インチキ医療を批判することに対し、「そうは言っても現代医学が病気を100%治すことができない以上、一縷の望みを持ってすがるものがあっても良いのではないか。それをインチキだ、ニセ科学だと批判したり、笑い物にしたりするのはいかがなものか」という意見がある。一理ある。一理あることを認めた上で、インチキ医療の弊害は歴然と存在するのであり、批判することに意味があると私は考える。インチキ医療は現代医学の否定と関連していることが多く、治せる見込みの十分ある疾患が放置されたり、余計な苦痛を味合わせたりする。
さて、mixiの「ホメオパシー問題を考える」コミュの「雑談トピ」*1経由で知ったのだが、■ホメオパシー的 自分探しの旅*2というブログにおいて、ホメオパシーに(それも、よりたちの悪いホメオパシー・ジャパン)はまっている母親が、幼児の耳の怪我をホメオパシーで治そうとしている経緯を書いている*3。
■ホメオパシー的 自分探しの旅 2008.05.03*4
夜中、俊太郎が綿棒を耳に入れたまま寝て、寝返りを打つという暴挙に出て、耳から流血。すごい悲鳴で起こされて、しばらくレメディをリピートという一幕が...。Acon.、Arn.、Calen.。。。Calen.チンキの薄めたのを耳に垂らしたら沁みたらしく、再び悲鳴をあげ...。
何とか治まったものの、その後、もう一度痛みで起きたので、レメディを。朝には痛みもひいたらしく、すっかりご機嫌で「きのうはいたかったなぁ。。。」だって。なんだって、ゴミ箱に捨てた綿棒拾って耳に刺したのか...。
おそらく、外傷性の鼓膜穿孔と思われる。通常は鼓膜の穴は自然に塞がるが、感染予防の観点からお風呂などで耳に水が入らないように注意しなければならない。なのにこのお母さんは、わざわざ耳にレメディを入れるのである。レメディとはホメオパシーで用いられる「薬」のようなもので、流派によって差があるが、ホメオパシー・ジャパンにおいては「植物や鉱物などを高度に希釈した液体を小さな砂糖の玉にしみこませ」たものである*5。希釈されているがゆえに内容はほとんど砂糖であり、害はないものと私は考えていたが、このような使われ方をすると明らかに有害である。(追記:コメント欄にて「砂糖を直接耳の中に入れたわけではないかも」とのご指摘がありました。ご指摘のように砂糖玉以外のレメディもあるようですので、不適切な部分は削除いたします)。
■ホメオパシー的 自分探しの旅 2008.05.06*6
金曜日の夜に綿棒を耳に突っ込んだまま寝返りを打って流血の惨事を引き起こした俊太郎。次の日当たりは公園で遊びまくるほど平気にしていたのに、4日の夜になって再び泣き叫び始め、実際、耳からはピンク色のべたべたする汁が出てきていました。Acon.アコナイトはもちろん、Arn.アーニカ、Calen.カレンデュラあたりは、相当リピートしたけどダメ。夜になって悪化だし、なんか怒ってるのでCham.カモミラとかも盛ってみたけど治まらず。。。
「しんじゃうよー!いたいよー!もうだめだー!口があかないよー!しゃべれないよー!」と叫ぶ俊太郎。(っていうか、しゃべってるし。。。)
頭も痛いと言ったり(公園の遊具にぶつけたところかも?)、ほっぺたも痛いと言ったりするので、傷が深いのかも?と、一応受診することにし、母に車を出してもらって実家近くの総合病院に向かいました。が、途中で爆睡。。。
どうせ、救急に行っても大したことはわからず、外来に来てくださいと言われるだけだろうということもあり、実家に引き返してきました。私にくっついて離れないので、翌日の「ガンを考える会」への出席は半分諦めてましたが、朝起きたら平静に戻っていて「ママ、がっこういっていいよ。ばあばといる。」と。。。
「ピンク色のべたべたする汁」は耳漏であり、感染を起こしたのであろう。砂糖の溶液をわざわざ耳に流し込んだのだから感染しないほうが不思議だ。この時点で、ホメオパシーによる治療をあきらめ、現代医学に頼るべきである。長引けば、感染の拡大や慢性化の恐れがあろう。時間外外来にかかる必要まではないだろうが、翌日の時間内に受診させればよい。それを、一旦症状が治まったからと放置している。コメント欄を見るにこのブログの読者もいるようだが、「さすがにそれはまずいっすよ」などと助言してくれる人はいなかったのか。それとも、この母親が特殊なわけではなく、ホメオパシー・ジャパンの関係者にとっては、この状態はまだ現代医学の介入不要ということなのか。
■ホメオパシー的 自分探しの旅 2008.05.07*7
ところで、俊太郎の耳ですが、まだまだ汁が出てます。しかも、その汁で耳がかぶれてる。。。綿棒刺したのは単なるきっかけで、耳から排毒してる模様。蚊に刺されて排毒するのと似てる?「死んじゃうよ〜!」などと叫んだりするので、Streptoc.ストレプトコカイナム(溶連菌)あげたりしてみてます。小さい頃に溶連菌やって薬で抑圧したりしてるし...。
痛いだろうけど、がんばって出しちゃってね〜
でも、なんだか、都合の悪い時だけ痛がってる気がするんだよなぁ〜。。。抱っこしてほしい時とか、お風呂に入ろうという時とか、アイスはダメと言われた後とか。気のせい?
早く病院へ連れてってあげて。排毒ではなく排膿。母親のあなたが感染させたのだ。その後、「落ち着いた模様」であるも、「まだ多少の耳垂れがある」という状態。「きっと、予防接種の毒出しだろうなと踏んでます」とのこと。おそらく、この子は今後必要な予防接種を受けさせてもらえないのだろう。子の受ける医療について、ある程度の範囲内で親権者が選択するのは当然だが、それも限度がある。この例は、子に必要な医療を受けさせない「医療ネグレクト」である。児童虐待だ。父親や祖母もいるようだが、なぜ介入しないのだろうか。もしこの子が、急性虫垂炎などの命にかかわる病気にかかったときはどうするのだろう?どうしようもなくなるまで、ホメオパシーを続けるのだろうか。
母親を批判するだけでは問題が解決しないというのはわかる。なぜこの母親がホメオパシーにはまったのか、おそらく、ブログのタイトルの「自分探しの旅」というところにヒントがあるように思うが、そこから考えるべきなのだろう。それはそれとして、「自分探し」につきあわされて余計な苦痛、難聴になるリスクを一方的に背負わされる子を考えると、批判を行うべきだと私は考えた。どんな言葉もこの母親の考えを変えることはできないだろうが、周囲の人たちや、あるいは将来ホメオパシーにはまる予備軍の人に言葉が届けばそれでよい。
*1:URL:http://mixi.jp/view_bbs.pl?id=18988754&comment_count=386&comm_id=2230373
*2:URL:http://plaza.rakuten.co.jp/piroko0618/
*3:ホメオパシー一般については■ホメオパシー - Skeptic's Wikiが参考になる
*4:URL:http://plaza.rakuten.co.jp/piroko0618/diary/200805030000/
*5:ホメオパシー・ジャパン URL:http://www.homoeopathy.co.jp/introduction/index.html
*6:URL:http://plaza.rakuten.co.jp/piroko0618/diary/200805060000/
*7:URL:http://plaza.rakuten.co.jp/piroko0618/diary/200805070000/