NATROMのブログ

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ウコンで肝障害その2

過去に■ウコンで肝障害というエントリーを書いたためか、ウコン関係の検索でやってくる人が週に2-3人いる。当エントリーを見て、余計なリスクをしょいこまない人が少しでいれば書いた甲斐があったというものだ。今回は、日本語ではあるが医学雑誌に「健康食品による肝障害(神代龍吉et.al 総合臨床 2006.1/Vol 55/No.1/P150-151)」という記事が載っていたので、ウコンに関する部分を引用する。


3. 個々の健康食品による肝障害事例
1) ウコン
 ある報告では平均服用期間が262±36日、血清AST,ALT,ALPが服用中に上昇し、回復に62±88日を要している。ウコン(turmeric)は、カレー粉の成分でもあり、健康被害をもたらすことはあまりないと思われる。しかし、毎日一定量を長期に摂取した場合には、ウコン自体、または不純物の蓄積により肝機能障害をきたしうる。ウコンには牛レバーに相当する鉄分を含みフリーラジカルを発生させる。C型慢性肝炎では血清トランスアミナーゼを上昇させる可能性がある。不顕性の自己免疫性肝炎がウコン摂取をきっかけにして顕性化することもある。

一般的に、健康食品を長期・大量使用したときの安全性は確立されていない。「食品だから安全」「天然だから安全」とは必ずしもいえない。そもそも、何らかの作用を期待するのであれば、まったく副作用もないというのは考えにくい。実際のところ、ウコンに良い作用はないか、あったとしてもきわめて弱いものであろう。副作用もきわめて稀であると思われる。ただ、稀だからといって、副作用が生じる可能性がある健康食品を、効果も不確かのまま使用するのはお勧めできない。

ウコンによる肝障害が問題になるのは、ウコンが肝臓にいいとされているからだ。健康な人が多飲したときのみ摂取するくらいならあまり問題にならないが、慢性肝炎や肝硬変の人は、ウコンに限らず、健康食品の類は止めたほうがいい。特に肝硬変で肝予備能の低い人が肝障害を起こすと、それだけで命にかかわる。この記事では、ウコンのみならず、クロレラ、プロポリス、アロエ、ヨモギエキス、アガリクスなどによる肝障害が紹介されている。