NATROMのブログ

ニセ医学への注意喚起を中心に内科医が医療情報を発信します。

救急は時間外外来ではない

あなたがある病院で責任のある立場だったと仮定しよう。病院の経営を良くするもっとも手っ取り早い方法は、コストをかけずに売り上げを増やすことである。医師の数はそのままで、患者がバンバンくれば、現場の医師は忙しくなるが、病院は儲かる。よって、「患者様を断らないように」という方針を立てれば、少なくとも短期的には経営状態は良くなるであろう。近所の診療所の先生方にもええかっこができる。「ウチは断りません。どんどん患者さんを紹介してください」。自分が働くわけではないし、口だけならいくらでも言える。

医師の数を増やせという声が現場から上がってくるが、こんなもんは大学医局へお願いしに行くフリでもしときゃいい。医師の数を増やしたら、せっかくの黒字が減るではないか。このご時勢に、大学医局に言ったってそうホイホイ医者を出すわけがないからかえって好都合というものだ。長期的な病院経営はたしかに不安がある。しかし、どうせそのころはあなたは定年退職だし、次の責任者が苦労するだけだから気にする必要はない。あなたは病院を黒字にした功労者。次の責任者はその黒字病院を崩壊させた戦犯。あくまで仮定の話ですよ


それはそれとして、まったく関係のない話だけど、

■地域救命センターについて


 地域救命センターは、当番医が救急患者をまず診察し、必要と判断した場合は各専門医を呼び出す方式を取っています。
  しかし、急を要しない状態と判断した場合は、通常の外来での診察をお願いすることや、休日・夜間では専門医の診察を受けられない場合があります。
  近年、センターを利用する患者数は平成9年度と比べ5割増となっています。これは重症の患者が増えたわけではなく、以前は受診しなかった軽微な症状の患者が気軽に時間外外来として利用している実態があります(コンビニ外来という)。受診する権利を否定するものではありませんが、本当の重症患者の治療に支障をきたすことにもなり、結局は自分たちに「ツケ」が回ってくることになります。
  「自己責任」という言葉がよく使われますが、「健康」も例外ではありません。自分たちの生命に直結する事柄ですので、他人任せにしないで普段から関心を持ち、いざという時にあわてないようにしましょう。  
  救急は、時間外外来ではないことを理解していただき、できれば電話連絡をしたうえで来院してください。

こういうことを明確に言ってくれる上司のいる病院で働きたい。