幹細胞は、さまざまな細胞に分化する能力を持つ。骨髄移植や臍帯血移植などの造血幹細胞移植はすでに標準医療となっているが、それ以外の再生医療への応用については、まだ研究段階である。しかし、ロシアでは、「しわ取りから、パーキンソン病、インポテンツに至るまで、あらゆる治療をする」と宣伝されているそうだ。
■違法幹細胞治療、ロシアで野放し | WIRED VISION
スミルノフ所長は、いくつかの国立研究所で骨髄や脂肪から採取した成人の幹細胞を使った実験的治療が時々試みられているのは知っているという。しかしその他のクリニックの多くは、宣伝や注射の中身に関する規制がほとんどない状態で治療を行なっているとスミルノフ所長は指摘する。
科学者たちによると、幹細胞を培養して分離するには熟練した技術と高価な機器が必要だが、各クリニックが必ずしもそれらを備えているとはいえないという。そのため、幹細胞だとされるものが、胎児の組織からの抽出物だったり、皮膚細胞だったりする可能性があるという。動物の幹細胞を使っているという噂のあるクリニックもある。
「私が患者なら、そのような治療は受けたくない……潜在的な危険性は非常に高い」と、ボルティモアにあるジョンズ・ホプキンズ大学細胞工学研究所の心臓血管部門責任者、ジョシュア・ヘア博士は語る。
ロシアの連邦医療調査局の副責任者、アンドレイ・ユリイエフ氏によると、法律では幹細胞の抽出と保存が許可されているだけで、治療での使用は許可されていないという。同局では、幹細胞治療を行なっていると謳う約20の美容クリニックを調査中だとユリイエフ氏は述べた。
しかしこのようなあいまいに定義された規則のもとで、数十のクリニックが治療行為を続けている。
さすがロシアと思うなかれ。日本でも、幹細胞療法を行っているクリニックがあるのだ。
2009年から「幹細胞療法」という治療法を当クリニックでは開始しました。
幹細胞は赤ちゃんとへその緒をつなぐ臍帯からとり出されたもので、この幹細胞なるものの中に、本当に不思議な程、すごい細胞が含まれていることが判っています。
神経を作る、器官を作る内細胞を作る、筋肉を作る、骨を作る、といった細胞と、白血球、血小板、赤血球を作る細胞さらにホゾティーという、ガンを殺す物質(大腸ガンなら91%も)も存在します。
こういった、細胞や組織を作る大元をその人に合う、適合の白血球の型を見つけ出し、それを点滴するのがこの治療です。
これをやることにより、アメリカや韓国、また日本でも、難病(筋萎縮性側索硬化症、再生不良性貧血、パーキンソン、多発性硬化症、膠原病、クローン病、潰瘍性大腸炎、小脳変細胞、アルツハイマー、メニエー、白血病、アンチエイジング 他)や、生活習慣病そしてガン全般に効果があることが言われています。
普通に考えれば、他人の幹細胞を点滴したって、自前の免疫細胞にやられてしまって治療効果なんて発揮できないはずだ。まあ、やられてしまうのなら、まだいい。他人の幹細胞がレシピエントの体内で増殖し始めたら恐ろしいぞ。まさしく、「私が患者なら、そのような治療は受けたくない」けどな!鶴見クリニックの言い分では、「全く副作用がない」そうだ。
一応当クリニックでは開始したばかりで効果の程は定かではありませんし、また、「幹細胞」そのものが本当に見つかっているか否かとなるとは不明ではあると思います。
しかし、手の打ちようもない疾患をもった患者さんが、これで良くなり、また、全く副作用がないことを考えると、これをやっても何の損もないというところから始めました。ただ若返りだけは確かに素晴らしいみたいです。
そんなに素晴らしいのなら、症例報告でもすればいいのにね。それにしても、始める前から「全く副作用がない」ことがわかっていたようだけど、どうしてかな?幹細胞がただの1個も含まなくなるまで希釈したとか言うならともかく。笑うポイントはまだある。「幹細胞」そのものが本当に見つかっているか否かとなるとは不明ではあると思いますというのは不自然じゃね?幹細胞療法をやっているくせに幹細胞が見つかっているかどうか不明ってどういうことよ?その秘密は千島学説にある。鶴見クリニックの院長の鶴見隆史氏は、2008年4月27日に行われた「千島学説セミナー in 東京」で、巻頭講演を行ったのだ*1。千島学説では、体細胞は分裂・増殖する幹細胞に由来するのではなく、赤血球が変化してできるとしている。幹細胞なんて存在は、千島学説の立場からは認められないはずのなのだ。
おそらく、こういうことであろう。顧客として千島学説支持者は捨てがたい。彼らは、科学的にありえない治療法だって疑わずに受けてくれるだろう。一方で、幹細胞療法も捨てがたい。先端医療のように見えるため、医学に詳しくない人たちは効果があるかもしれないと期待するだろう。そこで、幹細胞療法を取り入れつつ、千島学説支持者に配慮して「幹細胞が見つかっているかは不明」と言い訳を書いたのではないか。そう書いておけば、千島学説支持者は多少の矛盾なんか気にしないと予測したのだろう。そして、その予測はおそらく正しい。というか、千島学説を支持しつつ、喜んで幹細胞療法を受けそうである。
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*1:URL:http://www.creative.co.jp/top/main3493.html