NATROMのブログ

ニセ医学への注意喚起を中心に内科医が医療情報を発信します。

障害についての意識調査というかクイズ

こないだジェンダーフリー教育をめぐる愉快な議論を林道義さんとくりひろげたMacskaさんのブログから。


■障害についてちょっと意識調査というか、クイズです(*minx* [macska dot org in exile])


 車椅子使用者を多数含む障害者の団体が列車で旅行に行くことになりました。ところが列車は普段のままでは車椅子のまま乗れるようになっていません。車椅子を使用する人が少人数であるときは、座席の一部だけ取り外して乗せることになっているのですが、これだけの団体が乗るためには一車両丸ごとほとんどの座席を取り外す必要があります。

 この鉄道会社では、車内で私的なパーティを催すなどの目的で客の要請に応じて座席を取り外す場合、車両ごと貸し切りにして特別料金を取る決まりになっています。ところが、障害者の団体は車両ごと借りたいわけではなく、普通に旅行するために座席の取り外しが必要となっています。鉄道会社は、実質的にその車両全体貸し切りになるのだし、必要とされる労力はパーティ目的で貸し切る場合と同じなので特別料金を請求しました。障害者団体は、健常者の客より障害者の客から余分に料金を取る差別待遇だと反発しています。



(問1)さて、あなたならこの状況について両者にどのようにアドバイスしますか?

(問2)この鉄道会社が民間の鉄道会社であるか、あるいは国営であるかによってその答えは変わりますか?

おそらく、東横インの不祥事をからめた問題提起だと思われる(ですよね?)。障害者が健常人となるべく同じ社会生活を送るためのコストを誰が負担するのか?列車旅行の例だと、鉄道会社は「障害者が負担しろ」、障害社団体は「鉄道会社が負担しろ」と主張しあっているわけだ。鉄道会社がコストを負担するっていっても、結局はまわりまわって鉄道会社の利用者が負担することになる。

この例だとあまり迷わずに、私なら鉄道会社には「特別料金を払えなんてケチクサイこと言うなよ」とアドバイスするだろう。座席を取り外す労力はかかるけれども、マスでみたら大したことあるまい。こういうコストを負担するために運賃がたとえば10円値上げされることになっても、それぐらいは喜んで払う。ほとんどの人は納得するのではあるまいか。自分もしくは身内が障害者になるかもしれないと考えてみればいい。

迷うとしたら、コストが膨大になった場合だ。仮に、「障害者が健常人と同じように旅行するための設備投資をしますので、明日から運賃が10倍になります」ってことになったら、さすがに「ちょっと待てオイ」となろう。どれくらいまでコストを負担できるかってのは議論の余地があろう。東横インの問題だって、身障者客室が年に数回しか利用されないのであれば*1、条例で一律に身障者用の客室設置を義務付けるのはどうよという議論は成立するかもしれない*2。ただ、これまでコストをかけなさすぎだったわけで、コストかけすぎという議論をする前にすべきことはいくらでもある。

問いでは、「両者に」ってことだから、障害者団体に対するアドバイスも答えないといけない。「私は応援するけど、あまり派手に抗議すると、引いちゃう人もいるから、そういうことも考えてほどほどに」ってぐらいかなあ。(問2)も、私は、民間・国営に関わらず、答えは変わらない。どっちにしろ、鉄道会社って、ある程度公的な性格を持つし。

*1:そもそもこれまで身障者がホテルを利用しにくかったから、利用されていないだけかもしれないが

*2:たとえば、一律設置ではなく、身障者用の客室を設置したホテルはちょいと税金を安くするとか。安くする率を調節して、そこそこ身障者にとって不便がない程度の客室を確保する