NATROMのブログ

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アフラトキシン関連肝癌の集団寄与危険、系統的レビューおよびメタアナリシス


アフラトキシンの集団寄与危険の論文があった。サマリーのみ。本文は未読。


■Population attributable risk of aflatoxin-relat... [Eur J Cancer. 2012] - PubMed - NCBI


Population attributable risk of aflatoxin-related liver cancer: systematic review and meta-analysis.
Liu Y, Chang CC, Marsh GM, Wu F.
BACKGROUND:
Over 4 billion people worldwide are exposed to dietary aflatoxins, which cause liver cancer (hepatocellular carcinoma, HCC) in humans. However, the population attributable risk (PAR) of aflatoxin-related HCC remains unclear.
METHODS:
In our systematic review and meta-analysis of epidemiological studies, summary odds ratios (ORs) of aflatoxin-related HCC with 95% confidence intervals were calculated in HBV+ and HBV- individuals, as well as the general population. We calculated the PAR of aflatoxin-related HCC for each study as well as the combined studies, accounting for HBV status.
RESULTS:
Seventeen studies with 1680 HCC cases and 3052 controls were identified from 479 articles. All eligible studies were conducted in China, Taiwan, or sub-Saharan Africa. The PAR of aflatoxin-related HCC was estimated at 17% (14-19%) overall, and higher in HBV+ (21%) than HBV- (8.8%) populations. If the one study that contributed most to heterogeneity in the analysis is excluded, the summarised OR of HCC with 95% CI is 73.0 (36.0-148.3) from the combined effects of aflatoxin and HBV, 11.3 (6.75-18.9) from HBV only and 6.37 (3.74-10.86) from aflatoxin only. The PAR of aflatoxin-related HCC increases to 23% (21-24%). The PAR has decreased over time in certain Taiwanese and Chinese populations.
CONCLUSIONS:
In high exposure areas, aflatoxin multiplicatively interacts with HBV to induce HCC; reducing aflatoxin exposure to non-detectable levels could reduce HCC cases in high-risk areas by about 23%. The decreasing PAR of aflatoxin-related HCC reflects the benefits of public health interventions to reduce aflatoxin and HBV.


背景:40億人以上が肝細胞癌の原因となる食事中のアフラトキシンに曝露されている。しかし、アフラトキシン関連肝癌の集団寄与危険(PAR : population attributable risk)については未解明なままである。
方法:複数の疫学的研究の系統的レビューおよびメタアナリシスによって、一般集団を対照としたオッズ比(ORs : odds ratios)をHBV(B型肝炎ウイルス)陽性および陰性それぞれの場合について計算した。同様に集団寄与危険も計算した。
結果:肝細胞癌症例1680人対照4052人を含む17研究が対象。研究は中国、台湾、サハラ以南のアフリカで実施された。アフラトキシン関連肝癌の集団寄与危険は全体で17%(95% C.I. 14%-19%)。HBV+では21%と、HBV-の8.8%より高かった。ほとんどの異質性に寄与した一研究を除外すると、オッズ比は、アフラトキシンおよびHBV+で73.0倍(36.0-148.3)、HBVのみで11.3倍(6.75-18.9)、アフラトキシンのみで6.37(3.74-10.86)。集団寄与危険は23%(21%-24%)であった。集団寄与危険は台湾および中国では経時的に下がっている。
結論:高曝露地域では、アフラトキシンはB型肝炎感染と相乗的に相互作用する。ハイリスク地域においてアフラトキシン曝露を未検出レベルまで下げると肝細胞癌を約23%減らすことができる。台湾および中国において減りつつある集団寄与危険は、アフラトキシンおよびB型肝炎を減らすための公衆衛生的介入の利益を反映している。


以下、NATROMの感想。日本ではアフラトキシンのリスクはほとんどゼロである。日本における肝癌のリスクは主に肝炎ウイルスの持続感染であり、それ以外では自己免疫性肝炎および非アルコール性脂肪性肝炎である。肝臓専門医であってもアフラトキシンについて知っている人はそうは多くないと思われる。しかしながら、全世界的には肝癌に対するアフラトキシンのリスクは無視できない。

C型肝炎に関する言及がないのが興味深い。日本では肝癌の原因の80%近くがC型肝炎であるが、海外ではさほどでもないのだろう。

症例1680人対照4052人というから、おそらく症例対照研究であろう。アフラトキシンの曝露の程度もサマリーには記載されていなかった。

集団寄与危険は、「一般集団における曝露によって増加した疾病頻度」のことである。集団寄与危険が23%ということは、アフラトキシンの曝露をゼロにすると、肝細胞癌が23%減るということである。なお、日本では肺癌における喫煙の集団寄与危険は70%ぐらい。

オッズ比は相対危険と概ね同じと考えてよい。B型肝炎ウイルスに感染しておらずアフラトキシンの曝露もない人が1とすると、HBV+でアフラトキシン曝露のある人では73倍肝細胞癌に罹りやすい。ちなみに肺癌における喫煙の相対危険は、日本では5倍ぐらいとされている。