NATROMのブログ

ニセ医学への注意喚起を中心に内科医が医療情報を発信します。

2025-01-01から1年間の記事一覧

「権威が勝手な都合で有望な科学を排除する事例」って何だろう?

丸山ワクチンが承認されない理由 医療ジャーナリストを名乗っている木原洋美氏は、丸山ワクチンを擁護するプレジデントオンラインの記事で、「筆者自身も20年以上の取材経験の中で、権威が勝手な都合で有望な科学を排除する事例を何度も目の当たりにした」と…

体験談は丸山ワクチンに効果があるという根拠にはならない

2025年にもなって丸山ワクチンを称賛する記事が出るとは 丸山ワクチンとは、結核菌を熱水処理して作られた、がんに効果があるとされる注射薬で、承認はされていないものの、有償治験薬という特例的な扱いで使用が可能である。その丸山ワクチンに肯定的な記事…

剖検データでは過剰診断を否定できない

要約: 成人において、剖検では生前に診断されなかった甲状腺がんがたくさん見つかる。小さいがんがあまりにもたくさん見つかるので、現在の治療介入基準の10mmより大きいがんは相対的に少なく見えるが、発生率(罹患率)と比べると多い。 小児の甲状腺がん…

「2巡目以降のがんは過剰診断では説明できない」は誤り

要約: 2巡目以降に相当数の甲状腺がんが発見されていることは、被ばくの影響がなく過剰診断が起きているという主張と矛盾しない。被ばくの影響がなくても小児の集団を長期フォローアップすると多くの甲状腺がんが診断される。 甲状腺がんの増大速度が一定だ…

「がんは早期発見早期治療が大事なのに、なぜ甲状腺がんだけ検診するなと言われるのか」

2025年6月、子どもの甲状腺検査に関する要望書が福島県に提出されました。提出したのは、かつて福島県立医科大学で検査運営に携わった医師らが所属する専門家団体「若年型甲状腺癌研究会(JCJTC)」です。 ■“過剰診断”が生じている…研究団体が「子どもの甲状…

神奈川歯科大学大学院「統合医療学講座」の問題点について

神奈川歯科大学大学院の「統合医療学講座」のシラバスに、ホメオパシーをはじめとして疑似科学とされる療法が含まれていることを、毎日新聞が報じた。大学がニセ医学にお墨付きを与える構図や、科学的根拠に乏しい施術を手がけるクリニックの増加への懸念も…

昇竜拳が出ない

息子がスト2をプレイしていた。正確にはNintendo Switch版「ストリートファイターIII 3rd Strike」。30周年記念のコレクションで、歴代シリーズが楽しめる。いい時代だ。初代「ストリートファイターII」がゲームセンターに登場したのが、私が大学生のころ。…

HPVワクチン推進は「優生思想」か?

HPVワクチンは世界的に安全とされている HPVワクチンは安全だというのが世界の標準的な考え方である。 HPVワクチンはきわめて安全です。「HPVワクチンは安全」とされるのは、副作用が一切ないという意味ではなく、他のワクチンと同様に、許容できる範囲に収…

乱立する膵がん検診

有効な膵がん検診は存在しない 日本人の部位別のがん死亡数の上位は、肺がん、大腸がん、胃がん、膵がんが占める。男女計では膵がんは第4位であると思っていたが、さきほど確認したところ、2023年の統計では胃がんを抜いて第3位になっていた。肺がん、大腸が…

無意味なサイコロがん検査の精度を高いと見せかける方法

一滴の血液や尿で多くの種類のがんの検査ができると称する「がんリスク検査」が数千円から数万円程度で提供されています。無症状の人を対象とした検診において、がん死亡率を下げるといった有効性があるかどうかや、検診を受ける集団における感度や特異度が…