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和文医学雑誌にEM菌の論文が載っていた

たわむれに「EM菌」で、和文医学論文を検索してみると、1件だけ見つかった。



廃棄物処理のエースEM菌(解説)
Author:比嘉照夫(琉球大学 農)
Source:綜合臨床(0371-1900)45巻12号 Page2835-2836(1996.12)




診断の指針・治療の指針ではない件について


「綜合臨床」自体はまともな雑誌。和文雑誌だからそれほど権威があるわけではないが、非専門分野の知識を得たいときなどに重宝する。EM菌に批判的な文脈から書かれた論文かとも思ったが、比嘉照夫先生自身が書いてあることからわかるように、EM菌に肯定的な内容であった。肯定的というか、電波的。



 有害な微生物の汚染,排気ガス,フロンガス等のガス汚染,電磁波,放射線など,目に見えない廃棄物は,ますます増大し,環境や健康問題に深刻な影響が現われ始めている.
 いずれも発生源で最小限に抑えねばならないが,エントロピー増大に立脚した現在の科学技術による解決は困難である.EMが生成する抗酸化物質やそれと連動している抗酸化波動は,きわめて熱安定性が高く,液状またはセラミックス化し安定させることが可能である.それらの物質は,EM-χまたはEM-χセラミックスと称され,医療の分野はもとより,廃棄ガス対策,電磁波や放射線対策にも利用され始めている.
 EM-χを自動車のラジエータとエンジンオイルに,EM-χセラミックスを燃料タンクとアンダーコートに使用した車は,燃費が30-50%と節減したばかりか,廃棄ガスがクリーンになり無害化することも明らかとなっている.
 電子機器にEM-χセラミックスを使用すると機器の性能は高まり,電磁波の障害が著しく軽減されるようになる.電子レンジのマイクロウエイブ対策にも著効がある.またチェルノブイリ原発事故の風下となったベラルーシ共和国では放射能被害対策としてのEMの総合技術が高く評価され,次年度から国家プロジェクトとして始める予定である.
 院内感染防止や医療廃棄物の処理にもEMは著しい効果があり,多方面で使われるようになってきた.EM-χの医学の応用については国内でも多数の例があり,臨床例を含め著書も数冊出回っている.エイズに対する発生抑制効果もタイのエイズボランティアセンターで5年経過後の効果が確認されており,EM技術の応用は無限大に広がり始めている.


当然、参考文献の提示など一切なし。抗酸化波動なんて言葉を医学雑誌で見ることになろうとは、思ってもみなかったですよ。燃費向上や電磁波対策はともかく、医学関係の雑誌で、「エイズに対する発生抑制効果」などを書いちゃうところからも、比嘉先生は、「わかっててやってる詐欺師」ではなく、心からEM菌の効果を信じているのであろうなあ。



それではまるでEM教ではないかと皮肉る人もいるが,EMは宗教ではなく,歴とした科学である.万能的に見えるEMの機能性は,すべて抗酸化作用と抗酸化波動によるもので再現性がきわめて高く普遍性をもっている.それらの事実を逆説的に考えると,地球上に発生する有害な現象は,すべて強烈な酸化誘発によって起こるといえるからである.


どう見てもニセ科学です。本当にありがとうございました。それにしても、仕事しろ!編集者。載せてはいけないレベルの論文だろう、これ。ちなみに、綜合臨牀のこの号は、「診断の指針・治療の指針」という特集だったようだ。



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EM菌だけ異彩を放っている。なんでこんなことになっちゃったのだろう。