NATROMのブログ

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救急車出動でトリアージ。誰が判断するの?

増え続ける救急出動をどうにかしましょうということで、総務省消防庁が対策案を出した。


■救急車出動の「重症・緊急」優先、全国で導入へ(読売)


 報告書案では、119番通報で一律に救急隊が出動する現状を改めるとした。通報受理時と現場到着時に患者の症状を確認し、状況に応じて緊急度を判断したうえで、「心肺停止の可能性が高い」から「明らかに軽症と考えられる傷病者」まで6段階に区別する。緊急度が低い場合は出動を見送ったり、引き返したりすることも可能にするとした。
 このほか、軽症者の搬送に民間搬送事業者やタクシーを活用したり、通報が多くなる昼間の救急隊編成を手厚くしたりすることも提言。救急サービスの有料化については、「公平性の点から整理すべき課題が多い」として見送ると結論づけた。

2ちゃんのニュー速では、「どうやら火中の栗は救急隊員が拾うようでちょっと安心」とか書かれていてワラタ。緊急度の判断が「結果的に」間違っていた場合は、救急隊員が責任を負うのだろうか。最近では、民事どころか、刑事責任すら問われることがあるんで大変だよ。結局のところ、責任回避のために医師に確認を求めることになるであろう。私が救急隊員だったらそうする。医師だって、このご時勢、診もしないのに「軽症のようだから救急車で来る必要なし」と断言できるような漢(おとこ)はそうそういない。「話だけじゃようわからんので、とにかく連れて来い」(でなきゃ「診なきゃわからんが今ウチは立て込んでいるんでどこかよそへ」)と言うだろう。私ならそうする。余計な手間が増えるだけで救急出動の抑制にならないような予感。

有料化についても、料金を高く設定すると本当に救急車を必要な人が利用できなくなる。安くしたらしたで、「お金払っているから俺はお客様」のような人が増えるだけ。とりあえず全部運んで、軽症のみ料金徴収としたら、重症度判定で必ずもめる。地下に眠るMさんが指摘したように、「自由というものに本質的にかかってくるコストの問題」なんだろうね。


救急隊員の方のブログを読むと現場の苦労がよく分かる。
■救急隊の現実 救急車搬送パンク寸前!?(パラメディック119)


私見を言えば、判断ミスを免責にするならば、トリアージは有効だと思う。救急車を有料化にして貧乏人を切り捨てるよりかはずっとマシだろうけど、ミス免責は無理だろうね。