NATROMのブログ

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そこで鳥越神話ですよ

■赤星神話(理系に生まれてよかった)


さきほどテレビをつけていたら、赤星の盗塁が阪神の勝利のカギだとかいう話をやっていた。
正確な数字は忘れてしまったが、赤星がホームベースを踏んだ試合の勝率は7割強なのに対して、ホームベースを踏まなかった試合の勝率は4割くらいだというのだ。
番組ではこの事実を持ってして、赤星のホームインが勝利のカギだという結論に達していた。
でもちょっと待てよ?
赤星だろうが誰だろうが、誰かがホームインしたってことは1点入ったってことだ。
だれかが得点をあげた試合はそうでない試合に比べて勝率が上がるのは当然じゃないのか?

いや、まったく。この手の話は結構あって、ある選手がホームランを打つと勝率が何割などと、野球の解説ではよく聞く。その選手が特別であると言いたいのであれば、他の選手がホームランを打ったときの勝率と比較をしなければなるまい。まあ野球の解説なんて、そこまでの厳密さは要求されないし、その必要もなかろう。

野球解説時の期待とは逆に、もしかしたら、打撃成績がよい選手が打ったときのチーム勝率は、通常の(あるいはむしろ打撃成績の悪い)選手が打ったときのチーム勝率と比較して、低いかもしれない。その理由はいくつか思いつく。「打って当然の選手が打つよりも、いつもは打たない選手が打ったときのほうが、その試合のチーム得点は高い傾向にある*1」。「打撃成績の悪いが選手でも打てるということは、相手投手が不調である指標になる」。などである。一方、野球解説時になされる期待と同じように、やはり4番は特別であるかもしれない。「ホームランが勝利に効果的になるような打順であるから」などが考えられる。

誰かが実際に統計を取って検証すれば面白いと思う。実は、不完全ながら、打撃成績の悪い野手が活躍した試合の勝率のデータは存在する。われらがホークスの鳥越裕介選手である。ホークスファンには、ゴエの愛称で呼ばれている。ゴエの守備は華麗だが、一方で打撃成績のほうがいまいちである。長身の選手であるが、身長と打率のどちらが高いか論じられることがしばしばあった。2003年のホークスのチーム打率は2割9分7厘でプロ野球新記録だったとのことだが、ゴエ抜きではチーム打率は3割に到達していた。ゴエが活躍したときには何がおこるのか分からないため、パルプンテ鳥越とも呼ばれる。実は私と同い年。

さて、かようなゴエであるが、にちゃんねるの実況板では、ゴエは大人気である。私の記憶では2003年のシーズンの途中ごろだったか、「鳥越不敗神話」が語られるようになった。ゴエが活躍した試合ではホークスは負けない。有志が統計をとりはじめて、9月ごろまでは不敗神話はとぎれなかったのだ。最終的に2003年度のシーズンでは、以下のような結果になった。


鳥越がヒットを打った試合  33勝7敗1分 勝率0.825
鳥越が2安打以上の試合   9勝2敗 勝率0.818
鳥越が長打を打った試合   5勝1敗 勝率0.833
鳥越が打点を挙げた試合   15勝2敗1分 勝率0.882
ちなみに、チーム全体の勝率は、82勝55敗3分 勝率 .599であった。赤星の得点した試合での7割強という数字と比較しても、良い数字であると私は思うのだ。

2005年になっても、ゴエデータの更新はなされ続けている→■鳥越不敗神話


*1:わかりにくい説明だったかもしれない。仮に全試合ホームランを打つスーパー4番がいたとしよう。スーパー4番がホームランを打った試合のチーム得点の平均は、全試合のチーム得点の平均と等しい。一方、シーズンで1打点しか打点をあげない選手がいたとしたら、その選手が打点をあげた試合は、期待値でいえば、全試合のチーム得点の平均より1点多い。