NATROMのブログ

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ホルモンを含有していない胎盤製剤

■メルスモン製薬、無承認でヒト胎盤原料の医薬品製造(日経新聞)

医薬品メーカー「メルスモン製薬」が、ヒト胎盤を原料にした医薬品を無承認で製造・販売していたとして厚生労働省から自主回収を指示されたとのこと。


 同社は胎盤の抽出物を原料にした医薬品を正規に承認を受けて製造・販売しているが、胎盤そのものを加熱殺菌して細かく切断し、瓶詰めした医薬品を承認・許可を受けていない製法で生産し、販売していたという。
 この商品は、アレルギー性疾患や免疫力の回復などに効果があるとして皮膚の下に直接埋め込む療法で使用されていた。昨年は約1万4000本製造されたが、これまで健康被害は報告されていないという。
胎盤埋没療法とかいうものか。ま、代替療法の類に入りますな。加熱殺菌されていたとしても、効果が明確でもないのに、ヒト由来の製剤をよく使う気になれるな。上記記事の件では、承認を得ていなかったのが問題だったのだが、メルスモン製薬のサイトから、「正規に承認を受けて製造・販売している」であろう製品を発見。「今日の治療薬」にも「治療薬マニュアル」にも載っていなかったが、更年期障害・乳汁分泌不全に保険適応があるらしい。

■胎盤製剤メルスモン


国内の、感染のないヒト胎盤を原料とし、多種のアミノ酸を含有しています。酸で加水分解し、最終減菌(121℃/30分間)するためホルモンは含有しておりませんし、細菌やウィルスによる感染もありません。

オイオイ、「ホルモンは含有しておりません」って、じゃあいったい何が効いているんだYO!。単なるアミノ酸入りの水であるような気がする。まあ、何が効いているのかわかんなくなるほど過熱・分解させてあるほうが安心ではあるが。しかし、プリオンが感染する可能性は否定できないと思うぞ。メルスモンではないが、やはりヒト胎盤製剤である別の製品に関する注意。


現在まで、国内外において本剤の投与より変異型クロイツフェルト・ヤコブ病(vCJD)等の感染症が伝播したとの報告はない。しかしながら、製造工程において感染症を防止するための安全対策が講じられているものの、ヒト胎盤を原料としていることに由来する感染症伝播の危険性を理論的には完全に排除することができない。
「治療薬マニュアル」のヒト胎盤抽出物 商品名ラエンネック (日本生物製剤)の項より引用

まとめ。感染のリスクは小さいと思うが、メリットが明確でない以上、ヒト胎盤製剤の使用はお勧めしない。加熱・滅菌を十分に行えばそれだけ感染の危険は減るが、同時に有効成分だって分解されているはず。アミノ酸が効くってのなら、ヒト由来の製剤を使う意味はない。BSE(牛海綿状脳症)であれだけ騒ぎが起きたのに、こういうことにはみなさん関心がないのだろうか。