少しは慣れたものの、チビはやっぱりカブトムシが怖いらしい。胸にとまらせるところまではできるようになったが、首の方に上がってきたら「とって、とって」と言いやがる。カブトムシは別に噛んだりしないから大丈夫だと言って聞かせたが、
とのこと。じゃあ、いつ噛まれたんだと聞いたら、
「かぶとむしにかまれたことある」
とな。カブトムシはある日のこと、水槽のフタを持ち上げて脱走した。チビはそれほど残念そうではなく、「かぶとむし、にげちゃったねえ」とあっさりしたものだった。ほっとしたのかもしれぬ。
「こどものころ」