■父親高齢ほど自閉症増加 米調査、遺伝子情報関連か*1(西日本新聞)
【ワシントン5日共同】5日付の米紙ワシントン・ポストは、父親の年齢が高いときに生まれた子供は若い年齢の父親に生まれた子供に比べ、自閉症になる可能性が高くなるとの米マウントサイナイ医大などの研究結果を伝えた。父親の遺伝子情報が何らかの影響を及ぼしている可能性を示す新しい発見という。
研究チームは高齢の父親の事例数が少ないため、断定的な結論は出せないとしているが、父親の年齢が上がるにつれて自閉症の割合が増える傾向は、はっきりしたとしている。
えー、父親の年齢が関与しているとしても、遺伝情報は関係ないんじゃないの、というのが最初の感想。20歳のときの精子と、40歳のときの精子は遺伝的にはほとんど変わりないはず。「ほとんど」という保留つきなのは、精子のもととなる細胞(精原細胞)はガンガン分裂しているわけで、分裂回数が多ければそれだけミスコピーが生じる確率も高いから。分裂回数でいえば卵子よりも精子がずっと多いので加齢による影響が出やすいのは精子のはず。ミスコピーの率やら精原細胞の分裂回数やらは調べたらわかるはずなので、年齢とともにどれくらいの精子に突然変異が蓄積しうるか概算はできるはず。面倒だからしないけど。
というわけで、父親の年齢と遺伝要因が関与する疾患に関係はあってもおかしくないかなと思い直した。ただ、遺伝要因が関与する疾患なんてごまんとあるんだから、自閉症に限らずその他の疾患でも高齢の父親がリスクとなっているのか。もしそうなら、とっくに知られているはずだと思って調べてみたら、自然流産や統合失調症のリスクが高いという話があった。やはり加齢とともに精子は「劣化」するのか。
CONCLUSIONS: Advanced paternal age was associated with increased risk of ASD. Possible biological mechanisms include de novo mutations associated with advancing age or alterations in genetic imprinting.
「父親の遺伝子情報が何らかの影響を及ぼしている可能性を示す」という報道は正しそうである。それにしても、父親が30歳以下の場合と比較して、父親が40歳以上ならリスクが5倍以上(元論文では5.75倍で95%信頼区間は2.65-12.46)ってのは、けっこうびっくりするような数字である。他の要因(高齢の父親の子は経済的に恵まれているため医療機関にアクセスしやすく自閉症と診断される可能性が高い、自閉症の遺伝的要因を持つ男性は結婚が遅い、等々)が関与している可能性もありそうだが、それは今後の調査で少しずつ明らかになっていくだろう。