NATROMのブログ

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高リスク者に対する低線量CTによる肺がん検診は肺がん死を減らさない

Results of the Randomized Danish Lung Cancer Screening Trial with Focus on High-Risk Profiling.
https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/26485620

50歳〜70歳の喫煙者を対象としたCTによる肺がん検診は肺がん死を減らさない。オランダ。RCT。4104人が対象。肺がん死亡のハザード比は1.03(95%C.I. 0.66-1.6)、総死亡のハザード比は1.02(95%C.I. 0.82-1.27)。肺がんの診断は有意に検診群で多い(つまり過剰診断)。対象群53例に対し検診群で100例。肺腺がんに限ると18例対58例に。

早期がん(stage IおよびII)は検診群54例対対照群10例と検診群に多い。stage IIIaも検診群15例対対照群3例と検診群に多い。stage IVは検診群23例対対照群32例で有意差なし。最も進行したT4N3M1だと、検診群8例対対照群21例で、絶対ステージシフト"absolute stage shift"が示される。サブグループ解析で高リスク者に限ると有意差がないもののNLSTと一致した傾向がみられる。

アメリカ合衆国では似たようなデザインで、低線量CT群において、肺がん死どころか総死亡すら減少した(NLST)。「対象は、年齢55〜74歳で、30 pack-years以上の喫煙者および禁煙後15年以内の元喫煙者」。対象は約5万人(各群約2万5000人ずつ)。肺がん死を20%、総死亡を6.7%減らす。総死亡を減らしたがん検診のRCTは私が知る限り唯一。

メタアナリシスすると(していいのかどうかはわからないが)、検診群が勝つ(検診は肺がん死亡を減らすという結果になる)と思う。NLSTのほうがずっとサンプルサイズが大きいから。

日本でもCTによる肺がん検診の臨床試験が進行中(JECS Study)。「CT併用の検診(CT群)、もう半分の方にX線のみの検診(X線群)」。対象は「50歳以上70歳以下、かつ喫煙指数600未満」。未満かよ。なんで未満なんだよ。差が出ない可能性が高いと思うぞ。