NATROMのブログ

ニセ医学への注意喚起を中心に内科医が医療情報を発信します。

カイロプラクティックでみるみるγGTPが

「黄色」が電磁波から身を守るで紹介した山口純子先生による診療でγGTPが下がったという体験談を見つけた。この方は、「音楽業界に13年間勤務」して「毎晩のようにお酒を飲んでた」ところ、γGTPの値が677に。正常値はだいたい50以下である。医師からは、「1ヶ月以上禁酒すれば、なんとか100〜150くらいまで数値を下げることができるだろう・・・」と言われた。とりあえず禁酒し、そして日本メンタルヘルス協会 研究コースで、講師の山口純子先生と「運命的な出会い」をしたのだ。その結果、



なんと!「83」まで数値が下がっているではありませんか!?
わずか2ヶ月間の間に100以下になっちゃいました!(驚)


この数字を目にした時、嬉しくて病院の先生に抱きついてしまいそうでした。(笑)
と、同時に、山口純子先生から教えていただいたことを思い出していたのです。


「平成18年9月3日」から禁酒をはじめました。
この数字は「平成18(2006年)年10月31日に行った血液検査結果なんです。
わずか2ヶ月の間に起こった出来事です。


この間、僕がしたことといえば・・・
(1)禁酒
(2)カイロプラクティックによる診療*1


禁酒とカイロプラクティックによる診療だけで、なんとγGTPが83に!(驚)。マジレスすれば、アルコール性肝障害としてはきわめて普通の経過であり、驚くようなことはなにもない。γGTPの半減期が20日として*2、60日で677→約85となる計算になる。「僕の肝臓の治りが早かったのは紛れもなくパソコンの設定を変えたことと深く関係していたのです」とあるが、カイロプラクティックによる診療やパソコンの設定は、γGTPの改善と無関係であろう。

プロフィール*3によれば、この方(「神岡シンゴリス」と名乗っている)は、「2007年秋には日本メンタルヘルス協会公認心理カウンセラー」になるとのこと。「恋愛心理モテる脈あり恋愛マニュアル」を12800円にて提供しているそうだ*4。日本メンタルヘルス協会のページ*5を見ると、船井総合研究所や七田教育研究所の七田眞とも繋がりがある。代表の衛藤信之氏は、TEAM GOGO!*6の呼びかけ人の一人。「中にはそういう人もいる」というレベルではなく、そもそもが日本メンタルヘルス協会がそういう団体であるようだ。

■カウンセラーやりたいって軽い気持ちで言う人は今すぐ自殺したほうがよい(novtan別館)では、「中途半端なカウンセラーになるな。変な知識だけ身につけて、アマチュアカウンセラーとして周りの人を診てはならない」と指摘されているが、まったくその通りである。■心理関係の資格は国家資格ではない(Mariaの戦いと祈り)では、「カウンセリングを行うことの国家資格はなく、さまざまな団体がカウンセラー資格を認定しているだけ」、「資格商売といわんばかりの団体もある」とのこと。つっこんだら奥が深そうな話である。心の弱い人たちをカモに、授業料を巻き上げつつインチキ講義をして、民間資格を与えるようなところもあるかもしれない。被害者が同時に加害者になりうる、マルチ商法と同じ構造がありそう。

という訳で、心理カウンセラーを利用するなら、自己責任で。どこかの民間団体が公認していたとしても、質が保証されているわけではないことを気に留めておこう。ただし、どの団体が公認しているかによって、カウンセラーの質を推測することはできる。日本メンタルヘルス協会の公認カウンセラーは選別されている。科学的思考能力を持った人は、公認される前にふるい落とされるであろう。

*1:眼精疲労、肩こりなどが治る 「黄色」の秘密 - 恋愛心理モテる脈あり恋愛マニュアル:男心と女心のメンタルヘルス心理学 URL:http://www.power-story.info/yellow.html

*2:「不全シリーズ Liver Failure URL:http://mpsp.umin.jp/first/LF.ppt#272,17,胆汁うっ滞 γ-GTP」によればγGTPの半減期は20〜25日とある。臨床上の実感としてもその位。むろん、正常値に近づくにつれ下がりは緩やかになるのであくまで目安。

*3:心理カウンセラーのプロフィール - 恋愛心理モテる脈あり恋愛マニュアル:男心と女心のメンタルヘルス心理学 URL:http://www.power-story.info/profile.html

*4:こんなマニュアルを1万円も出して買うような人は絶対にモテそうにないけど

*5:URL:http://www.mental.co.jp/

*6:http://d.hatena.ne.jp/NATROM/20070619#p1を参照