NATROMのブログ

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オランダでの自宅出産vs病院出産

■Planned home compared with planned hospital b... [Obstet Gynecol. 2011] - PubMed - NCBI

サマリーをざっとしか読んでない。コホート研究(たぶん後ろ向き)。2000年から2007年。オランダ。予定された自宅出産対予定された病院出産。約68万人の低リスク妊婦が対象。分娩時および早期新生児死亡は、自宅出産で0.18%、病院出産で0.15%。相対リスクは0.80(95%C.I. 0.71-0.91)。ただし、(先天異常、子宮内発育遅延、早産、低アプガルスコアといった)合併症についての補正後(After case mix adjustment)は、統計的には有意でないものの自宅出産で相対リスク増加1.05 (0.91-1.21)あり。

NATROMの感想。オランダにおける低リスク妊婦においては、自宅出産の新生児死亡のリスクは概ね病院出産と同じ。特定のサブグループにおいてはもしかしたらちょびっと高いかもしれないが、2倍とか3倍とかではない。ただ、日本で同じとは限らない。というか、仮に日本で同じような調査をしたら自宅出産の惨敗だと思う。

オランダで自宅出産と病院出産で顕著な差が無いのは、おそらく、自宅出産に関わる医療従事者やシステムの質が高いことと、病院出産の質がそれほどよくないことにあるのだろう。日本で自宅出産を勧めている助産師は、ハッキリ言って全然ダメ。砂糖玉とビタミンKの区別もつかないような連中。一方日本の早期新生児死亡率の低さはトップレベル。

ちなみに、日本での早期新生児死亡率(人口1000対)は2010年で0.8である。高リスク妊婦からの出産も含んでこの数字。同年のオランダでの数字は1.7である*1