■わっ、ゴキブリだ! 盛口 満 (著)
妻はゴキブリが大嫌いなのに、なぜかこういう本を買う。ゴキブリを駆除する方法が載っている本ならまだわかるのだが、この本はナチュラリストによって書かれたもので、実用的なことは載っていない。著者の盛口満は、他にも生物関係の本をいくつか書いている。本職は教員で、現在は沖縄に在住している。ナチュラリストが書いた本はみなそうだが、対象物に対する愛にあふれている。図鑑的なものではなく、ゴキブリにまつわる体験談を述べられており、面白く読める。
登場人物のキャラも立っている。たとえば、ゴキブリ師匠スギモト君。ゴキブリを一目見て種を同定する。「これはヒメチャバネゴキブリです。海岸林とかに割合と多いゴキブリですよ」「これはウスヒラタゴキブリの幼虫です」。著者曰く「沖縄の野ゴキに関しても、彼は恐らく日本一詳しいだろう」。野ゴキというのは、野外性のゴキブリのことである。世界には約3700種のゴキブリがいて、そのうち屋内性はたった10数種ぐらいで、残りは野外性ゴキブリだそうだ。そう言われると当たり前のような気がするが、なにぶんゴキブリというと台所の隅にいる黒くて素早い奴というイメージがあるので意外だった。そういや、カブトムシ用のバナナトラップに小さなゴキブリが群がっていたのを見たことがある。
中盤は、ゴキブリ師匠スギモト君と、沖縄本島を一日かけて、何種類のゴキブリをゲットできるかに挑戦する「沖縄野ゴキ・プロジェクト」について。畑、森、沢、街とあちこちでゴキブリを探し回る。他に、ゴキブリから生える冬虫夏草を探したり、屋久島や西表島に行ったり。挿絵も豊富。朽ち木を食べるゴキブリが結構いることがやはり意外だった。そういやゴキブリはシロアリと近縁だったな。ゴキブリの別の一面を知ることができた。だからといって別にゴキブリが好きになったりはしないけど。