NATROMのブログ

ニセ医学への注意喚起を中心に内科医が医療情報を発信します。

代理人を身代わりにする施術@NAET

前回紹介したNAETの続き。肩こりや腰痛が指圧によって改善しうるというのは理解できる。アレルギー性疾患をはじめとした諸病に効果があるという主張はもはやインチキとみなしてもよいが、それでも治療される本人が何らかの施術を受けているのであれば、「もしかしたら効果があるかも」と騙されてしまう人がいるのはわからないでもない。しかし、代理人を身代わりにした施術に効果があると考える人が、現代日本に存在するということには驚かされる。


■NAET(エヌ・エー・イー・ティー)®による施術手順(NAET JAPAN、以下強調は引用元のまま)*1


患者さん自身でNSTが行えない場合(小児・高齢者・障害者・衰弱が著しい・筋力が強すぎる・筋力が弱すぎる・肩の問題・妊娠後期など)は、代理人を身代わりにして検査・施術を進めていきます。

初めての方は、代理人?と思われるでしょう。

エネルギー治療では、患者さん自信が施術を受けられない場合は、代理人を通して施術を行うことが可能です。ここは薬や手術など、患者さん本人でしか受けられない既存の医療と大きく異なる点です。

エネルギー治療ならしかたないか。逆に考えると、むしろ良心的とも言える。通常のカイロプラクティックによって神経障害等の合併症が生じうるのに対し、代理人を通した施術は少なくとも患者本人にとっては副作用・合併症の心配はない。ホメオパシーで使われる砂糖玉が安全なのと同じ。一歩進んで、代理人などとは言わず、身代わり人形か何かを対象に治療してはどうか。

実際の、代理人を使用した施術は以下のようなものである。(中段あたりに怖いことが書いてあるが、今回はスルーする)


■アナフィラキシー症状に対する施術を望まれる患者様へ(NAET JAPAN)*2


彼女は、ミルク・ナッツ・魚などにアナフィラキシーがあり、過去にそれらのアレルギー除去を済ませていました。そんな彼女が先日心筋梗塞様の症状でICUに緊急入院しました。


Dr.デビは、発作を起こす前に彼女が口にしたナッツとミルクの組み合わせが原因だと彼女の担当医に話しましたがもちろん取り合ってくれません。
担当医は心筋梗塞に準じた薬物治療を行ないますが一向に改善しません。
血圧も低く尿も出ないという、かなり重篤なショック状態が続きました。


Dr.デビは、病室で代理人を使って、彼女に対してナッツとミルクの組み合わせに対するアレルギー除去を行ないました。急性問題ですから、40回という回数が必要でした。


39回終わったところまでは何の変化もありませんでした。
ですからDr.デビも、内心冷や冷やしていたそうです。


「これが最後」と40回目の施術を行なったその時から、何と血圧が上がってきたそうです。
そしてそれに伴い尿も出てきたそうです。
これを見て彼女の担当医も、原因はアレルギーだったのかな??と言っていたということですが、順調に回復し患者さんはすぐ退院できました。


Dr.デビとは、NAETを開発したデビ・S・ナムブドゥリパッド先生のこと。病室で、Dr.デビと代理人が、患者さんの傍らで40回もの「施術」を行うところを想像してみよう。シュールだ。普通に考えたら、通常の治療が効いてショック状態が改善したわけだが、当人たちは自分たちの「アレルギー除去」が効いたと思い込んでいる。言うまでもないが、ある治療が効果があるかどうかを証明するには、「効いた!」という例をいくら集めても駄目で、対照群と比較しなければならない。Dr.デビは「科学的証明」をする気なんてさらさらないだろう。科学的思考が苦手な人たちが顧客だからだ。

インチキ治療者が、他の治療もしくは自然経過で良くなっただけの症例を、さも自分たちの治療に効果があったかのように見せかける例は枚挙に暇がない。体験談のみの治療法を信用するべきではない。インチキ治療者は、効果がなかったときの言い訳も常に準備している。NAETだと、たとえば、「無意識レベルで患者さんの施術許可が得られなかった」「治療者及び患者様のエネルギー磁場内(3m程)に代理人以外の第三者の介入があり、エネルギー磁場が乱された」などが考えられる。

他にも、■NAET JAPAN 症例報告*3に興味深い症例が多数報告されている。これって普通に医師法違反だと思うけど、どうか。記念に魚拓を取った。

*1:URL:http://www.naetjapan.com/contents/about_naet.html

*2:URL:http://www.naetjapan.com/contents/anaphylaxis.html

*3:URL:http://naetjapan.apple.io/cgi-bin/sh_data/sh_data/