NATROMのブログ

ニセ医学への注意喚起を中心に内科医が医療情報を発信します。

タバコの研究で得をするのは誰?

嫌煙系のトンデモってのもあるけど、今回とりあげるのは反嫌煙系。煙草も自己責任で吸うのなら別にかまわないと私は思う。成人が、タバコの害を知らされた上で、タバコを吸うという選択をしたっていいだろう。ただ、トンデモ嫌煙に反発するせいか、やっぱりトンデモな反嫌煙もある。

■たばこと乳ガンの意外な関係?

このページは、「乳がんキャンペーンは、医師、健康保険財政、CM協会、研究団体等々の利益になるがゆえに堂々と行われる、しかし、肺がんの場合はそれと正反対で、『利益が対立する場合は公平な判断や研究が行われない』」、と主張している。当然、「たばこ会社の不利益になるからキャンペーンが難しい」という意味だろうなあと思うが、これが違うのだ。


煙草の研究で新聞がニュースに取り上げるのはガンの発生率ばかり。
それって、医療でも医術でも化学でも先端技術でもなく
統計。つまり化学じゃないね。統計学だ。

統計学でない医学って、何かあったっけ?人間の身体のような複雑な対象を扱う場合は、統計は必須である。もちろん統計にもいろいろあって、信頼できる統計とそうでない統計とがあるが、煙草と発癌に関してはきわめて信頼できる部類に入るわけで。


そんな状況なので、煙草の害を研究すると、研究費が出るが
煙草が体にどんな影響を与えるか、研究しててその結果がたまたま、体に有益な場合もあるなんて結果なら、研究者ごと抹殺されかねない危険な状態にあるのです。
ましてや、煙草の有益性を研究すると、その為にどれだけの逆風と資金難に遭遇する事やら。。。

煙草会社から、いくらでも資金は出ると思う。お金さえあれば煙草の有益性を証明できるのであれば、とっくになされているだろう。得するのは誰だろうか?という視点はもちろん大事だ。煙草が有益である、そうでなくても煙草はそれほど有害ではない、ということを証明できたら、煙草会社はきわめて得をする。政府も煙草を吸う人が増えれば税源を確保できて得をする。「研究者ごと抹殺されかねない」って、一体誰が抹殺するの?


煙草吸っても肺ガンになりにくい家系や、喉頭ガン、舌ガンとの関連性をしっかりと説明しているサイトやその研究にトラックバックをしているサイトなんて全くない。ニュースソースがアンチ煙草キャンペーン物ばかりで信憑性に欠ける。信用出来ないとは言わないが、眉唾物もあるし、タバコこそすべてのガンの原因だ!!とかバカ発言を見て苦笑。一般常識レベルでのガン発生原因すら知らんのか・・・高校の生物の範囲だよ・・・細胞分裂をもう一度勉強して下さいと言いたくなる

「ニュースソースがアンチ煙草キャンペーン物ばかりで信憑性に欠ける」と言いつつ、


で、「ブラックジャックによろしく」に話を戻すと、
「ある種の乳ガンは、煙草によって抑制される」
と書かれているんですよ。

ソースがブラよろかよ。信憑性あるのか。

あたりまえのことを言っておくけど、よしんば煙草がある種の疾患に抑制的に働いているとして、害がキャンセルされることにはならない。益は微々たるものだ。喫煙率を減らすほうが、乳がん早期発見キャンペーンよりも、人々の健康に貢献できるだろう。いったいなぜ、乳がん早期発見キャンペーンは堂々と打てて、禁煙キャンペーンは打てないのだろう?得しない人がいるからですね。