NATROMのブログ

ニセ医学への注意喚起を中心に内科医が医療情報を発信します。

オンコールでドン

本日は内科オンコールの日である。内科オンコールとは、小児科や眼科などの他科の医師が日宿直の日に、内科医の診察が必要な患者さんがいたときに呼ばれる係である。自宅に待機していてもよいということになっているが、呼ばれたら30分以内に病院に着いていなければならないという暗黙の了解があるので、自宅が遠い私は、オンコールの日はほとんど病院内にいる(そういうときに変な立体をつくったりしているのだ)。

当院には正規の宿直医が泊まる部屋とは別に、一室だけ宿直室があり、普段のオンコールの日にはそこに泊まっている。副直の研修医や、実習に来ている学生と取り合いになることもあり、負ければホテルに泊まるか、その辺(医局のソファー、エコー室のベッドなど)に寝ることになる。ホテル代は出るのかと一度聞いてみたが、「他の先生方はホテル代を請求していない」という、要するに出ないのだなという答えが返ってきた。オンコールで呼ばれれば時間外手当くらいはつくが、もし呼ばれなかったら、オンコール手当などというものは存在しないので、ホテル代まる損である。オンコールでなくとも、状態の悪い患者さんがいるときには泊まりこみが続くこともあるので、宿直室を増やせという要望は以前から出しているのだが、改善する気配はない。人がいないのはしょうがないが、金で容易に解決できる問題ですら解決しようとしないのがすごく嫌だ。

さて、普通であれば本日は宿直室をとっとと確保して、たまっていた書類仕事でも行うはずだったのだが、たまたま月に1回の救急部の非常勤医師が泊まる日であった。以前にも言ったが当院への救急車搬送件数は5年間で3倍になっており、かといって医師は増えるどころか減っており、上層部の方々もこれはいくらなんでもあかんやろという気分になったらしく、救急を専門に診る医師を確保しようという話になった。これまでは救急車が来たら、当番の医師が、外来・処置・家族への説明などをおっぽりだして対応していたのを、救急患者を専門に診る医師が応急処置と適切な専門科への振り分けをしようとしたわけ。

で、大学病院に医師を1人寄こしてくださいとお願いするも(当たり前だが)断られ、じゃあ、週に1回でもいいからとお願いするも断られ、それなら月に1回でという話になった。だいぶ最初の話と違うような気がするが、上層部の人たちはそれで仕事をした気になっているらしい。ちなみにその非常勤医に支払われる金額を聞いて、「私今すぐ辞めますから非常勤で雇ってください」と言った先生がいたとか。まあ、その非常勤の先生方の立場になってみれば、自分とこの大学病院をまわすだけでもたいへんなのに、なんでまたこのような田舎病院にまで出張っていかないといけないのか、お給料が良くなければやってらんないという気持ちはよくわかる。

話が横道にそれたが、本日が、その月に1回の日。非常勤の先生は、こちらがお願いして来てもらったという立場。よって医局のソファーで寝かすわけにもいかず、一つ残った宿直室は非常勤の先生が使う。私の寝る場所なし。その代わり、いつもだったら救急車が来たらほぼ呼ばれてたのが、本日は非常勤の先生が診てくれる。かといって、いつ呼ばれるのか分からないということには変わりなく、自宅待機するわけにもいかないから、どこかホテルにでも泊まろうなどと考えているうちに思いついた。

ゴールデンウィークだというのに、ウチのチビは、近所の公園にしか連れていっておらぬ(それはそれで奴は満足そうではあるが)。私も、せっかくの休みに1人でさびしくビジネスホテルに泊まるのは嫌だ(医局のソファーはもっと嫌だ)。というわけで、病院の近くの温泉宿を予約した。オンコールなので酒は飲めないが、料理が美味しいところだ。もしかしたら、ガンガン呼ばれて温泉どころじゃなくなるかもしれないのでギャンブルだが、チビは妻が面倒みてくれるはずなので大丈夫。さて、今のところは呼出はない。明日まで呼ばれませんように。