NATROMのブログ

ニセ医学への注意喚起を中心に内科医が医療情報を発信します。

気功で気絶する動画

mixiの代替医療コミュの■気功の治療効果について 2経由で、「気孔で気絶*1」という動画を知った。




被験者がベッドに座り、施術者が後ろから首を触りつつ、

施術者 「背筋をピンと伸ばして…思い切り大きく息を吸って…少しずつ息を吐きながら首をコクンと前に倒して…コクン、はいそうです」
被験者がバタンとベッドに倒れる。左手がゆっくりと動く。
被験者「アレ?」
施術者「倒れたの覚えています?」
被験者「いいえ、よくわかんなかったです」
施術者「ちょっとヨダレ垂らしてはったね」
被験者「ホントですか」(笑い声)
施術者「大丈夫ですよ。気分いいでしょ」
被験者「意識がパッととんでポンと落ちた感じ。なんかすっきり。すごいなこれ。」


他にも「初めての気功体験で、スッキリさわやかです(^^)」という投稿者コメント付きの「気功サロンの体験で、気絶しましたっ!」という動画があった。mixiやYouTubeのコメント欄で既に指摘されているが、頚動脈を圧迫して失神させているだけである。気功でもなんでもない。言うまでもないことだが、一時的とは言え失神を来たすほど脳血流量を下げるわけだから、身体に良いどころか潜在的には危険である。以前、「気絶ごっこ」とか「失神ゲーム」とか言う名前の危険な遊びが小中学生の間で流行ったという報道があった。いじめとしてなされるほかに、酩酊状態を味わうために自分で行う場合もあるそうだ(参考:■失神ゲーム(ウィキペディア))。動画での体験者による「すっきりした」という発言もあるように、気持ちよく感じる人もいるのかもしれない。

それにしても、なぜこの動画がYouTubeに投稿されたのだろうか。危険な施術を告発しているにしては雰囲気はなごやかだし、宣伝にしては店の名前などは出ていない。どうも、利用者によるレポートブログ由来らしい。「気孔の体験してきました。気絶しました!」という報告とともにYouTubeの画像が張ってある。


■口コミ人気健康サロン取材比較レポート*2

ブログ主のプロフィールには「全国の素敵なサロンのオーナーさんからのオススメ、ご推薦の全国の店舗を取材してご紹介します!」とある。ここのブログ主が気功サロンを取材し、そのレポートの際に動画をYouTubeにアップしたようだ。動画の様子から判断するに、ブログ主は、「気功によって気絶」したことに純粋に驚き、動画として公開する価値があると判断したのであろう。しかし、頚動脈を圧迫すれば失神するというのは、別に医師でなくても知っているようなことではないのか。施術者のほうも、取材を受け、動画の撮影を許可したのであるから、自身が真に気功によって気絶させていると信じているのだろう。独学で20年間気功を修練したそうである。

「気功には国家資格がないため、いくらでも気功師を自称できる。中には医学的知識皆無で、危険な施術を行う気功師もいるだろう。わざわざ高い金を払って気功を受ける人の気が知れない」とdisろうと思ったけど、国家試験をパスしたはずの医師にもけっこうトンデモさんもいるから止めた。

*1:原文ママ。「気功で気絶」のタイプミスであろう

*2:URL:http://takahashi-womtv.blogspot.com/2008/02/blog-post_18.html