NATROMのブログ

ニセ医学への注意喚起を中心に内科医が医療情報を発信します。

「水は変わる」の新コンテンツ

水商売ウォッチングの削除をお茶の水女子大学当局に要求したもののスルーされている吉岡英介氏のサイト「水は変わる」を、久しぶりに見に行ったら、いくつかコンテンツが増えている。そのうちの一つを紹介しよう。


■マイナスイオン水の最新例  乳牛の体細胞数が顕著に改善(URL:http://www.minusionwater.com/symposium3.htm


乳牛の体細胞数が改善って、体がでかくなるのかと思ったら、乳中の体細胞のことであった。要するに、マイナスイオン水を牛の飲料水や牛舎を掃除する水に使用すると、乳中の体細胞数が改善したという話。体細胞数が少ないほど良い乳質とされているそうで、マイナスイオン水を使用すると、一時的に体細胞数は増えたものの、最終的に2分の1から3分の1になったとのこと。

グラフが載っているが、これが恐るべきグラフで、数字に単位もなければ、いったいいつからマイナスイオン水を使用したもわからない。「その牛舎での牛全頭の平均」とあるが、全部で牛が何頭いるかの記載もない。そもそも、対照群がないのでほとんど意味がないデータだ。ついでに言うなら、このページでは6カ月近くは細胞数が増えているように読み取れるが、他のページ*1では「2ヶ月で乳中の体細胞数が半減」と謳っている。もともと体細胞数は変動するもので、適当なところで区切っているだけじゃないのか。

インチキ医療の宣伝の常套手段として、使用後に検査値・症状が改善したというものがあるが、それと構図はまったく同じ。血糖値、コレステロール値、血圧といった検査値はすぐに変動する。自覚症状だって良いときもあれば悪いときもある。なんらかの医療行為を行って、数字・症状が改善したからといって、その医療行為に効果があったとは言えない。だからこそ対照群との比較が重要なのだが、科学の基本を知らない人は、そんなことには頓着しない。使用後に検査値・症状が悪化したとて、インチキ医療者は言い抜ける。「好転反応だ」、しばらく我慢して使用を続ければ必ず良くなると。マイナスイオン水にも「好転反応」が出ており興味深い。

*1:URL:http://homepage3.nifty.com/kenkanko/202cowa.htm