出産間近で脳内出血の症状が見られた東京都内の女性(36)が7病院から受け入れを断られ、出産後に死亡していたことがわかった。手術を受けた病院に到着するまで約1時間15分かかっており、東京都は詳しい経緯を調べている。
都によると、女性は今月4日、頭痛などの体調不良を訴え、江東区のかかりつけの産婦人科医院に救急車で運ばれた。かかりつけ医は脳内出血の疑いがあると診断し、午後7時ごろから電話で緊急手術ができる病院を探した。しかし、都立墨東病院(墨田区)など7病院から「当直医が他の患者の対応中」「空きベッドがない」などと次々に断られたという。
かかりつけ医が午後7時45分ごろ、改めて都立墨東病院に電話したところ、受け入れ可能になったという返事が来たため、同病院に搬送。午後8時18分に到着した女性は帝王切開で出産し、脳内出血の血腫を取り除く手術も受けたが、3日後の7日に脳内出血のため死亡した。赤ちゃんの健康状態には問題がないという。
都立墨東病院は、リスクが高い新生児と妊婦に24時間態勢で対応する総合周産期母子医療センターに都から指定されている。同病院の当直医は本来は2人体制だが、産科医不足で7月から土曜日と日曜日、祝日は1人になっていた。4日も土曜日で1人しかおらず、1人の時間帯は原則として急患受け入れを断っているため、最初の要請に対応できなかった。2度目の要請があった時は、当直以外の医師を呼び出して対応したという。
まず、お亡くなりになった女性のご冥福を心からお祈りいたします。妊婦の脳出血で、複数の医療機関が受け入れ困難であり、母体死亡、児は助かったということで、奈良県大淀病院のケース(参考:■大淀町立大淀病院事件(Wikipedia))と似ている。こうした症例を受け入れるには、脳外科医、産科医、小児科医、麻酔科医などのマンパワーが必要であり、受け入れ可能な医療機関は限られる。都内であっても、受け入れ先に到着するまでの時間が「約1時間15分」というのは、それほど悪くないのではないかと思う。総合周産期母子医療センターに指定されていた都立墨東病院が対応できなかった理由は、記事でも指摘されているように産科医不足のためである。■ルポ 都立病院の産科が消える(産科医療のこれから)によると、都立墨東病院では、2006年末に既に外来診療を縮小している。今回の「事件」は、起るべくして起った。「『東京でこんなことが起こるなんて』と厚生労働省の担当者は驚きを隠せない様子だった」という報道*1もあるが、のん気なことである。今後も、奈良や東京に限らず、どの地域でも起りうることである。
マスコミの報道は、以前に比べるとたいぶましになった。それでも「受け入れ拒否」ではなく、「受け入れ困難」「受け入れ不能」として欲しかった。さすがに、「たらい回し」と書くところはなかろうと思ったが、甘かった。時事ドットコムでは、■7医療機関で拒否、妊婦死亡=脳出血、1時間たらい回し−東京との見出し。産経ニュースでは、3時間前のGoogleのキャッシュでは「搬送先が決まらず患者がたらい回しにされるケースが相次いでいる*2」とあったが、「搬送先が決まらず手遅れとなるケースが相次いでいる*3」に訂正されているようだ。一番酷い見出しは、スポニチの■それでも指定医療機関か 7カ所診療断られ妊婦死亡だった。少ない人数で頑張って当直を回しても、ひとたび受け入れ不能であったら、「それでも指定医療機関か」と言われる。であれば、常勤産科医が減った時点で墨東病院は指定を返上すべきであったのだろう。そのせいで、他の医療機関にしわ寄せが生じ、ドミノ倒しのように東京都の産科医療が本格的に崩壊したとしても。
*1:URL:http://www.chugoku-np.co.jp/News/Sp200810220258.html
*2:http://f.hatena.ne.jp/NATROM/20081022161713
*3:URL:http://sankei.jp.msn.com/affairs/crime/081022/crm0810221213012-n1.htm