NATROMのブログ

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学徒出陣

■国家試験受験資格、1年前倒しを=医師不足解消で特例申請へ−NPO法人(時事通信)


 全国の医学部生や医師ら400人余でつくる特定非営利活動法人「医学教育振興センター」(千葉県浦安市)は12日、在学中の5年生でも医師免許を取得できるよう医師法で卒業後に限定している国家試験の受験資格を前倒しする特例措置を、6月中に内閣府に申請する方針を明らかにした。合格した学生医師に、構造改革特区に認定された県内だけで卒業まで通用する地域限定の医師免許を交付する。
 1年早く免許を取得して働く医師を増やすことで、特に地方で深刻な医師不足解消を目指す。 


最初はよくできたネタかと思いURLを確認したけれども、ちゃんとヤフーのサイトであった。実は、Inoueさんが以前、コメント欄で同様の主張をされていた。


http://d.hatena.ne.jp/NATROM/20060506#c


# Inoue 『以前は見学中心だった臨床実習が、臨床参加型実習ということになって、格段に手間がかかるようになったのに、指導する側の人員はかえって減っている。それを補うためかどうか知らないが、外部病院へ学生を多く出すようになって、それ自体はバランスを取るという面では評価できるのですが、外部病院でも医師不足は同じであるから、やっぱり診療参加にはなってない。学生の質だって、CBTが誰でも通れるスカスカの関門でしかないから、知識がなくて参加など及びもつかない。
 私は臨床実習など1年で終わりにして卒業させて、国家試験を受験させ、卒後研修を3年にすべきだと思う。』


Inoueさんのブログでもとりあげている→■膨大な時間の浪費(ハードSFと戦争と物理学と化学と医学)。注意点は、卒業の前倒しの目的が、Inoueさんの主張は無駄を省くためであるのに対し、上記記事では地方の医師不足解消であること。医学部の定員を増やさない限りは、卒業を前倒ししようとも、医師不足の解消は一時的なものにとどまる。

実際には、6年生ができることなど限られているのでさほど戦力にはならない、すなわち、一時的にすら医師不足の解消には役に立たない可能性だってある。1年間教育してやっと少しは使えるようになった時点で、研修医は地域限定ではない通常の医師免許を手に入れ、その地域から逃げ出すことになるだろう。地域限定の医師免許にはあまり意味がないように思える。

個人的な意見を言えば、6年目の実習はそれなりに楽しかったので、なくなるとさびしい気がする。まあ、無駄と言えば無駄なのだが。そんなこと言いはじめたら、教養部だって無駄だし、学部にあがってからだって講義の大半は無駄だ。私は、代返のできない講義にはしょうがなく出席はしていたが、ほとんど聞いていなかったぞ。医師になって困ったことと言えば、教授連の名前と顔が一致しないということぐらいだった。