NATROMのブログ

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米大リーグ史上初の4割打者

■地元コラムニストがイチロー批判を撤回(スポーツナビ)


 米シアトルの地元紙『シアトル・ポスト・インテリジェンサー』は31日(日本時間9月1日)、シーズン当初まだエンジンのかかっていなかった、マリナーズのイチロー外野手にはもう飽きた、というコラムを執筆したコラムニストが、それを撤回及び、謝罪そしてあらためてイチローをたたえるコラムを紹介した。
 同コラムはイチローへの謝罪から始まり、イチローの躍進に感嘆し、過去のように8月、9月に打率が下降するようなことがなければ、米大リーグ史上初の4割打者も夢ではないとまで褒めたたえている。

えっとね、気になったのは、「米大リーグ史上初の4割打者」ってところ。元記事はおそらくこれ。

■Ichiro proving doubters wrong (Seattle Post-Intelligencer)

JOHN LEVESQUEとかいうコラムニストが記事を書き換えていないとするのなら、翻訳者が間違えたんだろうと思う。4割打者がどうとかいう該当部分はこう。


Either way, as his batting average hovers near .370, Ichiro has newspaper columnizers and radio chattererboxes*1 reviving speculation about whether a major league ballplayer can hit .400 for a full season.

「米大リーグ史上初の4割打者」とはどこにも書いていない。へたっぴな訳をつけるとしたら、「イチローは、コラムニストやラジオ解説者に、メジャーリーガーが4割をフルシーズンで打てるかどうかについて思い出させるだろう」という感じかな。とにかく、これまで4割を打ったメジャーリーガーは存在したのだ。■「最後の4割打者」の銅像がフェンウェイ・パークで公開ってのも見つけた。進化生物学者のグールドは、それで本を一冊書いているぐらいなのだ。フルハウス 生命の全容―四割打者の絶滅と進化の逆説から引用。


アメリカンリーグがスタートし、ナップ・ラジョイが4割2分2厘を打った1901年から、テリー[テッド・ウィリアムズ]が4割1厘を打った1930年の間、シーズン打率4割という記録は、もちろん価値ありとされてはいたが、それほど珍しいことではなかった。その30年間に、リーグ最高打率が4割を超えた年は9回もあったのだ。その金字塔を達成した選手は全部で7人。(ナップ・ラジョイ、タイ・カップ、シューレス・ジョー・ジャクソン、ジョージ・シスラー、ロジャーズ・ホーンズビー、ハリー・ハイルマン、ビル・テリー)で、カップとホーンズビーはそれぞれ1人で3回も達成している。

ちなみに最高打率はホーンズビーが1924年に記録した4割2分4厘だが、1922年は、ナショナルリーグのホーンズビー、アメリカンリーグのシスラーとカップの3人が4割を越えた年だった。ここでことわっておくが、4割打者がもっとざらだった19世紀の記録をあえて除外しているのは、プロ野球黎明期におけるルールやプレーそのもののちがいがあるため、単純な比較はできないからである。(P108)

みんなも翻訳者がちょっぴり間違えたくらいで、本を引っ張り出してきて延々と引用する曲がった根性メディアリテラシーを身につけよう。

*1:原文ママ