NATROMのブログ

ニセ医学への注意喚起を中心に内科医が医療情報を発信します。

普通お金持ちしか医師には成れません

「必ずしも患者側からみたら満足がいくわけでもなく、その点は改善しなくてはならないだろう」と私は書いたのにも関わらず、「現状の改善は別段必要がないと考えられている」「世界的に水準が高いということが現状の問題を放置することの理由になると考えている」などとねつ造した六星さんの新作だよ。
■今日のチョット気になること5/16(めぞん六星の書斎の部屋)


しかし、現状の制度では普通お金持ちしか医師には成れません。
医師になる為にお金がかかりすぎる為、医師になってからその損分を取り返そうと躍起になってしまう部分もあるのではないかと思います。
「言葉は文脈から切り離してしまうと意味が変わる」とのことなので、引用元を明示している。ええと、「現状の制度では普通お金持ちしか医師には成れない」ってのが間違いであることは説明が必要かな?確かに、私立の医学部の授業料は高い。でも、お金持ちでなくても、国立大学の医学部に入れば医師にはなれる。国立の授業料も高いというのであれば、要するに「普通お金持ちしか大卒には成れません」ってことだろうか。実際には奨学金もあるし、自治医科大という手もある。ちなみに、医学部の授業料を免除したとして、医師不足の解決にはならない。医学部の定員を増やさないとね。そもそも、医学部の定員を減らしたのは厚生省なんだけどな。当時の人たちから見たら、利用者(患者)に有益なことをしようとしているように見えただろうね。

「いつまでも(訂正済みの)誤解を引き合いに出す」などと言われたので、今まさに六星さんが誤解している例を出してみた。他にも誤解していることは多々ある。「貧乏人は死ねばいい。この言葉は現状の医療ですらそのようになっています。これは資本主義社会なのだから当然ですね」とか「医療のチェック機構は存在していません」とか。「訂正したからそれでいい」と六星さんはお考えなのかもしれないが、そもそもいったいなぜ誤解したのか、という点について、ご考慮いただければ幸いである。そうでないと、いつまでも誤解し続けることになる。誤解について優しく指摘してあげるのも、最初のうちだけ。複数の文献を提示して、「インフルエンザ脳症はインフルエンザにかからなくてもなるってのは間違いだ」って指摘したときは、「(NATROMは)読解力がない」「トンデモ」などとなじられたのだ。

非医療従事者が、現在の医療業界が抱えている問題の解決の為にいくつかのアイデアを出すのは歓迎すべきことだ。でもね、現在の医療システムについて、もちっと知る努力をしてからにしてくれないかな。いろいろ改善すべき点はあるにせよ、日本の医療制度はきわめて優秀であるんだよ。これは私だけが言っていることではない。世界保健機構(WHO)が言っているんだ。いったいなぜ日本の医療システムが評価されているのか把握した上で、改善点を探るというのが賢いやり方であろう。「素人の俺でもわかる」と今でも考えていらっしゃるのかな。