呆なことを主張して潜在的な味方を呆れさせるのは得策ではないですよ。「リスクを承知の上での喫煙の権利」を守るために、こうした喫煙者を虫扱いする馬鹿のみを批判すればいいと思います。

実はjpccnさんには電磁波過敏症に対して似たようなやり取り(「前科」と言っていい)があった(■Togetter - まとめ 携帯電話は電磁波過敏症の原因なのか?)。「電磁波弱者というものの科学的根拠がありますか?」というツイートに対して、とくに科学的根拠を出すわけでもなく、「ひどすぎる。電磁波過敏症の方に失礼ではないですか?」「電磁波過敏症の方に謝罪を求めます。できないのであれば、しかるべき処分を検討します」との返答。とりあえず、jpccnさんが「化学物質のリスクコミュニケーションや身近な暮らしの化学情報文化の普及」をまったく目指していないのはわかった。


*1:URL:http://www.jpccn.org/