NATROMのブログ

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誰が少女を殺したのか

糖尿病の中学1年の少女が死亡したことについて、少女の両親が計約1億円の損害賠償を求める訴訟を起こしたという記事。

■死亡少女の両親、「次世紀ファーム」を提訴 賠償求める(朝日)


 訴えなどによると、少女は母親に連れられて昨年7月15日、同研究所を訪れ、母親は16日に自宅に戻った。18日、同研究所から少女の呼吸が停止していると119番通報があり、少女は病院に運ばれたが死亡が確認された。少女は小児糖尿病で、インスリンを毎日投与する必要があったが、同研究所を訪れた際は持参しなかったという。
 両親側は「持参しなかったのは健康食品で治ると言われたから」と主張。「わらにもすがる思いで自然療養や自然食品に頼る難病患者に対しては、それに過度に依存させず、近代的な医療を受ける機会を損なわないようにするべきなのに、研究所側は、容体が悪化してもインスリンを投与するなどの義務を怠った」と訴えている。

次世紀ファーム研究所がトンデモでインチキであることは説明いらないよね?少女の死の責任の一端が次世紀ファーム研究所にあることは確かだ。民事どころか、刑事責任を問われてしかるべきだと思う。ただ、この少女の両親にも責任はある。大人がインチキ治療にはまって病状を悪くするのは勝手だが*1、子供については、適切な医療を受けさせる責任が保護者にある。

子供に適切な医療を受けさせないのは児童虐待とみなされる。このケースは虐待にあたると私は思う。

*1:インチキ治療のせいでかかった余計な医療費を公的な保険が負担していいのかというのは議論になるかもしれんが