NATROMのブログ

ニセ医学への注意喚起を中心に内科医が医療情報を発信します。

月刊索引

私が医師になったのは、パソコンがだいぶ普及しており、手書きの退院サマリーがかなり珍しくなっていた頃。文献検索も、(私の記憶が確かなら)オンラインではなかったものの、CD-ROMに入ったデータベースで検索していた。コンピュータがなかったころはどうしていたのだろう?脚気の古い文献を探す際に、ビタミンに関しては、たまたま日本ビタミン文献集があったからずいぶん助かった。しかし、文献集がない分野で、Pubmedや医中誌などの文献検索システムがカバーしていない時代の文献を調べたいときはどうすればよいだろうか。脚気について調べ物をしていて初めて知ったのだが、月ごとに発表された論文の目次・索引のみを集めた雑誌があったのだ。





医事及雑誌索引


「医事及雑誌索引」というのが雑誌の名前。中身はこんな感じ。






「医事及雑誌索引」の巻頭の辞にはこうある*1


現今我々日本人が世界に於きまして最も誇りとするものは、医学とその技術であろうと思います。従ってこの医事に関係しておりまする機関の雑誌新聞は実に多数なものでありまして殆ど世界一と言われております。これらを医師はことごとく手に致しまして読破するということは、到底不可能のことであり、またことにそれぞれ各科の専門各自の興味とがありますから、それらを探して読むだけもなかなか困難至極のことであります。そこで本社同人はこの点に留意いたしまして今回諸家の便利を図る目的で、既刊維持雑誌新聞の目次索引を毎月一回前月分を編纂して発刊することにいたしました。


当時、日本の医学関係の雑誌・新聞の数は世界一ィィィ!だったそうですよ、へえへえ。「医事及雑誌索引社」は、原文だけ必要な場合は手数料をとってコピーするサービスも行っていた。これは大正から昭和にかけての話であり、いつごろまで「医事及雑誌索引」なる雑誌があったのかは、分からない。文献集に抜け落ちている論文があるかもしれないので、何年か分は脚気(とくに衝心脚気)については、「医事及雑誌索引」で調べてみた。月刊誌であるので、1年分を調べようと思ったら12回は索引を引かなければならず、面倒であった。コンピュータはやはり便利であることを再確認した。


*1:引用者によって、旧字・旧かなづかいを改変