NATROMのブログ

ニセ医学への注意喚起を中心に内科医が医療情報を発信します。

ホタテパウダーで残留農薬除去実験

ニセ科学を見抜く練習問題シリーズ。円山花参道のサイト*1によると、ホタテパウダーとは、「北海道のホタテ貝殻粉末を使用した天然素材で、抗菌性や調湿性に優れ消臭効果も発揮するナチュラルペイント」であるそうだ。「シックハウス症候群・化学物質敏感症が改善」とも主張されているが、効用はそれだけではなく、以下のページでは、ホタテパウダーが野菜についている農薬をカットすると主張されている。


■花参道コーポレーションTOP  ホタテパウダー  花参道のティータイム   花参道社長のブログ*2 (魚拓


野菜も沢山食べないと。でも、今の野菜って農薬やワックスが沢山かかっていて、そのまま食べるとアレルギーになっちゃう。そこで登場したのが
ホタテパウダー君!
洗うときに浸すと農薬やワックスが落とせる優れもの。ということで、タカラキッチンのショウルームをお借りして、実験してみることにしました。



ちゃんと対照群を取っている。この点は偉い。ホタテパウダーをボールに入れてかき混ぜると、スーパーの野菜のほうからは「黄色い油のようなものが浮いてきた」






さて、この実験の問題点は何か?わざわざ写真を引用した出題者の意図も考慮して答えよ。














浮いてきたのは本当に農薬なのかとか、対照群をとるならホタテパウダーなし群も必要だとか、いろいろあるけれども、ここでは、有機野菜のほうがパセリで、スーパーで買ってきた普通の野菜がブロッコリーってのはどうなのよという点を問題にしよう。おかしいよね?無農薬野菜と普通の野菜を比較するんだったら、同じ種類の野菜で比較するべき。もしかしたら、無農薬のブロッコリーにもワックスってあるんじゃないか?と思って調べたら、4年前に悪徳商法?マニアックスが既に通った道だった。


■ブロッコリーの表面は、残留農薬?(悪徳商法?マニアックス ココログ支店)


とりあえず、実験では、ブロッコリーの表面に付着している「展着剤」もしくは「農薬」を除去しているらしいので、ブロッコリーについて、調べてみると以下のようなページが見つかった。アブラナ科の植物なので、油が多い(水を弾く)のは当たり前なのかも。除去しているのは、農薬などでは無く、「天然の成分」なのでは無いだろうか?

東都生協残留農薬検査報告

これって農薬?

 寒くなってきました。「ブロッコリーを洗ったら白い油分が浮いてきました。これは農薬では?」というクレームが増える時期です。実は多くの作物は表面にロウ状物質を生成することが知られています。これは作物の防御反応で干ばつなど乾燥から水分蒸散を防いだり、雨などと一緒に病害菌が内部に浸透するのを防ぐためといわれています。きゅうりやぶどうのブルーム、りんごなどの果物やトマトなどのワックス、そして、きゃべつやブロッコリーなど。冬になり乾燥して寒くなると、ブロッコリーはこのロウ状物質を多く生成します。これが白い油分の正体です。安全・品質保証部では念のため残留農薬検査を行うのですが、このようなケースで農薬を検出したことはありません。

東北農業研究センターたより

キャベツやブロッコリーなど,多くのアブラナ科作物の表面は,粉状に分泌されたロウ質であるワックスブルームによって覆われています。


農薬とは無関係にブロッコリーはワックスが付いているもののようだ。「農薬除去実験」ではブロッコリーを使用するというノウハウがあるのかも。引用した実験では、ホタテパウダーが農薬をカットすることを示せていない。私の知る限り、ホタテパウダーが農薬をカットできるという信頼できる科学的根拠はない。


*1:URL:http://www.hanasando.e-arc.jp/hotate.htm

*2:URL:http://www.hanasando.e-arc.jp/hotate2.htm