ようやくマスコミも危機感が出てきたようで、最近よく医療崩壊に関する記事を目にする。本日(2007年3月21日)の西日本新聞にも、「お産できますか 加速する産科不足」という記事があった。大分県中津市内では5年前は通常のお産を扱う医療施設が4ヶ所あったのが、現在では個人経営のクリニックが一つだけになったこと、病院の産婦人科部長まで努めたが独立してお産を扱わない婦人科の診療所を開く40歳台の男性医師のインタビューなどが紹介されている。「自分の子どもが医師になった場合、産婦人科を勧めるか」というアンケート結果を引用する。
産婦人科医を取り巻く厳しさは、久留米大学が2005年、同科の医局員61人に行った調査で浮かび上がった。
一日の平均勤務時間は12時間以上が78.5%。一ヶ月の休日は平均2.5日。そして「自分の子どもが医師になった場合、産婦人科を勧めるか」という問いに対しては「絶対勧めない」が30.9%、「あまり勧めない」が54.8%で、大部分が否定的だった。*1
調査から2年がたった今、状況改善の兆しはみえない。
2005年の調査である。ということはつまり、福島県大野病院事件以前である。大野病院事件以前ですら、8割強が子に産婦人科を勧めない。大野病院事件以降はさらに「子に産婦人科を勧めない」割合が増えたであろう。一地方大学の産婦人科医局員のみを対象にした調査であることを割り引いても、産婦人科医がうらやましがられるような職業ではないことは明らかだ。私のところはまだ子供は小さいが、現在の状勢が続くのであれば、産婦人科医などとんでもないと思う。というか、臨床医になることを勧めない。まあ、あと20年もすれば、日本の医療も一度焼け野原になったあとに復興(金持ち相手の病院のみかもしれんが)している頃だろうから、また話は違ってくるだろうが。
過労によるうつ病から自殺した小児科医の中原利郎医師は「医師にはなるな」「小児科医にだけはなるな」と子供たちに言っていた*2。いまだに「医師は特権階級」などと言う周回遅れの人もいるが、子を同じ職業につけさせたいと思わない「特権階級」があるのだろうか。