NATROMのブログ

ニセ医学への注意喚起を中心に内科医が医療情報を発信します。

オンコールでドン(続き)

昨日のオンコールは、午後1時ごろと午後9時ごろの2回呼ばれただけで、夜間〜翌朝は平穏であった。温泉も料理も楽しむことができ、幸いであった。日宿直医はたいへんだったらしく、日直時間帯だけで44件(平均では30件ぐらい)もの患者が来院した。連絡不行き届きなのか、私が指摘するまで日宿直医、看護師ともに、昨日が月に1回の救急部の非常勤医師が来る日であることに気付いていなかった。「本日は非常勤の先生が来院するからして、お前らこの宿直室を使うんじゃねえ」という張り紙だけはしっかり張ってあったのに、いったいどういうことであろうか。

コメント欄で指摘されていたことだが、最近、研修医の間に大学医局に入らないという気運が高まってきたらしい。私の世代でも、すでに臨床志向で優秀な人間は大学医局に属さず、自分で研修先を見つけていた。ちなみに基礎研究志向で優秀な人間も大学医局ではなく初めから基礎大学院へ進学する。私なぞは、基礎研究はしたいけどいざとなったら臨床に戻る道も確保したいというヘタレな気分で入局した。「寄らば大樹の陰」という言葉もあるし。

「白い巨塔」で描かれているように大学医局の弊害というものもあるが、利点もいっぱいある。研修のときは諸先輩方にたいへんにお世話になった。お礼奉公といってはアレだが、お世話になった分はお返ししようという気持ちもある。労働条件が劣悪な病院への勤務を命ぜられても、数年我慢すれば次の犠牲者が派遣されて解放されることが約束されていれば頑張れる。無論、嫌だとごねれば何らかの報復があったのかもしれないが、大方は日本的な、まあまあ、なあなあな感じでうまくまわっていたのだ。

ところが大学医局の権力は腐っているケシカランという声が強くなって、研修制度その他いろいろな制度の変更によって、医局の権威は落ちる一方、別に大樹でもなんでもなければ、入局する人も減りますがな。これまで医局が行けというから仕方なく医師が行っていたような病院に医師が少なくなるのは当然。現在はなんとかまわっているような病院でも、次の犠牲者が派遣されるという見込みがないなら、頑張る気持ちも失せてしまう。まさにウチの病院のことだけど。ずっと勤務するような病院でもなし、オンコール手当のために交渉する気はあまり起きない。