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アメリカ合衆国における1973年〜2002年の甲状腺がん罹患率の増加

■JAMA Network | JAMA | Increasing Incidence of Thyroid Cancer in the United States, 1973-2002


(サマリーの大雑把な訳)がんの罹患率(Incidence)の上昇は、病気そのものの増加であると解釈されがちだが、診断基準の変更や診断技術の進歩が反映されているかもしれない。甲状腺結節の診断の仕方の変更は、甲状腺がんの罹患率の見た目の上昇を引き起こすかもしれない。アメリカ合衆国において、甲状腺がんの罹患率、死亡率、組織型、サイズ分布を調べてみた。後ろ向きコホート。1973年から2002年までのSurveillance, Epidemiology, and End Results ( SEER ) programとNational Vital Statistics Systemのデータを使用した。
 甲状腺がんの罹患率は、10万人あたり3.6人から8.7人に増加した。2.4倍(95% C.I. 2.2-2.6)。あまり一般的でない組織型、すなわち濾胞がん(follicular)、髄様がん. (medullary)、未分化がん(anaplastic)の罹患率は有意な変化なし。実質的に、甲状腺がんの増加は乳頭がんの増加に由来する。10万人あたり2.7人から7.7人への増加。2.9倍(95% C.I. 2.6-3.2)。
1988年(サイズのデータを集めはじめた年)と2002年との間で、増加の49%は1cm以下の癌から成り、87%は2cm以下の癌から成る。甲状腺がんによる死亡率は1973年から2002年まで安定であった。
 結論として、アメリカ合衆国における甲状腺がんの罹患率の増加は主に小さな乳頭がんのさらなる発見による。安定した死亡率および無症候性の癌の既知の経験と合わせて考えるに、これらの傾向は、甲状腺がんの罹患率の増加は、甲状腺がんの本当の発生の増加ではなく、無症候性のがんの発見の増加によるものであることを示唆する。



甲状腺がんの発見数は増えているけど、甲状腺がんで死ぬ人は増えていない。発見される癌は、サイズが小さくて、あまり悪さをしないタイプのやつ。こういうタイプの癌は放っておいても死ぬまで気付かれなかったりする。ということは、甲状腺がんの発見数が増えたのって、実際の甲状腺がんが増えたんじゃなく、これまで気付かれずにいた分を発見するようになっただけじゃん。ってこと。