NATROMのブログ

ニセ医学への注意喚起を中心に内科医が医療情報を発信します。

医療は危険に満ちている

福島県の産科医が逮捕・起訴された事件で、「日本の産科医療は崩壊する」などと言われている。でも、そんなのは強欲な医者どもが既得権利を守ろうとして市民を脅かしているだけなんだゼ。産科医療が崩壊したって、ちっとも困らないんダ。以下のサイトを読めば、それがよくわかるヨ。


■出産に介入する産科医


核家族にとって三番目の成員、つまり最初の赤ん坊が生まれることがわかると、現代医学の介入はとたんに激しいものとなる。普通の宗教なら出すぎない程度で済ますところだが、医者は問題のあるなしにかかわらず、危機をあおってここぞとばかりに攻撃をしかけてくる。
口火を切るのが産科医である。出産は病気と見なされ、手術が避けられない処置であるかのようにしたてあげられる。出産の九五パーセント以上には合併症は生じないものだが、産科医がこの事実を認めれば、自分たちの仕事の九五パーセント以上が不要であることが世間にばれてしまう。もしそうなれば、産科医は激減して、健全な家庭が一挙に増えてくるのだろうが。

皮肉を言えば、病院での出産は、分娩室ではなく、すべて手術室で行われた方がいいのかもしれない。自宅出産と比べると、病院出産ははるかに危険に満ちているからである。赤ん坊に対しては、陣痛と分娩で苦痛に見舞われる確率が六倍、難産になる確率が八倍、蘇生術を必要とする確率が四倍、感染症にかかる確率が四倍、一生の傷を負ってしまう確率が三〇倍と、病院で子供を産んだ場合、これだけの危険が新生児を襲い、一方、母親も三倍の確率で出血多量に陥る。

いや、こういう数字を出されると、スゴイ説得力あるネ。病院出産は自宅出産よりも危険であるってことが証明されたネ。出産で妊婦が死ぬのは、産科医が余計なことをしたからに違いないんダ。産科医なんて要らないネ。これからは自宅出産がトレンドでロハスでナウいんだよ。

こうしたことは産科医だけに当てはまるんじゃない。医師である私がスゴイ秘密を曝露するよ。ばれたら私はもう医師を続けられないかもしれないので、みんな内緒にしてね。医療行為はさまざまな有害事象のリスクを高めるんだよ。たとえば、出血性ショックによる死亡。厳密に統計をとっているわけじゃないんだけど、私がこれまで見聞きした出血死症例は、例外なく輸血されていたね。輸血されていない出血性ショック症例なんて見たことない。産科医が不当に出産に介入していると考える聡明な人は、輸血が出血性ショックのリスクを高めることに同意するだろうね。

もう一つ言っておこう。入院は死亡のリスクを高める。自宅出産と病院出産を比較したように、外来患者と入院患者を比較してみよう。死ぬ確率が高いのは、圧倒的に入院患者である。入院せずに亡くなる人もいるけれどもそんなのは例外的だ。「自宅出産(・∀・)イイ!」などと考える人は、他の病気で医師から入院を勧められても断ろう。入院は危険に満ちている。