漁業資源の保護の方法の一つとして、網の目の大きさの規制がある。適切な網目の大きさを設定すれば、網からすり抜けた小さな個体がいずれ成長して資源は保たれる。しかし、進化論を考慮すると、漁業資源管理の上で問題が生じうるらしい。生存競争の点から、魚の体のサイズが大きい利点はいくつかある。より多くの卵を産める、ライバルの個体との争いに勝ちやすい、捕食されにくい、などなど。ならばより早くサイズを大きくする戦略は有利である(たまたまこの戦略は漁師にとっても望ましい)。むろん、大きければ大きいほど有利なわけはなく、種ごとに適正なサイズがあるのだが、自然状態と、漁業がなされたときとで、適正なサイズが異なるのだ。David O. Conover, Fisheries: Nets versus nature, Nature 450, 179-180より図を引用。
今回のエントリーで言いたいことは、この図でほとんどすべて。網で大きな個体が取り除かれる環境下では、魚のサイズや成長速度が小さくなることが予測され、それを実証した研究がある。北西イギリスのウィンダミア湖における、パイク(カワカマス)漁の記録を利用した。1921年にいったん網による漁が中止され、1944年から再開された。うろこの「年輪」を測定したり、タグをつけて再捕獲して成長速度や集団の大きさ、死亡率を推測して、成長率の傾向を見たところ、進化論の予測と一致したとのこと。こういう昔の記録が残っていて、さらにそれを利用して実証的な研究ができたのは結構すごいよな。